梶井基次郎全集

  • 筑摩書房 (1986年8月1日発売)
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Amazon.co.jp ・本 / ISBN・EAN: 9784480020727

みんなの感想まとめ

人間の内面に潜む不安や孤独を鋭く描いた作品で、作者の独自の視点が光ります。日常の些細な心境を、純粋な言葉で表現するその観察力は圧巻であり、読者に深い共感を呼び起こします。特に、冷たさや清浄さに対する熱...

感想・レビュー・書評

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  • 窓を覗く、檸檬を握る。私も彼と一緒のようなことを人生でやったことがある。でも彼のようには感じなかった。注視すべき一つの体験として自分のなかに刻まれなかった。ここに小説家とそれ以外の人間の差があるのかもしれないなと思った。
     ひんやりとしたのものや清浄なものが熱病に冒されていた彼に与えた安らぎ。幼い頃、喘息を患っていた私にもわかるような気がした。
    また本書とは関係ないのだが、寺田農氏による「檸檬」や「ある崖上の感情」の朗読が素晴らしいので、聞いてみてはいかがだろうか。

  • のっけから主語を広げるが、多分カフカやカミュを持ち出さなくとも誰もが生きていることに不安を抱えている。むろん、その不安を純度を高めて文章化したところにカフカたちの誠実さがある。梶井基次郎もまたそうした、「えたいのしれない不吉な」不安を抱えなければならず、その不安を愚直に見つめ孤独の中で書き続けたのだと思う。私自身なぜ自分が今死なないのかとまで思い詰めた状況で読んだせいか、彼の言葉が沁みて感じられた。意外とフェルナンド・ペソア『不安の書』の隣にこの本を置くこともできなくもないかなと思う(私はそういう読者だ)

  • 文章うまいし短編ばかりだし読む価値あり。
    「早逝したのは残念だがあれが絶頂期だった」と知り合いが言っていたが、個人的にはまだまだこれから伸びていく人だったなと思う。
    一人称の作品が多いので、もっと三人称を描けるようになる梶井さんを見たかった。
    心理描写もさることながら、会話文が一番好きです。

  •  習作、遺稿を含めたすべての作品が収録されている。そのため、作品のいくつかは話が似ており、梶井基次郎が作品を完成させるまでの過程と苦労がわかる。また本書の末尾に、実際に梶井基次郎と親交があった宇野千代の文章も収録されており、宇野から見た梶井の人物像を垣間見える。それによると、人と話すのが好きでしかも話が面白かったという。その反面、自身の話については語ることは少なく、病気を患ったこと(それにもかかわらず激流の川の中に飛び込んだ)についても周囲に打ち明けなかったらしい。さらに解説によると、梶井は青春や病気に捉われたことで、日ざしや雲などといった世界を発見して、それが感情や感覚となって揺れ動いた自己を発見したのではないかと考えられる。

  • 梶井基次郎という人は、結核という病を得て死について考え考え、考えぬいて生きたんだなというのがよくわかる。
    世間と隔絶されてしまったかのような焦燥感、絶望感、最後は諦念と恐怖のなかにかすかに達観も見られ、どこか救われるような気持ちになったりもした。どれを読んでも胸にせまるものがある。

    読みながら、自分自身の父のこと母のことを思い浮かべてなんともいえない切ない気持ちになった。
    著者はこの文書を書きながら涙を流し、血を吐いているんだなと思った。
    若くして亡くなったことを惜しむ声は多いけど、若くして亡くなることがわかっていたからこそ、ここまでの輝きを放った人だったのではとも思う。

  • 美しい表現や文章に表すことができないような体験を文字として美しく羅列していると思う。
    自分が今まで忘れていたようなことをこの人の文章を読んで思い出したことがある。
    ただしまだまだスムーズに読むことができない話もたくさんあって、全部は読めていない。
    年齢を重ねて、時が来たら読めるようになると思ってそれを待っている。

  • 高校だか中学だかの国語の教科書に、『檸檬』が載っていたことは覚えているが、しかし、こんな美しい文章だったことは記憶になかった。

    大人になって読み返してみると、実に豊かな描写で感銘を受ける。

  • 梶井基次郎の文庫版全集。
    丸善の京都本店に行ったら梶井基次郎の何かを買わねばならぬ……ということで、『檸檬』の岩波文庫版や角川文庫版などをコツコツ買い集めていたのだが、本書をもって、恐らく現在、新刊で入手可能なものは全て揃ったと思われる。『来年から京都で何を買うべきか?』というのはさておき、夭折した作家である梶井基次郎が遺した文章はさほど多くない。何しろ遺稿や断片的なテクストまで纏めて、文庫1冊に収まってしまう(昨今の文庫本としてはやや分厚い上、本文級数はかなり小さくはあるが)。実際のところ、代表作だけで良ければ、各社から出ている文庫でほぼほぼ読めてしまうのだ。しかし、例えば夏のフェアの限定カバー(新潮社の真っ黄色は何度見ても凄い)や、丸善限定の複刻カバーなど、つい買ってしまう魔力のようなものに満ちている。お陰で『檸檬』が家に何冊あることかw 因みに全集は単行本版も持っている。
    さて、本当に来年から、京都丸善で何を買おうか。流石に『檸檬』ばかりあってもしょうがないしなぁ……。
    無論、梶井基次郎本人が行った『京都の丸善』は既に無く、移転した先も1度閉店している。現在、京都BALのテナントとして営業している『京都本店』は、屋号は確かに丸善だが、DNAとしてはジュンク堂の方が強く出ているように感じる。しかし、『京都』の『丸善』という、少しばかり(?)特別な店で買うのだから、買って満足するものを選びたい。次に行くまでに、そういう本に出会えるといいのだが。ただ、読みたい本ってついその場で買っちゃうのよねぇ……。

  • うつ病で一人部屋の隅にいた時にこの本を繰り返し読んでいた。この作者の作品群に共通して垣間見える孤独な感じが自分の心を癒してくれるような気がした。でも、少し幸せになった今は本棚から取り出す事がめっきり減った。
    そんな作品。

  • 自分の影と対話するような面と、母親や友人との、やりきれなさや苛立ちを抱えつつ、それでもどこか縋るような透明な関係性に共感して引きつけられる。
    「檸檬」(角川文庫)になかった初読の作品では「路上」、習作の「卑怯者」「彷徨」が特に印象的だった。

    「路上」では崖の道をあえて滑ってみたり、「冬の蝿」では病を抱えているのに山奥に置き去りにしてもらって遠くの温泉地まで夜中に一人歩く話が出てくるんだけど、実際の梶井さんも重症の肺結核で友人の前で川に飛び込んで泳いでみたりしたというから、病んでる人の持つ反転したエネルギーの凄さよ…。

    ちなみに宇野千代さんの寄稿では、梶井さんの行動は彼女を心配させることを目的としたものだったとされてて、私的にはそういう次元に留まらないんじゃないかなと思ったりも。梶井さんが宇野さんに「死ぬときは手を握っていてくれますか」と生前言っていたのに実現しなかったエピソードは良かった。

  • どうしよう、ちゃんと読んだはずなのに、読み終わった後内容を何も覚えてない…。こんなことってはじめてだ。
    読んでる間は絵画を見てるみたいに楽しめました。本当に綺麗な文章を読んでいたことしか覚えてない。白昼夢だったのか…。

  • 時間をおいて何度も読み返したくなる。

  • 理不尽な病に生涯に渡って苦しめられるその惨めさこそ小説の本質であり、自分の運命と必死に格闘した梶井にとっては小説を書くしか生きる道がなかったのだと思う。

  • 桜の樹の下には、
    屍がうまっている。はずだ。
    そうでなければあの美しさの説明がつかない。
    生と死
    美と醜というような対比なのか?
    命という尊さがないと美しいものを生み出せないということなのか?

  • ・桜の木の下には

  • 2020.7.10
    今更ながらに読了。
    すでに梶井基次郎よりも長く生きてしまったけれど、あんまり人は成長しないもんだなぁ。と自分を振り返る。
    10代に比べたら感覚は鈍麻したような気もするが、反面だらしなく生きることへの赦しは得たような気がするな。

    梶井の怒りや焦燥、鋭利な感覚は若さもあるだろうし、肉体から来る制限だとも思うので歳をとって健康な人間の目ではすでに見ているものも違うだろうな。

    兄弟や母親など家族が登場する話がなんとも言えず豊かさがある。

    巻末の宇野千代の寄稿もまた味があっていい。

  • 梶井基次郎作品集は他にもあるが、このちくま文庫版の安野光雅の表紙カバーのが一番好きだ。
    開高健のエッセイから梶井のことを知った。
    「檸檬」は、繰り返し読んでも飽きない。
    昭和一桁の年代に書かれたものだから、古風な感じは拭えないが、暗いけど明るさがある。

  •  青年の鬱々とした精神を通して見た、「美しい」世界の、「美しくない」真の姿。
    猫の交尾をガン見する、その名も『交尾』という作品のほか、猫に関する話が多かったような。

     途中からは、書きかけで終わっているものや、ところどころ欠けたものが中心になります。空白の先には、どんな世界があったのでしょう。

  • 「檸檬」
    京都を舞台に友人の家を転々としていた。なんだかフワッとしているお話であまり印象に残らなかった。

  • 書きかけの小説とか断片だけ残っているものとか戯曲とかも含めてまるごと入った全集。初稿から改稿の過程なんかも載ってて面白い。改稿ってちょいちょい修正を入れるとかじゃなくてほとんどまるきり書きなおすのかよ~~~~~とか思ってびびった
    面白いのはいくつかあったけど、やっぱり『檸檬』とか『櫻の樹の下には』が良かった気がしてしまう。まあ、すでに何度か読んだことがあるからかもしれないが。他のだと冬の蝿の話が好きでした。
    読み飛ばしたけど、また今度気が向いたら断片だけの小説とかも読んでみるかもしれない

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著者プロフィール

明治34年(1901年)大阪府生まれ。同人誌「青空」で活動するが、少年時代からの肺結核が悪化。初めての創作集『檸檬』刊行の翌年、31歳の若さで郷里大阪にて逝去した。「乙女の本棚」シリーズでは本作のほかに、『檸檬』(梶井基次郎+げみ)がある。

「2021年 『Kの昇天』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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