主体性は教えられるか (筑摩選書 37)

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (237ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480015396

作品紹介・あらすじ

上司や指導医に指示されたことはソツなくこなすのに、主体的に行動することが苦手な医学生や研修医。彼らはなぜ自分の頭で考えられないのか。そもそも日本の学校教育が、個人の主体性を涵養するように出来ていないのではないか。本書では、医学教育をケーススタディとして現状を精査、具体的な改善案を提示しながら、主体的に生きるとはどういうことか、主体性を教えることは可能なのかという問いを考える。

感想・レビュー・書評

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  • 主体性とやる気は違う。ぼくはそう考えている。 
    やる気はだれもが持っている

    主体性とは、自律性と周囲との調和
    cf 思考停止状態
    詰込み型学習
    PBL
    指導医講習会
    アメリカ礼賛者
    エビデンス至上主義者

    主体性のあるいい後進が育つ場

  • ・概観
    主体性を失わないためにどうするかというアプローチで書かれている。主体性という概念の輪郭を医療やサッカーの例を通じて映し出し、実証主義的な分析を行っている。

    ・文体
    最初、題名から学術書の邦訳的サムシングだと思ってたので、読みながら随筆調の文章にギャップを感じた。医療関係の章は説明が冗長だと思った。

    ・流れ
    冒頭の連帯・非独立から見た主体性の説明で「オッ」となって、どう分析・考察して発展するのか期待してたのに、せっかくのアイデアが一向に回収されず勿体無かったのが残念。最低限、筆者なりの落とし所は示して欲しかった。「主体性は教えることができるか?」「微妙」「アッハイ」これじゃなぁ…。

  • 医学教育学会に行って、この本の内容がとても「そこ」に関連していることを実感しました。でも、業界の人はたぶん読まないと思いますねえ。

  • 著者の言うように主体性の育成は難しく、そもそも主体性とはなんぞやと言うところもカチッと定まってるわけもなく、となると主体性を教えることについて自分の頭で考えるしかないよねという結論になるのは致し方ない。
    このテーマについて著者から明確な、端切れの良い回答を求める時点で読み手に主体性が無いということかもね。

  • 医療現場において、医師の主体性を育てるための教育はどうあるべきかについて主張したいようだが、できていない本。
    期待していただけにがっかりである。こんな本を選書に上梓しちゃう筑摩書房もどうしちゃったんだろうか。

  • 自分自身、職場の新人さんたちと話していて、前に指示したことと矛盾していること言ってるなぁと思うことがある。ただ、言葉の上では矛盾しているようでいて、自分の中で矛盾はまったくなくてさ。同じことを、真反対の言葉で言っている、と感じるといった方が正直なところ。でもそれを伝えるのは難しいのも、現実で体験している。

    本書でいわれている主体性を教える、ということも近いことであるように感じた。医学教育の話ではあるんだけど、いろいろな場面に適用できそうな話だね。最後のサッカーネタも、ご本人が好きだからというのもあるのだろうけど、とても楽しく、何より腑に落ちた。

    岩田氏は内田樹がすごい好きなんだなぁということも、多々感じたところ。内田樹だけじゃなく、いろいろなところから引用もあった。仕事をばりばりすると同時に、勉強家なんだろうね。

  • □主体性を持つというのは自分で考えることができるということである。
    □主体性は、ただ、後ろ姿によってのみ伝えられる。

    目次
    はじめに
    第1章 主体性が不可欠な医療現場
    第2章 主体性を涵養しない教育制度
    第3章 医学教育の迷走
    第4章 医学生たちとの対話
    第5章 主体性とは何だろうか
    第6章 サッカー日本代表チームの成熟と主体性の変遷

    「お弟子さんはみんな師匠が好きで、師匠から何かを得たくて、吸収したくて、影響を受けたくて来てるんだから、師匠が普通にしてれば、感受性のある人はみんな吸い込んで、自分の中で消化して出す」

    p53 文科省官僚がPISAの順位やメディアの批判に一喜一憂し、教育方針をころころを変えていること自体、彼らがいかに自立性、主体性を描いているかの証左である。

    p56 「アメリカがそう変えろというから変えよう」とか「グローバル・スタンダードに合わせないと、世間に顔向けできないから、そうしましょう」というのは、それこそ典型的な「ムラ的発想」であることに当事者は気づかなかった。日本国内だけで固まっていた「船団」を、アメリカを旗艦とするする「船団」い再編することにした。「親方日の丸」が「親方星条旗」に代わっただけです。おおもとのメンタリティアは少しも変わっていない。

    p64 内田樹先生が繰り返し紹介されるエピソードに「六芸」の話がある。東洋における君子に必要な基本的な学術であると孔子が考えたもので、礼・楽・射・御・書・数のことをいう。内田先生によると、「礼」は祖霊を祀る儀礼、「楽」は音楽、「射」は弓を射ること、つまりは武術、「御」は馬術、「書」と「数」は読み書きそろばんのことである。

    p120 自己学習とは、自己学習せざるをえないのっぴきならない事情、その渇望が学習の成果をもたらすものである。そのような態度(難しい言葉でいえばレディネス)がない医学生に「はい、ここで自主的に自己学習してくださいね」と言ってもなかなかうまくいかないのである。主体性は、勝手に湧いてはこないのである

    P150 学生がものを知らないことは、どうでもよいんだよ。問題は、自分が分かっているところと分かっていないところの分水嶺がどこにあるのかを理解することだ。(中略)それこそが最大の「学び」なんだよ。

    P203 監督のイメージするプレーを具現化するのが選手の仕事である。監督がこうやってほしいというプレーを自分の判断で行わなければならないのだ。選手は主体的、自主的に判断し行動する能力と、監督の意を汲んでこれを実践する能力という一見矛盾する二つの能力を同時に発現しなければならない。

  • 全体になるほど,という内容だったけど,あまりにも内田樹調だったので,その辺が気になってしまった・・・。サッカーのたとえ話はわかりやすい。

  • ちょうど、ビュートゾルフの公演を聴いたところだったので、
    自主性というものを考える良い機会に。

    ほめない、事実を認めるだけ。
    議論の材料を用意しない、不十分な情報しか提供しない。
    説明しない。

  • iPhoneの使い方が参考になった。
    kindleやpodcastなどのアプリを導入してみた。

    正直こういったタイトルの本には抵抗があったが読んで良かった。
    最後に時間の絶対的優位性について述べられていることがそれを払拭してくれたと思う。
    そもそも時間は有限でありどんなにあくせくしてもいつかは死ぬのだということがきちんと書かれている。

    ‘どんなに削り取って時間を取ろうとも巨視的にいえばそれは些細なことにすぎない。
    それにも関わらず、時間を作ることでいてもいなくても変わらない組織で過ごすよりも愛する人や好きなことに費やすことができるのだ(要約)’

    三日坊主でもいいじゃない、という言葉が個人的には気に入った。
    なんでも数打てば当たる精神でやってみようと感じた。

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著者プロフィール

1971年、島根県生まれ。島根医科大学(現・島根大学医学部)卒業。神戸大学都市安全研究センター感染症リスクコミュニケーション分野および医学研究科微生物感染症学講座感染治療学分野教授。著書に『コロナと生きる』(朝日新書、内田樹との共著)、『新型コロナウイルスの真実』(ベスト新書)、『僕が「PCR」原理主義に反対する理由』(集英社インターナショナル新書)ほか多数。

「2022年 『撤退論 歴史のパラダイム転換にむけて』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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