「健康第一」は間違っている (筑摩選書 97)

著者 :
  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (286ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480016058

感想・レビュー・書評

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  • 健康欲がコントロールできないのは健康に価値を置きすぎるから、生存欲が捨てられないのは長生きするのに価値を置きすぎるから
    常々健康は人生の目的ではなく、手段であると考えていたので共感できた。

  • 定説のように言われている高血圧は悪い,喫煙は悪い,といったことにはあまり根拠がないということが分かる。非喫煙者で長生きしたほうが人生全体での医療費が高くなるといったことが隠されている。

    医療の効果を高く見せているだけで,実は差は小さいということも。

    2014/10/27に図書館に予約
    2015/02/21にやっと届いた。

  • 読む前の期待と、読後の印象とで、ここ数年で一番、いい意味でギャップが大きかった本。
    最近、がんは治療して苦しむよりも、放置しておいた方が結果的に幸せになれるという類の本を何冊か読んで、こんな考え方もあるんだ、と大いに共感している延長線でこの本を読んだ。
    特に高齢者(70歳以上かな)の場合、医者の言う通りにいろいろと治療をしたり、節制したりすれば、何年、何か月かはひょっとすると長生きするかもしれないが、所詮わずかに長く生きるだけであって、好きなものを食べたいという食欲などを我慢して生きて本当に幸せな人生だと言えるのか。
    健康欲、生存欲はどこまで行っても際限がない欲であって、それに最後まで囚われた生き方が、本当に良い人生と言えるのか。
    両親も高齢化し、人生の終盤をどう生きるのがその人のためになるのか、ということを考えざるを得ない場面に遭遇するようになった今、とても深く考えさせられる1冊になりました。
    健康をとことん追及すること、長生きすることは絶対的な是なのかという点について、新たな視点をつきつけられました。

  • 目を引くタイトルであるけども、中身を読むと納得。みんながそうしているから、そうなんだと思考停止に陥っている私達に警笛を鳴らしてくれています。

  • EBM with philosophy。
    Evidenceに基づいていると言われている医療が意外と頼りないことをデータに基づいて解説し、次のステップをどのように考えていくかの選択肢を提示している。
    ねちっこいとも言える論考を積み重ねながら、行き過ぎた医療や自身の健康欲に抑制をかけ、医療には書ける程度の付き合いで、自分より若い者達に資源を譲っていくことの意義を結論として導き出している。
    EBMと哲学を同じ本の中でここまで濃厚に並列させている本は珍しいと思う。

  • 70歳を超えたあたりから急速に死んでいく。
    年齢調整死亡率では、ガンが多い=長生きが原因。漏水も多い。
    長生きしたい、と酒を飲みたい、は同じ欲望。
    周囲に迷惑をかけないようにと健康に気を付けると長生きして、結果的に迷惑をかける。健康に気を付けるのは、脳卒中の発症を70歳から75歳に延ばすだけ。
    若いうちに医療費を使わないほうが最終的には医療費が多い。、長生きして高齢になるから。禁煙も同じ。短期的には医療費を減らすが、長生きすることで医療費は増える。
    健康になりたいという欲望は、酒を飲みたいという欲望と等価ではないか。どちらが高尚ということはない。

    「私はまだ死ねない。まだやり遂げなければいけない仕事がある」牧野富太郎が95歳で死んだときの言葉。

    高血圧は、症状の結果として現れるもの。脳卒中の確率が高くなるが、160以上の血圧の場合しか研究はない。130から160の場合は、わずかに絶対確率が増えるだけではないか。下の血圧は、60歳をピークに減り始める。差が多いほど脳梗塞が多い。血圧を薬で下げても、脳卒中を先送りするだけ。

    統計のマジック、拡大グラフに騙されない。
    検定のほうが有意と出やすい。推定は治療効果があいまいになる。
    割合で示すと効果があるようにみえるが、実質の差(引き算)は小さい。
    病気になった率は大きく見えるが、起こさない率はもともと小さい。
    10%を5%に減らすことを検討するには数千人単位でいいが、2%を1%に減らす研究は数万人規模が必要になる。コストがかかる。その結果、160以上の血圧に対する効果が、130~160の人にも適用される。効果は小さい。
    80歳以上の人が降圧薬を飲むか、は微妙な問題。飲んでもせいぜい脳卒中を1年先送りするだけ。

    乳がん死亡に対して乳がん検診ははっきりしない。過剰診断の問題。検診が進んでも、早期乳がんが増加するだけで、進行乳がんはほとんど減らない。

    認知症の治療薬は効果が小さく副作用の危険が高い。認知症の早期発見はメリットがない。認知症を先延ばししても患者本人にはストレスが多くなるだけ。軽度認知障害は、年に5~10%が進行するだけ。過剰な早期診断はだれにとっていいことか。

    病院は死なないための医療、在宅は、死ぬからこその医療。
    薬は口から飲める間は飲む、が現実的。

    健康欲も生存欲も酒を飲みたい欲もどれも同じ。
    食欲をコントロールして、健康欲を刺激するのが現代の医療。検診も同じ。それを効果が曖昧な乳がん検診にまで適用するのは間違い。健康欲は、刺激されっぱなし。健康欲は実感が少なく底がない。
    健康に悪い刺激は、少しの刺激でも満足する可能性がある。健康欲をコントロールすると楽しい人生になる可能性がある。
    糖尿病の場合。週に一回はおいしいものを食べる。
    健康欲もコントロールする時期が訪れる。

    出生前診断は健康欲が行き過ぎた結果ではないか。出生前診断を受けずに健康第一の価値観を捨てること。

    孫に席を譲る=姥捨て山は自分の健康欲、生存欲をコントロールした。山に行かずに山に行く=譲る。
    予防接種を若い世代に譲る。検診を譲る。食べられなくなったら譲る。
    健康欲をコントロールして生存欲にキリをつける。運命にゆだねる。

  • 生存曲線を見て驚いた。70代を過ぎると急激に曲線が下がるのだ。人は必ず死んでしまう。どんなに頑張っても必ず死ぬ。そう筆者がいうことが、グラフでよくわかった。

    長生きは幸せかと筆者は問う。必ずしもそうではないと言う。検診を受けて一見長生きを実現した人が、がんの不安と戦い続けたかもしれないし、検診を受けなくて短命に終わった人が、がんの不安を避け案外幸せに暮らしていたかもしれないと言うのだ。

    病気がわかり、手術を受けて、動けなくなってしまう場合もあれば、何もしないことを選択して、通常通りの生活が続けられる場合もある。これは、親類が高齢で手術を選択したが、術後を痛がっていることからもよくわかった。でも、手術したから良かったこともあるかもしれず、どちらが良かったのかは結局わからない。

    また、健康に時間をかけ、得られた寿命の延長が2年だったとしたら、好きなことをやって、健康欲は無視して2年早く死んだって良いのではないかと提案している。

    それは確かに一理あるが、やはり私は検診を受けなかったと後悔してしまうと思うので、検診を受けた方が良いと思う立場だ。また、病気なく健康でいられるならばその2年のために健康的な生活を送りたいと思う。それは健康的な食事や生活が全く苦ではないからなのではないかと思った。

    死なないための医療と死ぬからこその医療があると言う。小さい子供がいるうちは、死なないための医療が重要だが、70代を過ぎ高齢になれば、死ぬからこその医療があるという事がよくわかった。

    人生は賭けである。出産がどうなるかは挑んでみないとわからないし、病気になってどんな治療を受け、どういう結果になるかと言うことも賭けである。確かに、医療も賭けだと理解できた。

    上手に生きるためには、全てを受け入れることが重要だ。生きているうちは予期せぬ事の連続で、多分それは死ぬまで続くだろう。予期せぬことの1部として、病気があり、死がある。上手に生きるためには、予期せぬことをひとまずは受け入れなくてはいけない。本当にその通りだと思った。

    筆者は、譲ることも提案している。高齢者検診の無料化を止めて、子供の予防接種を無料にするのはどうかと言う。こうした譲ることも大切なことだと感じた。

    筆者が伝えたかったメッセージは、健康や長生きはもはや成功ではない。健康力を上手にコントロールできることが成功であり、上手に賭けることができるのが成功であり、上手に譲ることができるのが人生の成功なのではないかということだ。

    筆者が伝えたかった事はよくわかる。それを踏まえて、やはり健康で長生きできた方が、痛みがなく、自由に動けて、幸せなのではないかなと思う。ただ、人は必ず死ぬものなので、ある程度年齢が高齢になったら、死ぬための医療を考え、医療を受けない選択もあると認識していきたいと思った。

  • ふむ

  • 生きたいと思う心が気の病(引用ではない)

  • 名郷節はありつつも表現はマイルドになり、いつもどおりエビデンスの多彩な見方・解釈を学べてよかった。ちょうど公衆衛生学会参加中に読んだので色々と思うことがありその後の診療や研究に影響を受けました。
    家庭医目指す人には超お勧めですよ。

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著者プロフィール

1961年、愛知県に生まれる。自治医科大学卒業。愛知県作手村国民健康保険診療所に12年間勤務。へき地医療や研修医教育を中心に活動し、2011年6月に西国分寺でクリニックを開業。地域家庭医療に従事し、20年以上にわたりEBM(エビデンスに基づく医療)を実践する。著書に『EBM実践ワークブック—よりよい治療をめざして』(南江堂)、『気負わず毎日使えるEBM超実践法』(金原出版)、『「健康第一」は間違っている』(筑摩選書)、『65歳からは検診・薬をやめるに限る』(さくら舎)など。

「2021年 『いずれくる死にそなえない』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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