思考の整理学 (ちくま文庫)

著者 :
  • 筑摩書房
3.67
  • (1321)
  • (2077)
  • (2174)
  • (419)
  • (112)
本棚登録 : 20643
レビュー : 2145
  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480020475

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 「東大・京大生が根強く支持する異例のロングセラー!」というコピーに惹かれて読んでみた。
    本書の内容は簡単に言うと、どういった心構えで学問をするか、学問に対する取り組み方や姿勢みたいなものがエッセー形式で書かれている。

    「これからの時代で必要とされるのは、同じ空を飛ぶものであっても、自力では飛ぶことのできないグライダー人間ではなく、自力で飛び回れる飛行機人間である」と筆者は力説している。
    確かに、今の時代だからこそより一層求められている人間像だ。

    驚くのは、この本は35年以上も前に書かれているのだが、内容が全く陳腐化していないことだ。それどころか、現在、問題なっていることや、世間で論じられていることが数多く語られている。35年以上も前に今の状況を予見していたかと思うと、筆者の先見の明には驚きを隠せない。

    35年前といえば、インターネットもスマホも無い時代であるが、この時から筆者は将来、コンピューターが記憶の大部分を補助する時代がくるので、人間の脳は記憶の為ではなく、新たな創出をするために使うべきだなんてことが書かれている。
    今、人間は記憶に頼らず、分からないことはすぐにスマホで調べて、分かった気になってしまい、物事を覚えようとしなくなっている、今の時代は本書の予言どおりだ。
    本書では「コンピューター」という言葉が使われているが、今の時代なら「AI」という言葉に置き換えてみればそっくりそのまま当てはまる。

    コピーどおりなら、本書は東大生や京大生に良く読まれているようだが、たぶん、大学に合格した生徒達に最初に読ませるような「課題図書」か、口コミなどで「読んだ方が良い本」になっているのだろう。もし、なっていなかったとしても、大学生にこのような姿勢を持って学問に取り組んで欲しいという筆者の気持ちを理解できる学生が東大、京大には多いということなのだろう。

    本書は頭を論理的に使う方法が書かれているが、本書内で使われている言葉は平易で非常に読みやすく、興味深い事例が多く論じられているので読者を飽きさせない。

    さらに、本書にはテーマの見つけ方やそのテーマの発展のさせ方、寝かせ方など仕事に通じることもたくさん書かれている。
    本書は大学生だけでなく、社会人1年生やこれから何か勉強しようという人にも非常に参考になると思うので、ぜひ一読をおすすめする。

  • 論文作成を軸に書かれている。
    麦(素材)と酵素(アイディア)があれば発酵し始めるが、寝させないとビールにはならない。
    騒ぎ立てない。忘れてしばらく放っておく時間が大切。

    過集中して結論を急ぐのが私の弱点だったけど、これを読んでからフレーズを思い出すたびに、少しずつ改善できていると、今振り返って思える。

    ‘見つめるナベは煮えない’

  • 【学んだ事】
    ▼エディターシップ
    ・ありきたりなモノ同士を結び合わせても、新しいモノになりにくい。一見、とうてい一緒にできないような異質な考え方を結合させると、奇想天外な考えになることがある。
    ▼触媒
    ・モノを考えるにあたって、あまり緊張しすぎない。心をゆったりさせて、自由にさせる方が、面白い考えが生じやすい。没個性的になる。
    ▼セレンディピティ
    ・目的の課題をセレンディピティが起りやすいようなコンテクストで包む。人間の意志の力では、全てを成し遂げるのは難しい。無意識の作用に負う部分がきわめて重要である。
    ▼情報のメタ化
    ・思考の整理には、平面的で量的なまとめではなく、立体的、質的な統合を考えなくてはならない。低次の思考を、抽象の梯子を上って、メタ化していく。
    ▼カード・ノート
    ・本を読む際に、一読即座にノートは取らない。内容の区切りの良いところまで読んで、また後戻りして、ノートをとるようにする。
    ▼手帖とノート
    ・何か思いついたら、その場で、直ぐに書き留める。優れたアイデアが浮かんだとしても、忘れてしまっては意味がない。
    ▼メタ・ノート
    ・メモからノートへ書き写す。その中で、伸びそうな考えと、役に立たなさそうな考えを選別していく。新しい思考の生命には、コンテクストの適、不適がある。コンテクストを変えることによって、新しい展開が期待できる。
    ▼整理
    ・人間は新しい事を考えだす工場でなくてはならない。倉庫なら、PCが代用してくれる。
    思考の整理とは、いかにうまく忘れるかである。
    ▼忘却のさまざま
    ・一つの仕事をしたら、全く別の事をする。長く同じことを続けていると、疲労が蓄積する。能率が悪くなる。別種の活動ならば、とくに休憩などしなくても、リフレッシュできる。
    ▼とにかく書いてみる
    ・まだまだ書けないと思っている時でも、もう書けると、自分に言い聞かす。書いているうちに、頭の中で筋道が立ってくる。
    ▼ホメテヤラネバ
    ・自分の考えに自信を持ち、これでよいのだと自分に言い聞かせるだけでは十分ではない。他の人の考えにも、肯定的な姿勢をとるようにしなくてはならない。どんなものでもその気になれば、必ず良いところがある。
    ▼しゃべる
    ・ちょっと良いことを考えたからと言って、むやみやたらと人に話さない。褒められると、さらに考え続けようという気力がなくなってしまう。あえて黙って、表現に向かって内圧を高めていく。
    ▼三上・三中
    ・自分の観念をあまりに信頼している人は発見をするにはあまり適していない。
    ・文章上達の3カ条
    ① 看多⇒多くの本を読む事
    ② 做多⇒多くの文を作る事
    ③ 商量多⇒多く工夫し、推敲する事
    ▼ことわざの世界
    ・一般化して、なるべき、不偏性の高い形にまとめておくと、同類のものが、あとあとその形と照応し、その形式を強化する。自分だけのことわざのようなものをこしらえて、自己の経験と知見、思考を統率させる。
    【実践できる事】
    ① 文章力をあげる。
    ■オブジェクティブ&ゴール 週に3回は何かの対象を決めて、ブログを更新する。
    ② 日々考えたアイデアをメモする。さらに、伸びそうなアイデアをノートへ移していく。
    ③ 日々の読書のスタイルを変える。一章をノートに取らずに読んで、覚えている限りの情報を書く。そして、見直してから、重要な部分を再度ノートに書き込む。

  • 1986年に初版以来、現在までに200万部以上売られているロングセラー。ジャカルタの古本屋で120円で買いました。個人的に自己啓発的な本は得意ではなく、この本も全く期待しないで読みましたが、面白い本でした。
    読書法やファイリングのハウツー論にも触れられていますが、本書は外山滋比古さんが「自らの体験に即し、独自の思考のエッセンスを明確に開陳する」、娯楽性に富んだエッセイです。

    本書は人間には「グライダー能力」と「飛行機能力」があり、授業中の生徒のように「受動的に知識を得るのが、前者、自分でものごとを発明、発見するのが後者」。「この本では、グライダー兼飛行機のような人間となるには、どういうことを心掛ければよいか」が本書で論じられます。
    −考えに詰まったら一晩寝ればよい。寝ている間に考えは醸造される
    –何か思いついたらメモに残す。読み直して脈がありそうなものがあったら他のノートに移植する。この移植でアイデアが新しい意味をおびるようになる
    –思考の整理には忘却が有効。何を忘れるかは、しっかりした価値観が必要。自分の中で古典的になった着想は消えない。メモを取っても自分に関心のないことは忘れる。メモは取りすぎないことだ
    –断面的な知識も関連あるもの同士をまとめておくと、会話のタネくらいにはなる

    繰り返しになりますが、本書はハウツー本ではなくエッセイです。考えすぎるといい結果が出ないことを「見つめる鍋は煮えない」と表現するなど豊富なメタファーで楽しく読めます。お勧めの★★★★。

  • 30年以上前から変わらない真理?を説いています。

    落ち着いたら大学に行き直したいなとずっと考えていた私には酷な内容(笑)

    詰め込み教育の是非を問いています。
    知識を詰め込むことで自由な発想を阻害すること。

    どちらかというと優等生と言われがち(学校教育において)な私には耳が痛い話です…笑

    • QAZさん
      もうレジェンド級のロングセラーですよね。
      もうレジェンド級のロングセラーですよね。
      2018/04/22
    • あみさん
      思った以上に難しかったですが、考える力って大切です。
      思った以上に難しかったですが、考える力って大切です。
      2018/04/23

  • 本書を要約すると、"グライダー型"の学びでなく"飛行機型"の学びを、"倉庫人間"ではなく"工場人間"を目指せ、ということになると思う。
    具体的に述べる。


    ・学校教育では、教員に引っ張られる形での、受け身の姿勢での学びしか教わらない。これでは学ぶことは半ば強制された不自由なものである上に、問題設定や答えがあらかじめ用意されている状態での思考力しか育たない。これが"グライダー型"の学びである。しかし社会における課題解決では、問題を自ら設定し、あるとも知れぬ答えを探すことが求められる。この形の思考は"グライダー型"の学びでは育たない。
    課題の設定から答えの無い問いの探求まで、全てを自力で行う"飛行機型"の能動的な学びが必要である。

    ・ネットなどで簡単に知識が手に入る現代では、知識を溜め込むだけの"倉庫人間"であってはいけない。既存の知識を活用し新たな知恵を生み出す"工場人間"になることが求められる。
    "工場人間"に必要な能力は以下の3つ

    ① 知識の保管のためにコンピュータやノートなどの外部の"倉庫"をうまく活用する能力(例えば、適切に"成型"、"整理"して保管する能力)

    ② そこから"適切な材料(知識)"を選び出す能力

    ③ 選んだ材料を適切に調合し反応させ、"製品(研究成果や新たなアイデア)"を生みだす能力

    そしてこれらの能力を身につけるためには、学校で行われている暗記中心の教育ではなく、上手に忘却する能力こそが重要である。


    本書は上記を示した上で、良い"倉庫"たるノートの付け方、良い忘れ方などの具体的な方法論を示している。

    個人的には共感する点も多く、またその上で新たな発見がありとても勉強になった。比喩や文学的?な表現も豊富な文体で、とても楽しく読めた。

    しかし客観的根拠に乏しく、主張は基本的に著者の経験や故事にのみ基づいている。40年ほど前の、認知科学も未発達な時代に書かれた本なので仕方がないところもあるかもしれない。
    よって思考の整理"学"と言えるほど普遍的であるかは微妙なところで、どちらかというと"コツの集まり"のようなものに思える。

    以上の理由より本書の手法が万人に適したものかどうかは未知数ではあるものの、少なくとも私にはしっくりきた。
    そもそも思考法を試すのにリスクはないのだから、自分に合うか合わないかは試してみればすぐにわかる。その点で本書に客観性や普遍性などを求める必要は薄いとも言える。

    どちらにしても多くの気づきを得られる本なので、読む価値はあると思う。

  • 思考の整理法ではなく思考の整理"学"というタイトルから分かる通り考えるとはどういうことか について真っ向から論じていた。「考えはべらぼうに人に話すのではなく発酵させるべき」「いかに情報を捨てるかが重要である」といった著者独自の見解が興味深かった。

    この本によって自分が収斂的思考ばかり働かせていることに気づいた。今まで考えを素早くまとめることで組織に貢献することが少なくなかった。が、社会人として求められるのは飛行機人間であり、拡散的思考がなければ飛ぶことはできない。そのために新しい解釈を創る訓練をしていかなければと思った。

    その拡散的思考を鍛える訓練として適切な手段として、大学における卒業論文執筆と文学作品(特に洋書であればなおさらよい)の読解 は有効である と外山氏は述べていた。手始めに卒業論文に取り掛かろう。(宣言)

  •  著者も書かれていたが,この本はあくまで,著者の思考の整理方法(考える方法)について紹介されたものであり,ハウツー本ではない.もちろん著者の方法(朝飯を抜いてうんぬんなど)をそのままマネすることもできるが,それではグライダー人間になってしまう.飛行機人間になるためには,自分で思考し,それを整理する必要があると考えられる.
     この本で私が一番耳が痛かったのは,収斂性,拡散性の話である.私もご多分にもれず,小論文のような答えのない問題は苦手だ.これが正解だという自信が持てず,絶えず1つの答えを求めている.しかし,これでは収斂性しか鍛えられていない.思考は,収斂性だけではない.拡散性と収斂性の二つがある.今のままでは思考の半分の収斂性の思考しかしていない.しかもそれは受動的である.とは著者の言葉である.これはかなり耳が痛かった.拡散性の思考を少しでも身に付けるにはどうすればよいか,これから考えてみよう.そのためにはまず忘れる.記録をしてから,しばらく寝かせてみようと思う.忘れたままになってしまわぬように,ここにも記録を残しておく.

  • 工場と倉庫。人間の脳とコンピュータを言い表した表現。何かを産み出す工場としての脳、多くのものを整理するための倉庫としてのコンピュータ。記憶と再生能力でコンピュータに劣る人間としては、前者のような知的創造力が必要であるにもかかわらず欠如している現代に対しての警告と、知的創造を産み出すための思考の整理方法について書かれた一冊。この本を読んだからといって急にアイデアが湯水のように溢れ湧いてくるという訳ではないが、情報の取り扱いなど参考となるものは多々あり。また、使い古された考えではあるが、新たなアイデアを考える時、0から1を産み出すことに執着するのではなく、1と2から3を産み出すことに着目すべきとの考えがこの本にも記されていた。過去から存在しているアイデアは時の風化作用をくぐり抜け、強固なものであるが故、積極的に利用すべきとのこと。
    この本は一読で終わらず、繰り返し読み知的創造を膨らます思考の整理学に対して、著書と対話して始めて有意義なものとなるであろう。

  • 情報や考えたことをどうやってなににストックしておくか、ここ数年の悩みどころだったのだけれど、この本を読んでそのこつが少しわかった気がする。

    切り取ってスクラップし、どんどんノートに考えを書き足していくという、一見今の時代とはそぐわないような手法だけど、電子化しているかしていないかの違いだけで、根本は同じである。

    一番印象的だったのは、「本当に頭に残しておきたいものはあえてメモらない」ということ。メモると安心して忘れてしまうから。

    大学時代に読んでおきたかった。これを読んでいたら少しはまともな卒論が書けただろうなあ…

著者プロフィール

お茶の水女子大学名誉教授

「2019年 『やわらかく、考える。』 で使われていた紹介文から引用しています。」

思考の整理学 (ちくま文庫)のその他の作品

外山滋比古の作品

ツイートする