- Amazon.co.jp ・本 (378ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480015815
感想・レビュー・書評
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旧約聖書の神の概念がどこから持ち込まれ、育まれたのかを、聖書学による文献としての聖書の精査と考古学の成果などの視点から解き明かそうという本。踏み込んだややこしい議論は避け、初心者的な宗教学の流れや俗説の排除などからフォローしてるし注すらなくて完全に一般向けの雰囲気だけど、とても面白くて夢中になって読んでしまった、というか面白い所だけを見せてもらっている。注とかがっつりつけてもっと専門的に踏み込んだ本書いてほしいと思うけど、この本でもどこが今議論になっているのか、誰がどんな意見で議論しているか、という部分はきちんと書かれているのでありがたい。興味あればぐぐってねという感じなのか。著者の意見と議論の流れがはっきり区別されているのも好印象。ちょうど今月同じようなテーマで訳本を出していらっしゃるのを知って即注文した。
神が「我々」と語る時に著者(編集者)は何を意味しようとしていたのかという話や、イスラエル民族の宗教観を国家ー地域ー家庭のレベルごとに理解していくべきだという議論、倫理的十戒の成立過程など、なるほど!となる話ばかりで、90年代以降の急激に進む議論のうねりの中で新しい聖書とイスラエルの姿が見えてきていることに感動する。もちろん紀元前1000~くらいの話は特にほとんど記録も痕跡も残っていないために「とても説得力のある仮説」以上のものには現状なりえないのだが、それでもかすかに残った痕跡からヤハウェとイスラエルの源流を追い求めるのはロマンがありすぎる。
申命記は話の流れ上かなりクローズアップされているが、この本を通して読むとイスラエルの歴史と文化、著者の意図がはっきり重層的に感じられて違った味わいになり俄然面白いと感じられるようになった。真剣に聖書を読もうと思ったらヘブライ語やらないとだな…道のりは長い。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
キリスト教、イスラム教、そしてユダヤ教における
唯一神であるヤハウェが、歴史的に段階を踏みながら
いかにして唯一神になったかということを平易な文章で
わかりやすく解説した本。自説とは違う意見も書き記し
それでも私はこう思うという誠実な態度も好感が持て、
言わんとするヤハウェの発展の歴史がすんなりと腑に
落ちてくる良書。だがおそらくはそのわかりやすさと
平易さゆえにこの本に反発する信者も少なからずいる
だろうな。 -
多神教から一神教へと進化したのか、その逆に一神教から多神教へ退化したのか、著者は明らかに進化の立場を取っている。一神教は長い人類の宗教を遡ってもユダヤ・キリスト・イスラム教に至るイスラエル人以外には古代エジプト第18王朝においてアクエンアテン(アメンへテプ4世)がアメン神に統一を試みた実験に見えるだけだという。一体どんな信仰だったのだろうか…?BC14世紀というと、モーセの時代と重なることを考えると、すごく興味深いところである。旧約聖書の解説、そして古代オリエント地方の「イスラエル」に関する遺物の分析にも詳しいが、最も面白いのは旧約聖書に登場する人物「名」の分析に見る神の名前の登場!明らかに神(エル、ヤハウェ、そしてバアルなどの異教の神)を含んだ名前がある時期に顕著な特徴があり、それが唯一神への信仰の確立との関係を分析するところ。ヨシア王(BC 6世紀)の宗教改革が「申命記」の発見だという解釈から、申命記の影響を受けた歴史書に見える唯一神の強調、第2イザヤ以降の唯一神による救済という考えが深まっていく中で、現在の一神教に至る、何度も宗教改革が重なる中で今の一神教の信仰が成立していったという強い主張である。(終章で5段階の革命と整理している。)