貧困の戦後史 (筑摩選書)

著者 :
  • 筑摩書房
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レビュー : 8
  • Amazon.co.jp ・本 (343ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480016591

感想・レビュー・書評

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  • 岩田正美の本は面白い。著者によっては、同じ内容の繰り返しになってしまっていることが多いがこの人の本は何かしら新しい着眼点がある。
    この本では、戦後日本の貧困の「かたち」を素描している。「かたち」というこのふんわりとした語彙は厳密に意味を定めることがかもしれない。しかし、著者の多年に渡る研究から豊富な資料をもとに、統計だけでは捉えられない、具体的な貧困のかたちが立ち上がってくる。
    その結論として貧困対策への著者の立場を結論として引用する。「『自立』支援という政策目標は、個人の怠惰が貧困を生むという、きわめて古典的な理解に基づいている。だが問題は、怠惰ではないのだ。貧困を個人が引き受けることをよしとする社会、そうした人びとをブラック企業も含めた市場が取り込もうとする構図の中では、意欲や希望も次第に空回りし始め、その結果意欲も希望も奪いさられていく。だから問題は、「自立」的であろうとしすぎることであり、それを促す社会の側にある。」(pp324~325)

  • 日本に貧困があるか否か、みなさんはどう思われますか?ピンとこない、という方にこそ読んでいただきたい本です。この本には現在までの貧困の「かたち」が描かれています。

  • 貧困の問題は根深い。貧困に対する無理解や、誤解が貧困対策への理解の妨げになっている。
    生活保護費の不正受給を大きく報道するが、その割合は微々たるものであり、それを理由に保護を必要とする人までも締め出されている。原因と対策が正しく対応していない。

  • 第1章 敗戦と貧困
    第2章 復興と貧困
    第3章 経済成長と貧困
    第4章 「一億総中流社会」と貧困
    第5章 「失われた二〇年」と貧困
    おわりに 戦後日本の貧困を考える

    著者:岩田正美(1947-、東京都、社会福祉学)

  •  戦後日本の「貧困」の変遷をそれぞれの時代に沿って具体的な事実を通して(できるだけ当事者性を重視して)まとめている。貧困者の生活・家計の実情が具体的にわかる同時代史料を多く引用しており、数字の羅列ではない「生きた」戦後生活史・都市社会史として情報量が非常に多い。他方、本書では直接の批判は抑えているが、一貫して貧困を生み、貧者を食い物にする市場・企業の飽くなき欲望や、開発主義と治安主義のもとで貧困者を排除するばかりの政治、貧困者への攻撃・バッシングに加担する多数派大衆の存在が通奏低音のように響く。著者は最後に貧困の責任を個人に引き受けさせる日本社会を変えるにはどうすればよいか自問しているが、それに対しては多数決原理から逃れられない議会制民主主義をやめて、反貧困の強い意志を持った政治集団が市場や大衆を制圧するジャコバン的独裁しかないと答えざるを得ない。

  • 東2法経図・開架 368.2A/I97h//K

  • 貧困問題の碩学が御年70歳にまとめた本書は、もしかしたら、著者のライフワークの集大成なのかもしれない。「下流老人」とか「ネカフェ難民」など現在の貧困に関する言説は多いが、戦後史として、より広い時間・世相がまとめられていて、読み応えがある。特に、貧困の「かたち」という言葉で示される、貧困状態にある人々の諸々の様相をリアルに扱っているところが興味深い。
    本文もさることながら、「あとがき」に味わいというか、著者の色々な感慨が詰まっている。

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著者プロフィール

日本女子大学名誉教授

「2019年 『POSSE vol.42』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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