清沢満之の宗教哲学 (筑摩選書 0297)

  • 筑摩書房 (2025年2月14日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (304ページ) / ISBN・EAN: 9784480018137

作品紹介・あらすじ

厳密なテキスト読解によって定説を覆し、有機的な哲学体系を描き出す

著者渾身の書



===

明治期、真宗大谷派(東本願寺)の一僧侶としてその半生を生きた清沢満之。四十歳を待たずに病没したが、日本の哲学界に深い影響を与えた思想家でもある。しかしこれまで彼についてなされてきた理解は妥当なものであったのだろうか――。本書は、生い立ちや時代的背景を踏まえ、「教」「行」「信」「証」という四つの観点から清沢の宗教哲学の根幹に迫る。厳密なテキスト読解によって定説を覆し、清沢の全体像と思想的意義を鮮やかに呈示した著者渾身の書。

感想・レビュー・書評

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  • 清沢満之の思想を、一般の読者に向けてわかりやすく解説している本です。

    本書は序論・本論・補論で構成されており、序章では清沢の生涯が簡潔に紹介されています。そして中心となる本論は、清沢の思想の解説にあてられています。

    著者は、「清沢満之という人物の名前は、近代日本思想史や近代仏教などを専門とする研究者の間では、日本近代を代表する宗教家・思想家として知らない人はいないほど浸透してきたことは確かである」としながらも、「だが、世間一般には、日本近代を代表する思想家としてはおろか、その名前すらほとんど知られていないというのが実情であろう」と語っています。本書はこうした読者に向けて、清沢の思想を紹介することをめざしており、清沢の思想を著者自身のことばで語りなおすというかたちで解説がなされています。

    補論は、著者がこれまで刊行してきた本のなかでくり返し主張している、「精神主義」の思想に清沢の弟子の暁烏敏や多田鼎の考えが混入しているという問題の指摘がなされています。清沢の思想にいち早く注目した司馬遼太郎は、「キリで揉みこむような理詰めの追究のあげくに何らかの結論を得るにいたる体質」を高く評価していました。ところが清沢の思想は、前期の哲学期と後期の宗教期に分けられ、後期にいたって理論的な態度が放棄され、他力に随順する立場に移ったとされてきました。著者はこのような清沢解釈が、暁烏らによる清沢の思想の歪曲に由来すると主張し、正しい清沢の理解に立ち返るべきだと論じています。

  • 1. 宗教思想の展開
    - 清沢満之の思想は、時代状況とは無関係に独自に展開されるものではない。
    - 宗教哲学は、彼の生涯を通じて一貫した有機的な哲学体系として捉えられるべきである。

    2. 四法の構成
    - 本論は「教」、「行」、「信」、「証」の四つの章から構成されており、これらは浄土真宗の宗祖・親鸞の教えに基づく。
    - 「教」: 宗教に通底する基本的世界観。
    - 「行」: 宗教における修行の位づけ。
    - 「信」: 信仰や信心の本質。
    - 「証」: 宗教が目指す「さとり」の意味。

    3. 精神主義と思想の変遷
    - 後期の思想においては「精神主義」が重要なテーマである。
    - 清沢の思想の評価における「前・後期の断絶」を解消することが目指されている。

    4. 教育改革と社会的な影響
    - 清沢は教育機関を設立し、宗教と学問の融合を目指した。
    - 彼の教育改革は、近代日本における宗教界に大きな影響を与えた。

    5. 禁欲生活と宗教的体験
    - 清沢は禁欲的な修道生活を送る中で、宗教哲学の深化を図った。
    - 彼の禁欲生活は、他力門の念仏者としての思想の深化に寄与した。

    6. 自力と他力の関係
    - 清沢は自力と他力の相互作用について考察し、宗教的信仰におけるこの二元性の重要性を強調した。
    - 他力門の宗教において、信仰は無限の力への帰依として位置づけられる。

    7. 正信と迷信
    - 宗教上の信仰は「正信」と「迷信」の区別が重要であり、信じる内容が信仰の質を決定する。
    - 正信に基づく行動が倫理的実践に繋がることが示唆されている。

    8. 宗教と倫理の関係
    - 宗教は倫理道徳の根基を形成し、両者は「双拠両輪」として機能する。
    - 清沢は、宗教的信念が世俗の倫理にどのように影響を与えるかを探求した。

    9. 社会的文脈での宗教の意義
    - 清沢は、宗教が社会において果たす役割を重視し、公共の福祉に寄与することを強調した。
    - 宗教は個人の内面だけでなく、社会全体の倫理を形成する上で重要な要素である。

    10. 精神主義の実践
    - 清沢の晩年は、「精神主義」に基づく思想の深化が見られ、宗教的信仰が中心となった。
    - 彼の教えは、実践を通じて現実に根ざした形での宗教を目指した。

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著者プロフィール

山本 伸裕(やまもと・のぶひろ):1969年生まれ。東京大学文学部倫理学科卒業。東洋大学大学院文学研究科仏教学専攻博士後期課程単位取得退学。文学博士(大谷大学)。東京医療保健大学大学院医療保健学研究科准教授。専門は日本倫理思想史、倫理学、インド大乗仏教。著書に『「精神主義」は誰の思想か』(法藏館)、『他力の思想』『日本人のものの見方』(ともに、青灯社)、『清沢満之と日本近現代思想』(明石書店)など、校注書に『清沢満之集』(岩波文庫)がある。

「2025年 『清沢満之の宗教哲学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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