民主政とポピュリズム ヨーロッパ・アメリカ・日本の比較政治学 (筑摩選書)

  • 筑摩書房 (2018年6月12日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (224ページ) / ISBN・EAN: 9784480016683

感想・レビュー・書評

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  • ヨーロッパ諸国の政治の読み解き方を知るには良いかもしれませんが、それこそBrexitが喧しかった2017年あたりの動向を解説した内容がメインであり、且つ複数の著者によるオムニバス形式での記載のため一つひとつが短いです。逆にだからこそ読みやすいと言う面もあるのですが、やはり話題としては旬が過ぎており、どうしても古いニュースを読んでいるという感じがします。消して悪い本では無いのですが、本書の内容から、何か一般的な示唆を得ると言うところは、非専門家である自分にはなかなか難しいと感じるところがありました。

    一方でアメリカ政治に関するまとめは大変参考になりました。米国における大統領の役割やそれに伴う権限を理解すると、なぜ現在トランプがX(Twitter)で暴言に近いような発言をするのかといったことも理解ができるようになります。かつてフランクリン・ルーズベルトがラジオで炉辺談話を行って世論に訴えかけたり、テレビが活用される時代にはメディアでの発言が多くなったと言うのと同じ文脈で捉えることが可能なわけです。

    大統領令を差し止めるために州政府が訴訟を起こして、それを裁判所が憲法違反かどうかを頻繁に審査することを筆者は「ひとつの部屋の蛍光灯を消すために家全体のブレーカーを落とすような面倒臭い行為」と例えますが、言い得て妙です。面倒臭いが漏電が起こっているわけではないとし、トランプ政権になってからのアメリカ政治の変化を過大評価すべきではなく、アメリカ民主主義の危機といった表現も強すぎると言う筆者の考察は、まさに2026年に最高裁判決で違憲とされたIEEPAに論拠を置いたトランプ関税の動きなどを見ても当たっていると考えることができます。

    日本の政治については、政治の個人化が現れているとしている。例えば、自治体の首長と言う存在が大きくなっており、永田町の住人と言うエスタブリッシュメントという感じがなく普通の人に近いとイメージがある知事や議員が国政に影響を与えるようになってきていると分析する。これはSNSでバズった石丸氏や、2026年に大勝した高市首相のような動きに見事に表されている。

    また、いわば消費者民主主義といった民主制への理解が広がっていることにも言及している。有権者が政治家から示された選択肢から自分好みの政策を選んでその政治家を支持し、そうでなければ別の政治家を選ぶと言う買い物をするような感覚で、政治家や政党を取り替えるような態度のことを言う。本来は、選択肢そのものを作るために有権者が能動的に論議に参加すると言うことが重要なのだが、こうした動きの下では争点の形成や政策的な選択肢の形成に有権者は関わることがなくなり、政治家が提示していない選択肢の可能性に、想像を巡らせることもなくなると危惧する。結果的にわかりやすい争点、安易な選択、刹那的な効用ばかりが注目されるワンフレーズ・ポリティクスが出現することになり、これもまさに現在参政党の出現のような形で顕現化している。2017年時での分析で、これら現在までの動きがある程度読み解けると言うのは非常に興味深いことだと思います。

  • 開発目標16:平和と公正をすべての人に
    摂南大学図書館OPACへ⇒
    https://opac.lib.setsunan.ac.jp/iwjs0021op2/BB50108122

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/712917

  • 東2法経図・6F開架 313.7A/Sa75m//K

  •  シンポジウムが元なので読みやすい。佐々木毅先生が冒頭で、自分の学生時代はポピュリズムと言えば中南米の反エリート現象だったが、現在は先進国で21世紀に生まれた現象、という趣旨を述べている。
     本書では欧州と日米を国別に論じてもいるが、各国で一定の共通項(既成政党、特に中道左派の衰退)はあるようで、他方で完全に同じでもなく、なぜ同時多発的にポピュリズム現象が起きているのかすっきりした解は得られない。そもそもポピュリズムに対して、民主政を活性化させる面もあると一定程度肯定的な見方、反対者を排除し民主主義とは相容れないと否定的な見方、と研究者の間でも分かれているようだ。

  • 『民主政とポピュリズム ── ヨーロッパ・アメリカ・日本の比較政治学』
    編者:佐々木 毅
    執筆者:飯尾潤・池本大輔・伊藤武・小林慶一郎・阪野智一・谷口将紀・野中尚人

    【版元】
    ポピュリズムが台頭し、変調し始めた先進各国の民主政。その背景に何があるのか、どうすればいいのか? 各国の政治状況を照射し、来るべき民主政の姿を探る!

    シリーズ:筑摩選書
    定価:本体1,500円+税
    Cコード:0331
    刊行日: 2018/06/12
    判型:四六判
    ページ数:224
    ISBN:978-4-480-01668-3
    JANコード:9784480016683
    http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480016683/

    【目次】
    はじめに[佐々木 毅]

      第I部
    第1章 ポピュリズムの挑戦とEU[池本大輔] 
    1 ポピュリズムとは何か? 
    2 ポピュリズムが台頭するのはなぜか? 
    3 なぜEUはポピュリズムの挑戦にさらされやすいのか? 
    4 ポピュリズムの成否をわけるもの 
    5 ポピュリズムの帰結 

    第2章 ゆらぐドイツの大連立――メルケル政権の展望[安井宏樹] 
    1 二大政党の敗北 
    2 二〇一三年選挙の特殊事情 
    3 難民政策と新興右翼政党 
    4 ヴァイマール末期の再来? 
    5 「ジャマイカ連立」と「信号連立」 
    6 ナチスという呪縛 

    第3章 ブレグジットとイギリス政治[阪野智一] 
    1 二大政党政治への回帰 
    2 保守党の敗因 
    3 労働党が躍進した理由 
    4 ブレグジットはどう影響したか? 
    5 政党と支持層のねじれ現象 
    6 イギリス政党システムの変容と今後 

    第4章 マクロン大統領とフランス政治の行方[野中尚人]
    1 マクロンとその党が勝利するまで 
    2 大激変の選挙結果はなぜ生じたのか? 
    3 マクロンとはどのような人物か? 
    4 社会党の崩壊とポピュリズムの台頭? 
    5 マクロン政権とフランス政治の今後 

    第5章 イタリアと「民主主義の赤字」[伊藤 武] 
    1 イタリアの戦後政治 
    2 「五つ星運動」の台頭と中道左派、中道右派
    3 憲法改正と選挙制度改革の挫折 
    4 イタリア政治、今後の展望 
    5 日本への示唆 

    第6章 二〇一七年のヨーロッパを乗り越えて[水島治郎]
    1 既成政党の不振、二大政党の弱体化 
    2 危機に立つ中道左派政党 
    3 共通する「四どもえ」の構造 

       第II部
    第7章 トランプ政権とアメリカ政治[待鳥聡史] 
    1 協調が続かないトランプ政権と議会共和党 
    2 憲法制定時のアメリカ大統領 
    3 「現代大統領制」の出現 
    4 アメリカ大統領制の制度的特徴 
    5 大統領のディレンマと分極化 
    6 トランプは「普通の共和党大統領」になるのか? 
    7 中長期的な社会変化への影響にも注目を 

    第8章 二〇一七年総選挙と日本政治[谷口将紀] 
    1 調査から分かった有権者の傾向 
    2 選挙で重視した政策は何か? 
    3 憲法改正をめぐる調査結果 
    4 自民党・立憲民主党・希望の党当選者の比較
    5 有権者と政治家のイデオロギー分布 

    第9章 日本政治の展望[飯尾潤] 
    1 三つの「想定外」 
    2 混乱の背景に何があるのか 
    3 安倍政権の四つの問題点 
    4 今後のための、五つの論点 

    第10章 財政危機からみた政治システムの問題[小林慶一郎]
    1 世代間問題が示す政治の限界 
    2 将来世代の利益擁護には何が必要か 
    3 仮想将来人の社会契約論 
    4 社会統合の理念の再生 

    最終章 現代民主政の変容を読み解くために[佐々木 毅] 
    1 「一九八九年の精神」 
    2 歴史の中の民主政 
    3 先進民主政と新興民主政の行方 

    あとがき(二〇一八年五月五日 佐々木 毅)

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著者プロフィール

1942年、秋田県に生れる。東京大学法学部卒業。東京大学法学部教授、東大総長を歴任。東京大学名誉教授。専攻、政治学史。著書『プラトンと政治』『近代政治思想の誕生』『現代アメリカの保守主義』など。

「2014年 『情念の政治経済学 〈新装版〉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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