- Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480017284
作品紹介・あらすじ
ギリシアの理性とヘブライズムの霊性の総合、それに続いて起きる解体――この総合と解体のダイナミズムに注目して、ヨーロッパ思想史全体を描き出す野心的試み。
感想・レビュー・書評
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古代から現代にいたるまでのヨーロッパ思想の通史です。
著者は、キリスト教思想を中心に西洋の哲学・思想を研究してきた碩学です。本書では、理性と信仰ないし霊性の関係という観点から、ヨーロッパ思想の全体像を記述しています。ただし、現代にかんしては個別の思想家についての言及はほとんどなされておらず、もっぱら信仰の世俗化が進行したことによる問題について言及されるにとどまっています。
「あとがき」で著者は、「日本には西洋哲学史はたくさん出版されているのに、今だ『ヨーロッパ思想史』という名称の書物がないことに気づきました」と述べており、その欠を補う意味をもつ内容となっています。著者がおこなった講義をもとにしているとのことで、比較的わかりやすいことばで説明をおこなおうと努めていることはうかがわれるのですが、やはりあつかう範囲が広く、またキリスト教思想史は西洋哲学史にくらべて一般の読者にあまりなじみがないということもあり、概観にとどまっている印象です。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
理性や霊性,世俗などをキーワードとした,一貫性のある思想史。主要人物だけでなくその周辺の評価にも詳しい。
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ジャケ借りしてみましたが、専門性が高くついていくのがやっとやっとでしたね。
それでも、ヨーロッパにおけるキリスト教と哲学の変遷が感じ取られ、どこかで神への憧れや崇拝がないと没個人、俗人化の中における無力、退廃感に脅かされる警鐘を鳴らしておられるのかしら。
カントを少し齧ってみてるので、後の実存主義、現象学とその前のデカルト、ストア派、アウグスティヌス、プラトンと系譜を学んでいきたいなーと思わせていただきました。
個人的な発見は、キリスト教的な禁欲的信仰を徹底していくと富が生まれ現世への欲望や生活への見栄が増加し、逆説的に世俗的になっていくという論理。各個人に内存する神に対する信仰が、自律的な個人偏向主義に陥ることによって近代化の大衆としての没個性が現代にも通ずるものはあると思う。現代はさらに個人の権利が横行しすぎて疲れているのか、マインドルフネスとかジャーマン的なものが流行してるのかな。 -
ぱっと開いたところに、(アリストテレスの)「四原因説は今日でも役立つすぐれたものであり」って書いてあってびっくりして閉じた。1932年生まれの先生か。えらい。