タクシードライバー日誌 (ちくま文庫 り 1-1)

著者 :
  • 筑摩書房
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感想 : 16
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  • Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480020901

感想・レビュー・書評

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  • タクシードライバーの悲哀

  • 8月5日は「タクシーの日」であります。日本で最初に運賃メーターを装着したタクシーが登場したのが、大正元年のこの日ださうです。案外古い話ですな。
    で、かういふ書籍を取り出してみたのですが、既に3日が経過してゐました。わたくしもやることが一一にすいので、自分でも厭になりますな。

    梁石日氏といへば、『夜を賭けて』『血と骨』といつた作品で名の知られた作家でありますが、デビュウ前にタクシー運転手を十年間も勤めたのださうです。
    事業に失敗した著者は負債を抱へ、家族を残し単身東京へ出るのですが、再起のきつかけを掴めません。あまつさへ三日間水だけの生活が続いた時に、偶然目にしたタクシー乗務員の募集広告に応募したといふことです。
    募集の問合せの電話代や履歴書を買ふお金すらなく、着てゐたオーヴァーを強引に質に入れて金を作つたといふ有様でした。中中壮絶な話であります。

    都内の中小タクシー会社の運転手になつた著者。給与体系や労働環境など、業界の内幕を教へてくれます。長時間勤務、不安定な収入、横暴かつ傍若無人な客のあしらひ、交通事故の恐怖...30年ほども前の話ですが、現在でも劇的に改善されたといふ話は聞きません。
    昨今「ブラック会社」なる存在が盛んに喧伝されますが、タクシー会社といふのは業界丸ごと問題の「ブラック業界」とも申せませう。
    ただ、一説には現役ドライバーは同業者が増えるのを嫌ふので、必要以上にタクシードライバーのマイナス点をアピールしてゐるとも。まあ会社の規模の大小や、勤務地が大都市であるか地方都市なのかで待遇や勤務形態は違ふやうですがね。

    ...ううむ。せつかくの「タクシーの日」に因んだ本でしたが、何かと後向きになつてしまふ本書は相応しくなかつたかも知れません。少なくとも本書を読んで「よし、俺も一丁タクシー乗務員に転身したる!」と叫ぶ人は少ないだらうなあ。
    タクシーは社会そのもの。矛盾だらけの現代社会のしわ寄せを受けてゐるのがこの業界なのでせうか。
    しかし読み物としてはすこぶる面白い。入手の機会があれば一読をお勧めするものであります。

    http://genjigawa.blog.fc2.com/blog-entry-189.html

  • 文字通り、梁石日が自身のタクシードライバーの経験を綴った一冊。

    30年前のタクシー業界や世相がよく分かった。

  • タクシー業務がこれほど過酷で、低賃金。長時間労働の割に、社会的評価が低いとは。

  • タクシードライバーの世界は、おそらく今はだいぶ変わっているのではないかと思うが、それでも精神世界はこうなのだろうなと思わせる。世の中や自分を諦観している視点に哀愁を感じる。

    この人の書く本の、冷ややかな感じはすごく好き。

  • タクシー運転手の実態がよくわかったが、なんとなく暗い気持ちになって読後感が良くないのが残念。運転手をしている人たちのモラルや、人柄にもあまり好感を抱けなかった。この本が書かれた時代のせいかな?

  • 映画「月はどっちに出ている」の原作者。「血と骨」「闇の子供たち」といった作者の作品は重くずっしりしているが、本作はタクシー界隈のブログ的な内容で読みやすい。

    ただし、根っこに抱えている世の中や状況、運命みたいなものへの怒りは変わらなず、怠惰でアツい、そんな作家が見える。

  • やっぱこの人の文体好きだ~。けどタクシー狂躁曲のほうがおもしろかったかな。

  • 事業に失敗し多額の借金を抱えた作者がホームレス生活からタクシードライバーとなり、東京を50万キロ走る中で生きた日々とはどんなものだったのか。
    一言でいうならほんと壮絶。

  • タクシードライバーの過酷さや危険さを書いている本で興味深かった。

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著者プロフィール

1936年生まれ。『血と骨』『夜を賭けて』など作品多数。

「2020年 『魂の痕(きずあと)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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