シベリア鉄道紀行史―アジアとヨーロッパを結ぶ旅 (筑摩選書)

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  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (286ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480015617

作品紹介・あらすじ

列強による世界分割のさなか、ロシアの極東開発の重点を担ったシベリア鉄道。20世紀の歴史に翻弄され続けたこの鉄道を旅した近代の日本人の目は、車窓に何を見たのか。ヨーロッパに至る憧れの旅路、軍隊や流刑の民を極東に送る脅威の鉄道、夢の共産主義国家、危険な脱出劇の舞台…当時のガイドブックや新聞記事、ジャーナリストや政治家、作家や芸術家らの記述をたどり、シベリア鉄道という表象装置のイメージ変遷を追う。

感想・レビュー・書評

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  • シベリア鉄道の紀行文を辿りながら、シベリア鉄道とそれを取り巻く社会情勢を解説する本。「シベリア鉄道目線でシベリアとその周辺域の戦前史を語る本」と言ってもいい一冊。
    シベリア鉄道とセットで作られた東支鉄道(満鉄の北半分)の歴史も含まれ、それが中国との関係ではなく、ロシアやソ連との関係から語られる。かなり興味深い視点を提供してくれる一冊だった。
    第一次大戦後のシベリア出兵に関する記述が特に興味深かった。「シベリアに出兵したが、諸外国の干渉で撤兵した」以上のことを中学歴史レベルでは教えてくれないわけですが、その出兵領域がウラル山脈近くまで伸びていたのは初耳。「第二次大戦直後、ソ連にはひどい目にあった」的な日本の文脈に誤りがないのは確かだけど、「シベリアでやられた分、満州・千島でやり返した」という見方をソ連・ロシアが持っていたとしても不思議はない。
    文中でも交戦相手の組み合わせの変化で、対日感情が大きく変化する様が紹介されている。また、シベリア鉄道の整備が注目される際、そこから期待される経済効果という利点と、軍事的行為という難点の双方が取り上げられてきたことも紹介されている。
    移ろいやすい国民感情に必要以上引っ張られないようにすること、日ロ親交化のデメリットばかりが語られる昨今のマスコミに一定の疑念をもつべきであること、この二つを教訓とすることができた一冊。

    なお、鉄道紀行史であるにも関わらず「じゃあ、これに自分も乗ってみたい」といまいち思わせない一冊でもある。
    作中の紀行体験に、一番バリエーションがあるのは日欧直通の切符が発売されている時期。「とりあえず乗ってみよう」の気楽さで行けない制度的なめんどくささが、シベリア鉄道の旅情をそそらないのかな、と邪推したくなる一冊でもありました。

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著者プロフィール

東京女子大学現代教養学部教授。専門は文化学・日本近代文学。
主な著書に『海の上の世界地図―欧州航路紀行史』(岩波書店、2016年)、『シベリア鉄道紀行史―アジアとヨーロッパを結ぶ旅』(筑摩選書、2013年、交通図書賞)、『資生堂という文化装置1872-1945』(岩波書店、2011年)などがある。

「2017年 『〈異郷〉としての日本』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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