ノーベル経済学賞の40年 上: 20世紀経済思想史入門 (筑摩選書 52)

  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (299ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480015563

作品紹介・あらすじ

一九六九年の創設以来、四〇年間で六四名の受賞者を選出したノーベル経済学賞。いったい彼らは何を発見し、それはどのように役に立っているのか。ミクロ経済学からマクロ経済学、一般均衡に国際貿易、ゲーム理論に行動経済学。一見わかりにくい受賞者たちの理論を、彼らの半生、人柄とともにたどると、今日まで苦闘を重ねてきた経済思想の流れが見えてくる。20世紀の経済思想を一望できる格好の入門書。

感想・レビュー・書評

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  • ウィットに富んだジョークがいたるところに散りばめられていてすごく面白かったしすごく読みやすかった。アメリカ人のジョークをテレビ番組で鑑賞しようとしてもそれはとても見れたものではないが、こういった種の本でよきタイミングで挿れられると、リズム感のよさとも相まって読書のペースが格段に上がる。もしかして日本人の本てつまんなかったのかなとさえ感じてしまった。次何読もうかなと考えていて、クルーグマンの『経済政策を売り歩く人々』とかあったなと思い出すなどした。
    この本は全体を通じて、自由主義を信奉する経済学者たちおよび完全市場の前提から社会を数式で表現しようとする経済学者たちの習癖に、一貫して批判的なまなざしを向けている。現代経済学といえども、合理的な経済人を想定できるかどうかや市場は完全かどうかといった論点は、この論点そのものがそうであるように、遡れば(というよりそれそのものだろうが)新古典派とケインズ派の対立に帰結するらしい。もちろん著者は後者を支持する立場なのだろうが、この対立はたぶんずっと解決されないのだろう。右派と左派の対立に近いように思う。
    当然ながら本書は(経済ではなく)経済学をある程度学んだあとで読むととても有用である。これまでミクロやマクロの教科書を読む中で目にしてきた学者の名前が出てくるたびに、それだけで胸躍る。しかもこの本はアメリカ人が書いたものだから、例えばトービンのq理論や分離定理でおなじみジェームズ・トービンがイェール大学で教鞭を執っていたとき、教え子の大学院生らはトービンに敬意を表して小文字の「q」がプリントされたTシャツを着ながら授業を受講していた、といったエピソードを披露してくれる。いや、おもろいよ。まあ、少なくともトービンのqが二神マクロとかで出てきてようわからんかった思い出がある人なら興味深く読めるだろう。加えて実践的なところでは、教科書では一見してそこまで明示的に記されることのない新古典派の理論とケインズ派の理論が、本書ではやはり明確に区別されて紹介される。つまり教科書を読んでいて無批判になるほどと受け入れていたある2つのモデルが、じつは理論的に相反するものだったことに気づかされる。これまで自分がいかに精緻な読みをしてこなかったか、反省を促されるのだ。
    あと読んでて思ったことでいうとノーベル経済学賞(「ノーベル」は厳密にはつけてはいけないらしい)受賞者たちはみんな優秀すぎること。大学生のときは凡庸だったが修士コースに入り研究職を志すようになってから才能が開花したとかいう記述は一つもない。唯一、第7章で登場するモディリアーニが「数年間は勉強で苦労」したらしい。でも直後にローマ最高の高校に入学したらしいから、その苦労って中学生のときのってことだ。
    あと数学はやはり大事。
    あと経済学史は意外に大事。

  • 20世紀以降の経済学の歴史について解説された本で,分野ごとにまとめられており読みやすい。縦書きで数式は少なめ。

  • ふむ

  • 11月27日 ノーベル賞制定記念日

  • ノーベル経済学賞受賞者を通じて経済学とはを問う本。
    受賞者達を評価された研究テーマを元にいくつかのカテゴリに別け、それぞれの人生や研究テーマや学会や世の中に与えた影響を簡潔にまとめた構成。

    各受賞者がどういう研究を評価されたのかが凄くわかりやすく、また各人の為人も楽しめる内容でした。
    第一章の経済学賞の成り立ちやマスコミでの扱われ方も興味深い。
    高度に数学的な話を理解してもらうことは難しく、簡潔に述べると一般常識のようにも見えることによる話などは一般の無理解を嘆く面もあれば選考基準が世間とかけ離れている面でもあるので考えさせられる。

    全体として数学ゲームと揶揄するべき編重基準や政治的理由の疑いなどへの警鐘の色合いが強い文章ではあるが、経済学賞とは何かを考えるにはとても良い本でした。

  • 69年に新設された経済学賞の意味合いを理解していませんでしたが、人類の発展に貢献した者に与えられるノーベル賞の中で異質なものを感じていましたが、読むと成程と思います。そもそもスウェーデン国立銀行の提案・負担によるものだということ。また科学といえるのか?という疑問から数学や統計の要素が目立つ研究で成果を挙げた人が好まれているということ。従ってガルブレイスは受賞していない!この本を読むことにより、アダムスミス、ケインズという経済学の大きな流れの中でハイエク、フリードマンら自由至上主義者のシカゴ学派、サミュエルソンなどの位置づけが理解できる。ハイエクとミュルダールの2人の対立する立場の同時受賞で2人とも喜べなかったという逸話は生々しい。ヒックス卿の【国王が厳しい財政状態に陥る仕組みの研究】が評価されなかったという逸話も面白い。カーネマンの「フレーミング効果」は錯覚を起こすは心理学そのものであり、ミクロ経済学が心理学と近い領域にあることが分かる。サイモンの決断の分析もそう思われる。スティグリッツの「シグナリング効果」は孔雀の尾羽根は自分の優秀さを伝える装飾に過ぎない!大学教育も同じ!という説明には笑える。著者が冒頭に書いているように、経済学史の巨人たちの紹介を通して経済学を知る巧著である。

  • 2013年57冊目

  • レビューはブログにて
    http://ameblo.jp/w92-3/entry-11459060369.html

  • 新着図書コーナー展示は、2週間です。
    通常の配架場所は、3階開架 請求記号:331.2//Ka66//1

  • ノーベル賞をとった経済学者62人を概観することで、経済学史の見取り図をつくろうという試み。学説ごとにおおきなまとまりをいくつかつくり、そこに数人ずつを配置する。たいへん整理されていて読みやすく、学説だけではなく人物・経歴などにも目配りが効いていて、楽しめる。
    上巻は次のような配置。
    「自由主義者の経済学」(ハイエク、フリードマン、ブキャナン)
    「ミクロの信奉者――シカゴ学派」(ベッカー、スティグラー、シュルツ、コース)
    「カジノと化した株式市場」(ミラー、マーコウィッツ、シャープ、ショールズ、マートン)
    「さらにミクロに」(ヒックス卿、ビックリー、マーリーズ卿、ヴァーノン・L・スミス)
    「行動主義者」(ハーバート・A・サイモン、カーネマン、アカロフ、スティグリッツ、スペンス)
    「ケインジアン」(サミュエルソン、ソロー、トービン、モディリアーニ、クライン、ミュルダール)

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