ノーベル経済学賞の40年〈下〉―20世紀経済思想史入門 (筑摩選書)

  • 筑摩書房
4.24
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本棚登録 : 77
レビュー : 10
  • Amazon.co.jp ・本 (286ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480015570

作品紹介・あらすじ

ノーベルの遺言で設立されたノーベル賞に、スウェーデン国立銀行の提案によって追加された経済学賞。その人選については、これまでも議論の的だった。はたして経済学は科学なのか。人類のどんな課題に向けて、経済学は進むべきか。そして彼らは受賞にふさわしい人物だったか。経済学賞受賞者たちの思想の系譜から、今日のわれわれが直面している問題の本質が見えてくる。混迷を深める世界経済を読み解くための必読書。

感想・レビュー・書評

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  • 11月27日 ノーベル賞制定記念日

  • 上巻に引き続き各受賞者達の受賞理由と為人の解説と最後にノーベル経済学賞に対する提言となっている。

    受賞した順番ではなく似た評価基準ごとにまとめてあるので体系だてた整理がしやすく受賞理由が理解しやすく、20世紀経済思想史入門のタイトルに相応しい本だと思う。

    受賞者の国籍にアメリカが異常に多いこと、市場万能論者・数学ゲームの評価が多いこと、現実社会に好影響を与えたのもあるが瑣末な話も多いこと、評価された理論が受賞後破綻していることがあるなど、経済学賞への評価は懸念をもたれていることもあると思う。数学的理論を簡易に説明できないことが懸念に拍車をかける部分もある。そんな状況をどう捉えるかを考えるにも良い本だと思います。

  • 模範的な人格者セン、東インド諸島出身のルイス卿、GDPの概念を考えたクズネッツ、不治の病の疑いで運よくソ連を脱出したレオンチェフ、旧社会主義ソ連で苦労したカントロヴィッチ、離婚合意書に賞金分割を書いていたルーカス、統合失調症だった天才数理学者ジョン・ナッシュJr、おたく族の集まりだったゲーム理論のパイオニアたち、など実に人間模様の紹介が楽しい本でした。受賞順ではなく、分野別に記載していることが読み易くしている所以か。最終章の「ノーベル賞再編へ向けて」は経済学の客観性が一般科学と異なるが故の難しさから、例えばサブプライムローン問題を正しく説明できる受賞者がいただろうか!という問題提起は的を得ている。ムハマド・ユヌスは本来あるべき経済学賞が相応しいが、経済学は人間性に関わる学問であるとの主張し、学資ローンにより世界の若者たちの幸福に大きく貢献しているが、経済学賞は受賞できず、平和賞を06年に受賞しているとのこと。皮肉な話である。

  • 2013年61冊目

    なぜムハマド・ユヌス氏はノーベル平和賞を受賞し、ノーベル経済学賞を受賞できなかったのか。

    本書の主張は終章の「ノーベル経済学賞の再編に向けて」にまとめられているが、上記の問題点に端を発しているものではないだろうか。
    ノーベル経済学賞を誰に与えるかの選定は非常に難しい。ケインジアンか、リバタリアンか。経済学の評価は決して政治と無関係に語ることはできないのである。さて、ではなぜユヌス氏はなぜ受賞できなかったのか。その問題点の核は経済学を科学に高めることこそ経済学者にとって重要なことだとノーベル経済学賞の選定委員会が考えていたからではないか。筆者の主張の中で、既存の概念を数学の公式として表したことで受賞した学者が多すぎるという意見がある。確かにそれは重要なことではある。しかし、である。現実の問題から経済学は決して離れることはできない。
    ユヌス氏はノーベル平和賞の受賞スピーチにおいて、「生活の中にある政治的、感情的、社会的、精神的、環境的側面」が経済学において無視されていることに懸念を表明した。大学から現実社会を見つめ、マイクロクレジットを考案したユヌス氏らしい発言である。
    もちろん経済学に数学的証明が必要ないわけではない。重要なことは、数学的証明によって経済学に高める必要性はあれど、それに固執する必要はないということである。経済学は社会科学という人間を扱う学問である以上、人間性を無視することはできない。科学的である必要はあるが自然科学ではなく、社会科学である必要があるのではないか。
    ノーベル経済学賞の影響力は高い。経済学を学ぶ大学院生にも、その論文テーマとして影響を与える。その意味で、ノーベル経済学賞はより多様性を持つ必要性があるだろう。

  • レビューはブログにて
    http://ameblo.jp/w92-3/entry-11461747743.html

  •  下巻は新古典派の経済学者たち、GDPや投入産出分析などの発明者たち、ゲーム理論の研究者、国際貿易理論、計量経済学者、歴史や制度に注目した研究を残した人たちを扱っている。上巻よりくくり方が難しい人たちが集められている印象だが、こちらもひとりひとりの業績が短くまとめられていて読みやすい。
     最終章では「ノーベル賞再編へ向けて」と題して、著者自身の考えを述べているが、ここはなかなかおもしろい。たとえば、世界経済への貢献が広く認められているグラミン銀行のユヌスが受賞していない一方で「特に新しい洞察を得たわけでもないのに、経済でよく知られた考え方や行動を数学モデルに置き換えただけで、ノーベル賞に選ばれた学者が多すぎる」と苦言を呈している。経済学を自然科学として認めさせたいという欲求よりも、実際にある経済問題を解決するための研究を大事にするべきだという提言は、なるほどと思わせるし、本書での著者の評は一貫してその方針が窺えると思う。

  • 新着図書コーナー展示は、2週間です。
    通常の配架場所は、3階開架 請求記号:331.2//Ka66//2

  • 上巻に引き続き、過去40年間のノーベル経済学賞受賞者が7つのグループに分類され、取り上げられている。個人的には、クズネッツ、レオンチェフ、アロー、セン、ノース、ウィリアムソンの研究と業績が興味深かった。

    下巻では、ノーベル経済学賞受賞者に対する著者の評価がかなり鮮明に示される。自然科学関連のノーベル賞の真似をして、数学や統計学を偏重し過ぎる傾向に警鐘を鳴らし、もっと現実の経済問題の解決に役立つ研究を優先すべきであると主張する。

    多様性の尊重、政治的なバイアスの排除、現実的な経済問題や現実的な価値を持つ研究の重視、優れた経済理論も決して長続きしないということの認識も必要だと指摘する。ノーベル経済学賞が持つ(優れた研究に対する)シグナリング効果として、経済学賞が若手研究者の将来の研究分野にも重要な影響を及ぼす点も指摘する。

    経済学は人間性に関わる学問であり、ノーベル経済学賞は、経済のパフォーマンスの改善につながるイノベーションや発見を評価すべきであると主張する。

    経済モデルは事象を単純化し、本質を見極めるのには優れた手法である。しかし、モデル自体が自己目的化したり、モデルの精緻化に腐心するあまり、現実の経済問題との関連性を忘れてしまえば、「経済学は役に立たない」という誹りは免れない。

  • 上巻から始めて、一気の読み終えた。読み応えもあるし、非常に面白い本。

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