「暮し」のファシズム ――戦争は「新しい生活様式」の顔をしてやってきた (筑摩選書)
- 筑摩書房 (2021年3月17日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480017253
作品紹介・あらすじ
戦争は「新しい生活様式」の顔をしてやってくる。ていねいな暮らし、パンケーキ、制服、二次創作--。コロナとの戦いの銃後で鮮明に浮かび上がる日常の起源。
感想・レビュー・書評
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難しかった。大政翼賛会のメディアミックスを細かに検証。花森安治や太宰治の『女生徒』アヴァンギャルドなど私が惹かれたもの達が俎上にのってて悲しい。わかりやすい標語以外にも巧妙に生活に入り込み刷り込まれていく様が怖い。今の状況似てる。
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最近叫ばれている「新しい生活様式」によく似た、戦時下の「新生活体制」について、さまざまな資料から読み解いていった本。
あとがきで、「新生活体制」と「新しい生活様式」の比較が丁寧になされている。特に政治家の言葉の引用による説明は納得である。
「このようにコロナ禍は、注意しないと不用意に「戦時下」を引き寄せてしまう。(p339)」
必要だと迫られて、何か大きな動きに絡め取られていないか。なかなか、その渦の中にいる時には気付きにくいかもしれない。
私たちができるのは、何かおかしいと思ったことを忘れずに、できれば言葉にすることだろうか。 -
男文字女文字とか太宰とか家族マンガとか。「ていねいなくらし」に感じるもやもやの謎が解けた。
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あとがきの最後に
ー戦争はかつて「日常」や「生活」の顔をしてやって来たのである
この一言は 今のこのコロナ禍であるからこそ
真に迫ってくる
何もしらないことは罪である
そんな今だからこそ
自分の耳で聴いて
自分の目で見て
自分の頭で考えて
自分の言葉で語ること
の 当り前さ、大切さを
改めて思う -
「ミニマリスト」や「ていねいなくらし」は、「大政翼賛会」下の日本に似ている。国会命令であるか否かの違い、という視点には大いに笑った。
本著によると『暮らしの手帖』の花森安治は、「大政翼賛会」下の生活の手引きをつくっていたらしい。なるほど、そうかもしれないなと思う。「給料は4倍出すので」と言われて。統制下というのは、お金が動くのよね。プロパガンダ映画なんて、どのくらいの血税が動いたのだろう。
思えば12歳の頃、同級生のお母さんがお洒落で『暮らしの手帖』を愛読していた。その時、初めて『暮らしの手帖』という雑誌の名前を知ったが、花森イズムはもちろんかつての日本の生活を懐かしんでいたのかな。世代から類推すると。
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戦争は必ず大衆への洗脳から始まる。現在議論されている「専守防衛」や「防衛力強化」にしてもしかり。人に流されて問題の本質を見誤ると道を間違う。
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炊事や衣服、4コマ漫画などの気楽な娯楽からも翼賛を染み渡らせる工夫があったことを丁寧に分析。花森安治って朝ドラに出てきてたよね?レベルの知識だったため、本書で彼の才能が翼賛にも大活躍だったと知り驚いた。
確かに、コロナ禍、そして今のロシアのウクライナへの一方的な攻撃がある現在、憲法改正、”新しい生活様式”など、またファシズムを下が上に求めてしまっている気配を感じる。束ねられないように注意だ。 -
第二章まで。