分断社会を終わらせる:「だれもが受益者」という財政戦略 (筑摩選書)

  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480016331

作品紹介・あらすじ

所得・地域・世代間で分断化が進む日本。このままでは社会が壊れかねない。何をどう変革すればいいのか、その原理を示す救国の書

感想・レビュー・書評

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  • 人種や思想の違い、さらに政治的思惑によって分断が起きる。その結果誰が喜ぶのか?人々が分断で安心する、見下す、そして仲間内で結束する、集団のリーダーや為政者がこの企みで甘い汁を吸う。そこに私たちは気づくべきであろう。民主主義は思想の違いを乗り越えて共存していく過程がイデオロギーとして存続する。痛みが伴う茨の道だが多様性はそれも含んでいる。決して理想郷やバリアフリーな道標ではない。

  • 2022.17
    ・日本はOECD諸国の中で、格差解消のための「再分配」「富裕層への課税」両方においてほぼ最下位
    ・自己防衛と無関心によって社会が分断されている。
    ・人間を「協働のための単位」から「収益のための単位」に変えてしまった。

  • この本の主張が本当に正しいのかよくわからないし、税負担が増えるのは嫌だけど、今まで思っても見なかった視点なのでみんなで議論してみたくなった。コロナ対策の一律現金給付の話は、この本を読んでいたおかげで興味深かった。

    このように再分配への支持はそれほど高くないが、人々に共通するリスクやニーズに対処する政策への支持が高い国がある。格差の是正や所得再配分が必要と聞いて、多くの人が連想するのは、少数の高所得者に課税し、低所得者への給付を強化することだろう。だが、リスクの共有やニーズ充足への支持が高い国では、特定の階層から他の階層へのあからさまな再分配を行わない財政制度が作られる。そして、多くの人を受益者とする中で、低所得層にも給付が行われ、再分配が実現している。(p.56)

    いずれの場合にせよ、警戒すべきは「救済型の再分配」に取り憑かれ、「救済に値する人」を探し出し、その人への支援だけを再分配政策だと決めつけてしまうことである。制度を作る時、私たちは、「財源には限りがあるから、支援を本当に必要とする人にだけ財源を投入しよう」「働かない人に多くのお金をあげるのは許せないから、本当に必要な人だけを救済すればいい」という理屈についつい説得されそうになる。この理屈は正しいように思われる。だが、そうではない。なぜなら「本当に救済に値する人」を正しく判定することなど不可能に近いからだ。(p.60)

    国家公務員と地方公務員の人件費を比較するためのラスパイレス指数が各地で作成され、引用された。どちらが良いサービスを提供するかではなく、どちらが無駄かを人々は問われ続けたのである。いくら制度的な問題とはいえ、常識的に考えて、異様なのは、非正規雇用の経費が物件費として計上されるのを利用して、人件費を物件費に移し変えながら自治体の経費削減が行われたことである 。(p.78)

    債務と GDP から計算される比率は、純粋な時間を単位とするが、その単位として一年を用いることは何ら必然的なことではない。一年は地球が太陽の周りを一周する時間であり、農業のような季節型産業を除けば特別な経済的意味合いを持たない。もしエコノミストたちに四半期の GDP データを4倍して年換算するという習慣がなかったとしたら、 ギリシャの債務対 GDP 比率は現在の数字の4倍になる。そして、もし四半期の GDP データを4倍でなく40倍して10年換算するという習慣があったとしたら、ギリシャの債務対 GDP 比率は15%になる。ギリシャは1年で債務を全額返済する必要はないので、同国の支払い能力という観点からは、こうした単位の方こそ意味があると言える。(p.101)

    私たちは社会の分断線をなくすことを目指す。この観点からは、教育や医療、育児・保育、養老・介護といった現物給付の役割が重要になる。なぜなら現物給付は、あらゆる人間が必要とするものからできているからだ。例えば教育にせよ、医療にせよ、誰もが必要とする社会共通のニーズである。だからこそ、これらのサービスは無償ないしは低価格で提供されてきた。誤解してはならないのは、必要原理に基づく現物給付は、再分配を目的としてはいないということだ。あくまでも人間の必要を満たすのが目的であり、所得格差の是正は、その結果に過ぎない。(p.144)

  • そこそこの生活ができている私も、この社会のあり方に閉塞感どころか、窒息感すらもつ。だから著者たちがいう「必要原理」をてこに納税を納得させ、支出を統制する理念はすごくわかる。実現したらいいと思う。しかし、なにがこれを阻むのだろう。人間が本質的に備えているある性質が阻害要因になっているような気がする。後半、その性質の分析はあるが、これまで見たことのない世界なので、簡単に納得できないのが残念である。

  • 『幸福の増税論』と続けて読みました。選別的(救済的)な再分配から皆が受益者(共存的)な再分配へ。富める者への分配への疑問が起きそうだが、現に義務教育の無償は後者でありそれが日本の社会を今のような経済大国へと押し上げてきたことは確か。社会に生きる人間の基礎的ニーズは全ての人に提供し課税最低限の引き下げと累進性の強化、税に対する信頼と社会の連帯を取り戻すための大胆な提言です。

  • 社会

  • 税金の集め方と再分配の方法への提案がわかりやすい。あるとこから集中的に徴収して、必要としている層に分配.....では、皆のコンセンサスを得にくい。

  • 北欧型のすすめ、なんだが、人口3000万人超えて北欧型うまくやるのは相当難しい気がする。その辺の話があるとありがたい。

  • 20180204-0224

  • 342.1||Id

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著者プロフィール

慶應義塾大学教授

「2022年 『財政社会学とは何か』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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