- Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480020475
作品紹介・あらすじ
アイディアが軽やかに離陸し、思考がのびのびと大空を駆けるには?自らの体験に則し、独自の思考のエッセンスを明快に開陳する、恰好の入門書。
感想・レビュー・書評
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累計発行部数が263万部のロングセラーの秘密を暴くため読んでみた。
かれこれ25年近く前になるだろうか。僕が学生の頃に、文章を書く苦手意識を少しでも払拭したくて手に取ったのが著者の「文章を書くこころ」という作品だった。
内容はきれいさっぱり忘れたが、学者なのに平易で誰にもわかる言葉でわかりやすく書かれていたことがとても印象に残っていた。
そんな経緯もあり、著者の話題の作品ということもありトライした。
〇〇学というのだからアカデミックかつ体系的なハウツー本かと思いきや全くそうではない。
ジャンルで分ければ、いわゆるエッセイと言っていいだろう。
以外つれづれに印象に残ったことを備忘的に記す。
◎朝飯前 頭使う仕事は朝がよい。しかも朝飯前に。夜型から朝型へチェンジするのが良い。→流行りの朝活を先取りしてた!
◎寝させる あることについて思索する必要がある時には一晩寝たらよいアイデア思いつく。考えたことを寝かせることでさらに素晴らしいアイデアを思いつくがある。→なるほど!この発想は意識してなかったけど言われて見ればそうかもしれないぞ。そういえば朝シャワー浴びるとふと解決策やひらめきが湧くことが非常に多い。
◎セレンディピティ 対潜水艦の研究からイルカの交信が発見されるなど思いもよらない副次的効果のこと。書斎で手紙探してると昔探してた万年筆が出てくるなど。→しかも大げさではなく人生にとって確かにこれ大事。
◎捨てる 知識はただ詰め込むのでは良くない。捨てたり整理することの重要性→ただのモノ知りではただめ。受け売りではなく自分で考えることが出来るようになるべきなんだな。そのために余分なものは捨てることだ。
◎コンピューター 知ることより考えることが大事だ。そうしないと人間の仕事はいずれコンピューターに奪われる。→まさに今のAIと人間のことを言ってるようだ。慧眼としか言いようがない。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
【感想】
だいぶ昔から気になっていた本だが、最近ようやく読みました。
要点を一言で言うなら、「覚える事より考える事を重視せよ」ということでしょう。
(「考える」という行為の材料として、「覚える」行為そのものが必要不可欠であるのは当たり前として。)
確かに情報過多である現代において、「覚える事」(=頭を倉庫化してしまう事)の重要性は少し下がってきている風に思える。
イノベーションを生み出す事、またそれが出来る人材こそが、これからも生き残っていけるのだろう。
グラーダーとしての能力も磨きつつ、飛行機型人間として自力飛行が出来るように自分を成長させないといけないなと感じた。
インプットとアウトプットにも近い意味があるなと思ったな。
この本自体が発刊されて30年以上という事に、非常に驚いた。
今でも同じような内容の本が多数出版されている事から考えると、近年の日本人にとって未だ解決されていない大きなテーマなんでしょうね。
こわいこわい・・・・
【内容まとめ】
1.人間にはグライダー能力と飛行機能力がある。
学校はグライダー人間の訓練所で、飛行機人間は作らない。
例外はあるが、一般に学校教育を受けた期間が長ければ長いほど、自力飛行の能力は低下する。
2.受動的に知識を得るのが前者、自分で物事を発明、発見するのが後者。
勿論グライダー能力を全く欠いていては基本的知識すら習得できず、どんなミスにつながるか分からないリスクもあるが、やはり飛行機能力は必要なのである!
3.教育を受けようとする側の心構えも必須
受け手も受動的なだけではなく、積極的な学習意欲、「多くの事を学びたい」という積極性が必要不可欠。
4.朝飯前
いかにして朝飯前の時間を長くするか?
どんなことでも言葉通り朝飯前に、早朝にすれば、さっさと片付く。朝の頭はそれだけ能率がいい。
朝の仕事が自然なのではないか。朝飯前の仕事こそ本道を行くもので、夜に灯をつけてする仕事は自然に逆らっているのだ。
5.カクテル
「ひとつだけでは多すぎる。ひとつでは、すべてを奪ってしまう」
自分だけの考え、独創的な考えで、自信を持つのは良いが、行き過ぎればやはり危険である。
一つだけを信じ込むと、ほかのものが見えなくなってしまう。
自分だけを特別視するのは思い上がりである。他にも優れたものはいくらでもある。
6.触媒説
新しいことを考えるのに、すべて自分の頭から絞り出せると思ってはならない。
無から有を生ずる思考など滅多に起こるものではなく、すでに存在するものを結びつける事で新しいものが生まれる。
7.情報の「メタ」化
第一次情報をふまえて、より高度な抽象を行うこと。
ニュースや新聞など第一次的な情報を元に、その同種を集めて整理し相互に関連づけることで「メタ化」された第二次思考が生まれる。
整理、抽象化を高めることで、高度の思考となる。普遍性も大きくなる。
8.つんどく法
→「積み重ねて置いておく」という意味ではなく、「同じテーマの本を積み上げて片っ端から読む」という意味。
有効なのが、あるテーマに沿ったものを「つんどく」して、片っ端から読み進めること。
そうしたら、綺麗さっぱりと忘れずある程度は頭に残る。
全部が全部覚えておくことなど不可能だ。
短期的に詰め込んでレポートを作成し、そして忘れる。
このサイクルが大切である。
9.「知って蓄積すること」よりも「考えること」に重点を置くこと。
人間が、真に人間らしくあるためには、機械の手の出ない、あるいは出しにくいことができるようでなくてはならない。
創造性こそ、その最たるものである。
【引用】
思考の整理学
p10
・学校はグライダー人間の訓練所で、飛行機人間は作らない。
新しいことをするには、学校が一番。学ぶには、まず教えてくれる人が必要だ。
これまで皆そう思ってきた。
今の社会は、強い学校信仰ともいうべきものを持っている。そして学校の生徒は、先生と教科書に引っ張られて勉強する。自学自習という言葉こそあるが、独力で知識を得るのではない。
いわばグライダーのようなもの、自力では飛び上がることはできない。
p12
いわゆる成績の良い学生ほど、この論文に手こずる。言われた通りのことをするのは得意だが、自分で考えてテーマを持てと言われるのは苦手である。
例外はあるが、一般に学校教育を受けた期間が長ければ長いほど、自力飛行の能力は低下する。
p13
・人間にはグライダー能力と飛行機能力がある。
受動的に知識を得るのが前者、自分で物事を発明、発見するのが後者。
勿論グライダー能力を全く欠いていては基本的知識すら習得できず、どんなミスにつながるか分からないリスクもあるが、やはり飛行機能力は必要なのである!
p17
教育はグライダー教育ではいけない。
そして、教育を受けようとする側の心構えも必須である。なんとしても学問をしたいという積極性がなくては話にならない。
昔の塾や道場はどうしたか?
入門しても、すぐに教えるような事はしない。むしろ、教えるのを拒む。薪割りや水汲みなど、雑用をさせる。
なぜ教えてくれないのか?と、当然不満を抱く。そしてこれが、実は学習意欲を高める役をするのである。
教える際も一気に教えず、焦らして、学習意欲を高めて、少しずつ教える。
陰湿のように見えるが、親切すぎないところに逆説的に相手の学習意欲を高める効果があり、ひいては飛行機能力を高める事につながる。
p24
・朝飯前
どんなことでも言葉通り朝飯前に、早朝にすれば、さっさと片付く。朝の頭はそれだけ能率がいい。
朝の仕事が自然なのではないか。朝飯前の仕事こそ本道を行くもので、夜に灯をつけてする仕事は自然に逆らっているのだ。
極端な話、朝食を抜けばいい。
腹がふくれたら、どんなことをしても動くものではない。
いかにして朝飯前の時間を長くするか?
p42
・カクテル
「ひとつだけでは多すぎる。ひとつでは、すべてを奪ってしまう」
自分だけの考え、独創的な考えで、自信を持つのは良いが、行き過ぎればやはり危険である。
一つだけを信じ込むと、ほかのものが見えなくなってしまう。
自分だけを特別視するのは思い上がりである。他にも優れたものはいくらでもある。
同じ問題について、AからDまでの説があるとする。自分が新しくX説を得たとして、これだけを尊しとして、他のすべてを削っては蛮勇に落しやすい。が、Xに最も近いB説だけを肯定しても、ただの我田引水である。
AからDまでとXをすべて認めて、調和折衷させる事が重要である。
p56
・触媒説
新しいことを考えるのに、すべて自分の頭から絞り出せると思ってはならない。
無から有を生ずる思考など滅多に起こるものではなく、すでに存在するものを結びつける事で新しいものが生まれる。
p65
・アナロジー
うまい説明や表現がないとき、「たとえて言えば、○○のようなものだ」といった形で、我々はたえずアナロジーの方法を用いる。
「あの人の行動はまるでマッチポンプ」
一方では火を付けて煽りながら、同時に他方では自分でそれを消火しようとすること。
p74
・情報の「メタ」化
第一次情報をふまえて、より高度な抽象を行うこと。
ニュースや新聞など第一次的な情報を元に、その同種を集めて整理し相互に関連づけることで「メタ化」された第二次思考が生まれる。
整理、抽象化を高めることで、高度の思考となる。普遍性も大きくなる。
p91
・つんどく法
→「積み重ねて置いておく」という意味ではなく、「同じテーマの本を積み上げて片っ端から読む」という意味。
カードにしろノートにしろ、いちいち手書きにしなくてはならなく、時間も手間もかかる。
また、せっかく書き留めたものも、全部が全部あとで使えるわけでもない。
後々役に立つこともあるが、それは偶然に支配される。
また、「記録した」という安心感が、忘却を促進するらしい。
その際に有効なのが、あるテーマに沿ったものを「つんどく」して、片っ端から読み進めること。
そうしたら、綺麗さっぱりと忘れずある程度は頭に残る。
そもそも、字を書いているとそちらに気を取られて、内容理解がお留守になりやすい。
もっぱら耳を傾けていた方が、話は頭に入るものである。
また、「関心」がものを言う。興味があることはそんなに簡単に忘れない。
かといって、全部が全部覚えておくことなど不可能だ。
短期的に詰め込んでレポートを作成し、そして忘れる。
このサイクルが大切である。
p112
・整理
PCなど他デバイスの出現により、人間の頭脳は「倉庫」としての役割だけでなく、知的生産をする「工場」という役割が必要になってきた。
その際、やたらと物が入っていては作業効率低下につながるため、余計なものは処分してスペース確保をする必要が生じる。
工場内の整理に当たるのが、「忘却」である。
工場としての作業効率を良くするためには、忘却が必要不可欠になってくる。
(勿論ある程度の知的材料は必要だが)頭を倉庫のようにして喜んでいてはいけない!
p204
・拡散と収斂(しゅうれん)
我々には二つの相反する能力が備わっている。
ひとつは、与えられた情報などを改変し、そこから脱出しようという拡散的作用。
もうひとつは、バラバラになっているものを関係づけ、まとまりに整理しようとする収斂的作用である。
p212
産業革命によって工場の主役は人間から機械に移り、機械に仕事を奪われた人間は、機械には手の出ない事務所の中に主要な働き場所を見つけ、サラリーマンが生まれた。
だが、コンピューターの登場で、この聖域もまたあえなく潰れようとしている。
「機械的」人間は早晩コンピューターに席を明け渡すという社会的な自然淘汰の法則を受けないではいられない。
これまでの学校教育は、記憶と再生を中心とした知的訓練を行なってきた。コンピューターがなかったから、コンピューター的人間が社会でも有用だった。
しかしコンピューターの普及が始まるこの現代において、この教育観は根本から検討し直す必要がある。
「知って蓄積すること」よりも「考えること」に重点を置くこと。
人間が、真に人間らしくあるためには、機械の手の出ない、あるいは出しにくいことができるようでなくてはならない。
創造性こそ、その最たるものである。-
【T高校のとある図書委員】さん
コメントありがとうございます。日々お勉強お疲れ様です。
確かにこの本の要点は「覚える事より考える事を重視...【T高校のとある図書委員】さん
コメントありがとうございます。日々お勉強お疲れ様です。
確かにこの本の要点は「覚える事より考える事を重視!」ですが、考えるにあたっての材料として、覚えて学ぶことも非常に大事だと思います(*^^*)
さて、頂いたご質問ですが、、、
非常に読み易い内容でしたので、中学生や高校生でも充分すぎるほどにご理解できるのではないかと個人的に思います!
むしろこの本を学生時代に読んでおけばよかったなと思うほどですね・・・
またブックオフで巡り会えたのなら、その時は是非ともご購入下さい!!(*´▽`*)2019/11/25 -
お返事ありがとうございますm(_ _)m
根っからの文系なのに暗記が嫌いだなんて致命的ですよね…
でも確かに思考の土台は学生時代に覚えたもの...お返事ありがとうございますm(_ _)m
根っからの文系なのに暗記が嫌いだなんて致命的ですよね…
でも確かに思考の土台は学生時代に覚えたものでできているんですよね!!
考えることも覚えることも怠らずに、毎日勉強に励みたいと思います。
早速ブックオフに走って行ってきます。2019/11/25 -
【T高校のとある図書委員】さん
僕も文系ですが、昔も今も、暗記は大嫌いです(笑)
学生だと定期的に試験があるので、暗記(覚える事)っていうの...【T高校のとある図書委員】さん
僕も文系ですが、昔も今も、暗記は大嫌いです(笑)
学生だと定期的に試験があるので、暗記(覚える事)っていうのはある程度は避けては通れないですよね・・・
でも、能動的に勉学に励めば、とても有意義な学生生活を送れると思います!!
僕も学生に戻りたいです。。。
勉強に限らず、今この瞬間を楽しんでくださいね!!2019/11/26
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●私は、自分の考えをまとめて文章にするのが苦手でした。その頃に出会ったのが本書です。この本を読んで多少は改善されました。
●本の中身は6項目で33個の話になっています。その中で、「とにかく書いてみる」の話がとても参考になりました。「 ①書き出したら、あまり、立ち止まらないで、どんどん先を急ぐ ②書くことによって、少しずつ思考の整理が進む ③頭の中で考えているだけではうまくまとまらないことが書いてみると、はっきりしてくる」 著者の考えに賛成です。
●私は、書く前に実践していることがあります。それは、最初に書こうとしている内容のキーワードを書き出すのです。書く内容に関係する熟語(夜明け、読書・・)を書き並べて、それを使って文章を書きます。文章を書き終えたら、ロジカルチェックして、完成です。
●一例として、コメントしましたが、他の話も大変示唆に富んでいます。一読の価値ありと思います。-
外山滋比古さんが書かれた本で、長く読み継がれている名著になると思います。私は読んでいませんが、若い時に読む機会があれば良かったなあ、と思う一...外山滋比古さんが書かれた本で、長く読み継がれている名著になると思います。私は読んでいませんが、若い時に読む機会があれば良かったなあ、と思う一冊です。2022/07/02
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2022/07/02
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不滅のロングセラーと謂れある本書
一度は読んでおかなくては!
意外にもエッセイ的に気軽に読めるところが驚いた
もう少しおかたくて面倒くさそうな(すみません)本かと…
■「師匠の教えようとしないものを奪い取ろうと心掛けた門人はいつの間にか自分で新しい知識、情報を習得する力を持つようになる」
まさに見て盗め!の精神
現代は教える方が積極的過ぎると言う
そのため、学習者が受け身になってしまうという
疑問や好奇心を膨らませる前に教えてしまう
~納得である
つい数年前までこの考えに至っておらず、「教えてもらってないことはできない!」と思い込んでいたあの頃…
幼少期は両親が口うるさく抑圧的教育を施され、新卒で入社した会社が一から十まで事細かに仕事を指示及び教育される場であった
そのため、長年「受け身体制」がガッツリできてしまっていたのだ!(しかしその頃はそんなことにも気づかない)
ある企業に転職し、初めて束縛から「解放」された
最初戸惑った上、教えられていないからどうしたらいいのか全くわからないことが多発
そのうちこの体制に慣れ始めるといかに自分が自分自身の脳を使って考えていなかったかがわかり、なかなか驚愕であった
なんともったいない人生を送ってしまったことか!たぶん脳の一部が腐っていたはずだ!
習い事も然り
10年以上同じ習い事をしているが、自分で考えていかないとちっとも伸びないことにようやく気付いた(遅)
「だって教えてもらえないとわからないもん」
「〇〇先生は細かく指導してくれないからついていけない」
こういった言葉が出るうちはダメだ~
■朝飯前の有効性
猛獣の訓練も空腹時とのこと
~確かにお腹がいっぱいでは眠くなる
ただ…
お腹すいていると全く集中できないんですぅ…
脳もエネルギーがいるはず
というわけで個人的にはムリという結論~
■寝させることで思考を生み出す
寝させる、忘れる時間をつくる
主観や個性を抑えて、頭の中で自由な化合が起こる状態を準備する
新しい結合により新しい思考を生み出す
忘れる(睡眠を使う)、忙しくしない
思考する時間と場所を確保
倉庫と工場に例えるなら脳は倉庫であってはいけない
~確かに仕事でも行き詰ったとき思い切って切り上げ、翌日やるとスッキリ片付くことがある
ブクログのレビューも然り(笑)
(ちなみにブクログのレビューをまとめ上げて即UPしたことは一度もない…そんな恐ろしいこと…できない)
少し寝かし、再度取り組むとあれよあれよと進むことが多々ある
■コンピューター
これまでの知的活動の中心は、記憶と再生
学校教育もこれが中心
これがコンピューターにとって代わられた
産業革命を考えても、「機械的」な人間は仕事を奪われる
本当の人間を育てる教育ということ自体が創造的
コンピューターのできない、人間にしかできないこと
創造性と独創性の重要さ
〜1986年に文庫化された本書であるが、まさに現代に当てはまっている
著者の先見がいかに創造的かが窺える内容だ
と、このような内容が例え話や、体験などを通し(良い意味で)ツラツラ書かれている
ガチガチにこうしろ、ああしろ的なマニュアル要素ばかり並べた押し付けじゃない辺りがなんとも居心地も良い
この若干の緩いエッセイ的な雰囲気のせいで、逆にここまでベストセラーになったのではないかとさえ感じる
この書自体が、ある意味余裕を持たせた思考方法なのかも…
確かに若い頃に読みたかった1冊だ…とは思う
しかしその頃にはこういう内容は心底しっかり理解できなかったのかもしれないなぁ… -
もっと早く読めばよかった、という感想を持ちもしたけれど、今だからこそ、「そうだよねー」と経験をもとに理解しながら読むこともできるので、わたしには今だからこそ読む気になれた本かもしれないと思う。
論文に追われている時に、論文の書き方の本を読んだところで、時すでに遅し、という考え方なので、むしろ、特に差し迫ったものがない今だからこそ、サクサク、ふむふむと、読めた気がする。
卒論の時にこれ知ってたらな~とは思ったけど、これから先、「考える」ことで何かにぶつかった時、この本の知識があることで、改めて振り返ってヒントをもらえる、そんな一冊。何年積読だったんだっていう。 -
あとがきにあるように、この本はハウツーを目指していない。
冒頭からずっと比喩的な表現が続きます。
読んでいてもアタマは整理はされないし、詰まる所思考を扱った文学的な読み物でしかないです。
読んで面白くなければ、価値のない代物。
著者が携わった、モーティマーアドラーの「本を読む本」の方が読む価値が高いです。 -
アイデアは一旦寝かすという行為が大事。一定期間経つと自然と良いものか悪いものか解る。朝飯前の時間を有効活用する。昼寝をすれば起きてから晩ご飯までが朝飯前と同様となる。
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「東大・京大生が根強く支持する異例のロングセラー!」というコピーに惹かれて読んでみた。
本書の内容は簡単に言うと、どういった心構えで学問をするか、学問に対する取り組み方や姿勢みたいなものがエッセー形式で書かれている。
「これからの時代で必要とされるのは、同じ空を飛ぶものであっても、自力では飛ぶことのできないグライダー人間ではなく、自力で飛び回れる飛行機人間である」と筆者は力説している。
確かに、今の時代だからこそより一層求められている人間像だ。
驚くのは、この本は35年以上も前に書かれているのだが、内容が全く陳腐化していないことだ。それどころか、現在、問題なっていることや、世間で論じられていることが数多く語られている。35年以上も前に今の状況を予見していたかと思うと、筆者の先見の明には驚きを隠せない。
35年前といえば、インターネットもスマホも無い時代であるが、この時から筆者は将来、コンピューターが記憶の大部分を補助する時代がくるので、人間の脳は記憶の為ではなく、新たな創出をするために使うべきだなんてことが書かれている。
今、人間は記憶に頼らず、分からないことはすぐにスマホで調べて、分かった気になってしまい、物事を覚えようとしなくなっている、今の時代は本書の予言どおりだ。
本書では「コンピューター」という言葉が使われているが、今の時代なら「AI」という言葉に置き換えてみればそっくりそのまま当てはまる。
コピーどおりなら、本書は東大生や京大生に良く読まれているようだが、たぶん、大学に合格した生徒達に最初に読ませるような「課題図書」か、口コミなどで「読んだ方が良い本」になっているのだろう。もし、なっていなかったとしても、大学生にこのような姿勢を持って学問に取り組んで欲しいという筆者の気持ちを理解できる学生が東大、京大には多いということなのだろう。
本書は頭を論理的に使う方法が書かれているが、本書内で使われている言葉は平易で非常に読みやすく、興味深い事例が多く論じられているので読者を飽きさせない。
さらに、本書にはテーマの見つけ方やそのテーマの発展のさせ方、寝かせ方など仕事に通じることもたくさん書かれている。
本書は大学生だけでなく、社会人1年生やこれから何か勉強しようという人にも非常に参考になると思うので、ぜひ一読をおすすめする。 -
「いくらか拘束されている必要がある。ほかのことをしようにもできない。しかも、いましていることは、とくに心をわずらわすほどのこともない。心は遊んでいる。こういう状態が創造的思考にもっとも適しているのであろう。(p.174)」
帯に「東大・京大で1番売れた本」とあるのが目に付いたので(笑)、手に取った。「如何にして自分の頭で考えるか」ということを扱った本である。
まず冒頭の「グライダーと飛行機」の話は、引用されているのをたまに見る。学校では、教えられたことを漏れなく蓄え、与えられた問題に正解を出すことを重んじるが、そこでの勉強は先生と教科書に引っ張られてのもので、いわば「グライダー」である。これに対置されているのが「飛行機」だ。飛行機は、引っ張るものがいなくても自前のエンジンで力強く自由に空を飛ぶ。自分のことを飛行機だと自信を持って言える人はそう居ないと思うので、この本を読んだ人は軒並み、いきなりここでグサッとくるはずだ(笑)。何ということはない、僕もそうであった。 学校教育において成績優秀な「優等生」は、傍から見えるほど心中穏やかでない。「勉強はできるけれども、社会では成功できないのではないか」ではなく、「勉強ができる『からこそ』、社会では成功できないのではないか」という、よく分からんコンプレックスが(少なくとも僕には)あった。僕は学校の勉強はそれなりに出来たけれど、そのことを他人から指摘される度に、褒められて単純に嬉しいという気持ちと同時になんとなく複雑な気持ちも感じていて、中学生の途中ぐらいからは自分の成績を出来るだけ隠したり嘘をついて実際より若干低く見せたりということをするようになった。もしこのような変な劣等感があったりすると、グライダー云々という記述を読んで、まさに自分のことだ!と反応してしまうわけである。それはともかくとして、グライダーでは何故いけないか。それは、コンピュータ(いまの時代ならさしづめ人工知能と言ったところか)という優秀なグライダーが現れたからである。
本書には、「思考の方法」が体系的にまとめられているわけではない。その意味で、筆者が後書きに書いているように、読者にノウハウを一から十まで教えるような所謂「ハウツウもの」からは程遠い。だが、チビチビと読み進めていると、幹となっているアイデア・言い方を変えて繰り返し述べられているアイデアがあることに気づく。それは、「思考は整理してやらないと使い物にならない」ということだ。ショーペンハウアーも同様のことを言っている。曰く、「食事を口に運んでも、消化してはじめて栄養になるのと同じように、本を読んでも、自分の血となり肉となることができるのは、反芻し、じっくり考えたことだけだ。 ひっきりなしに次々と本を読み、後から考えずにいると、せっかく読んだものもしっかり根を下ろさず、ほとんどが失われてしまう。(『読書について』光文社古典新訳文庫、p.140)」
では、思考を整理するとはどういうことか。それは、適度な「忘却」である。筆者は“見つめるナベは煮えない”という外国の諺を紹介しているが、これはというアイデアは敢えて一時的に意識から外すことによって、他のアイデアと有機的に結びつけ、発酵させる無意識の作用が働くことに期待するわけである。この過程の中で、腐ってしまうアイデアもあれば、輝きを増すアイデアもある。「寝させていたテーマは、目をさますと、たいへんな活動をする。なにごともむやみと急いではいけない。人間には意志の力だけではどうにもならないことがある。それは時間が自然のうちに、意識を超えたところで、おちつくところへおちつかせてくれるのである。(p.40)」 考えるとは専ら能動的な行為であるように思ってしまいがちだが、輝きの増したアイデアが再び訪れるのをひたすら待つという、受動的にならねばならない瞬間もある、というのが面白い。とはいえ、この無意識の作用に介入できないわけではない。発酵の種となる、良質な素材を準備しておけばいい。
最後の章で、筆者は「第一次的現実/第二次的現実」という概念に触れている。簡単に言えば、物質世界が第一次的現実で、観念世界が第二次的現実である。現代は第二次的現実が優勢な時代であることを認めた上で、筆者は次のように述べる。「しかし、知識と思考は、見るものと読むものとの独占物ではない。額に汗して働くものもまた独自の思考を生み出すことを見逃してはならない。いかに観念的な思考といえども、人間の考えることである以上、まったく、第一次の現実がかかわりをもっていないということはあり得ない。(p.194)」思考を整理するとは抽象化であるから、この記述は、これまで述べたことと矛盾しているのではないか。いやそうではない。もっと、実体験に根ざした、他人から与えられるのではなく自分の手で作り上げた抽象化が必要だと言っているのである。「第一次的現実に根ざした知的活動には、飛行機を要する。グライダーではできない。(p.195)」「少なくとも読書のために、現実から目をそらすことがあってはならない。読書よりもずっと頻繁に、現実世界では、自分の頭で考えるきっかけが生まれ、そうした気分になれるからである。もっと詳しく言うと、具体的なもの、リアルなものは、本来の原初的な力で迫ってくるため、ごく自然に思索の対象となり、思索する精神の奥底を刺激しやすい。(前掲書、p.19)」
たったの223ページと薄い本ではあるが、そこかしこに新しい発想を生むためのヒントがあって、刺激になる一冊だった。 -
40年程前に書かれているのに、今読んでも古くさくない。それにまず驚いた。本当にはやく読めばよかった。笑
特に印象的だったのはグライダー人間について書かれた始めの章。私のことだと思った。思考の整理をする以前に、思考することが苦手。読書をしていても本当に意味がわからないことがある。言葉の意味は調べればわかるけど、文脈でどう捉えたらいいのか分からない。小さい頃から言葉の本質というか、その言葉の裏側を想像すること考えることを怠ってきたからだと思う。
今の子供たちにも同じような問題(計算はできるけど文章題はわからない等)が起きていると聞いたことがある。
創造力の欠如、考える力を養わなければと言われ続けているけど、きっと教育の現場は私の頃とそんなに変わってないんじゃないかと思う。
子どもたちに家庭でできることはなんだろう、本の中にヒントがたくさんあった気がする。
本の内容と話がずれてきてしまったけど。私にとったはいろんなところに着想が広がって楽しい本だった。
著者プロフィール
外山滋比古の作品





