ローティ: 連帯と自己超克の思想 (筑摩選書 138)

著者 :
  • 筑摩書房
3.73
  • (2)
  • (5)
  • (3)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 79
感想 : 6
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480016447

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • ローティのことを知りたくて読んだが、期せずして西洋哲学史を概観することとなり、かつ平易な語り口で、しかし確信を持って進む叙述には感銘を受けた。端的に言って良著。

  • ローティを軸に、西洋哲学史を丁寧に概観し、布置している。今を生きていく視点が得られた。ロマン主義を再評価できた。

  • ローティ本人の論文に挫折した私も、識者の解説で迂回してでも、ローティを理解しようと考えたため、本書を手にとった。蓋を開けてみれば、極めて分かりやすい説明で、ローティ理解は格段に進んだと言える。絶対的真理を掲げる人は怪しげだと見ていた私に、ローティの主張は恵みの雨であり、我々に関わりなく定まったものとして真理を探してそれに従うのではなく、我々を豊かにしてくれるような知見を形作り、さらにはそれも更新を続けて不断の発展を図る、というローティに心から賛同した。次はローティ本人の手に成る論文に挑戦してより良い理解を目指したい。とはいえ、アメリカと日本では思想風土は明らかに相違しているわけで、あまり熱狂的になってローティを妄信することのないようにしたい。そのためには、巷の話でもそうだが、極力正確に論旨を理解することだ。極力誤解のないように理解できれば、自分なりの視座を獲得できる気がする。冷静になって正確に読むことである。

  • リチャード・ローティの哲学を、わかりやすい語り口で解説している本です。

    ローティほど幅広い分野で活躍している哲学者は少なく、その思想の全貌を捉えることは容易ではありません。本書では、哲学プロパーの話題が中心となっており、政治思想についてはあまり述べられていません。著者はこれまでにも、「科学哲学者柏木達彦」シリーズなど、現代哲学の中心問題をわかりやすく解説する本を刊行しており、本書でも比較的ローティの思想になじみのない読者にも理解できるような工夫がなされています。

    前半は、20世紀の言語哲学における最大の事件というべき言語論的展開と、それについてのローティの見方、さらに『哲学と自然の鏡』におけるローティの中心的な主張などが解説されています。後半は、ローティが従来の分析哲学と対局的な位置にあるとみなされていたハイデガーの思想をどのように読んだのかという問題や、彼のロマン主義への取り組みなどが扱われています。ただ、ローティの入門書でこれらのテーマに立ち入る必要があったのか、少し疑問に感じました。

    また、ローティがプラグマティズムの立場から政治哲学の分野においてどのような貢献をおこなったのかということについてはほとんど触れられていないのも、少し残念に思いました。ただしこれに関しては、渡辺幹雄の『リチャード・ローティ―ポストモダンの魔術師』(講談社学術文庫)があり、本書の内容を補足するものとして読むことができるように思います。

  • リチャード・ローティの多面的な思想を、ローティと密接な個人的交流のあった著者が平易明快に解説。ローティの思想の前提となる哲学史的なことについても丁寧に触れられており、これを読むだけで近現代哲学の簡単なおさらいをすることもできる。
    広範な哲学的話題に言及するローティの思想をたどることは、著者の噛み砕いた説明をもってしてもなかなか難解であったが、絶対的真理は人間の考えとは別に定まっていて、人間はそれを鏡のように正確に捉えるよう努めるべきという「自然の鏡」的人間観を否定し、人間の「創造的」行為を重視するローティの基本的考え方には非常に共感した。

全6件中 1 - 6件を表示

著者プロフィール

1952年、香川県生まれ。京都大学文学部哲学科卒。京都大学博士(文学)。ハーバード大学客員研究員などを経て、現在、京都大学大学院人間・環境学研究科教授。著書に、『ロック哲学の隠された論理』(勁草書房)、『クワインと現代アメリカ哲学』(世界思想社)、『観念説の謎解き』(世界思想社)、『観念論の教室』(ちくま新書)、『ローティ』(ちくま選書)、『カント入門講義』(ちくま学芸文庫)、Inquiries into Locke’s Theory of Ideas(Olms)、 The Lost Paradigm of the Theory of Ideas (Olms)、「科学哲学者柏木達彦」シリーズ全5冊(ナカニシヤ出版)、「生島圭」シリーズ全3冊(講談社現代新書)など、訳書に、R.ローティ『連帯と自由の哲学』(岩波書店)がある。

「2019年 『デカルト入門講義』 で使われていた紹介文から引用しています。」

冨田恭彦の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×