- Amazon.co.jp ・本 (648ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480021694
感想・レビュー・書評
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夏目漱石の遺作としても知られる長篇。世間では傑作と評価されていて、その理由もなんとなくわかったが、個人的にはどうにも評価しづらい。登場人物は全員いけ好かない(とくに小林)し、どうも会話も冗長すぎる気がするし、なによりも本作は完結していない。それでも各場面にいろいろと見るべき点はあるのだが、悲しいかなわたしはそれを的確に表現する力を持たない。また、本作を読み終えての感想よりも、本作をもって漱石の全小説を読み終えたことに対する感慨のほうが大きかった。ところで本作は未完ということで古今東西さまざまな論者がその結末を予想し、また水村美苗が勝手に構想した続篇も存在するのだが、作品の冒瀆までとは思わないにせよ、未完ゆえの価値というものもあると思うので、ちょっと無粋な試みだと思う。
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主人公が痔の手術のため1週間ほど入院して退院するのだが、それだけの期間に500頁が費やされる。主人公、妻、妹、後見人、親戚、友人等がそれぞれ組み合わせを変えつつ、神経戦ともいうべき会話を展開し、それを作者漱石が飄々とした調子で実況中継する、といった趣。とにかく面白い。活劇でもないのにどんどん読める。そして物語が盛り上がってきたところで突然、〈未完〉の文字。残念だが、漱石の語り口を楽しむだけでも充分読む価値はある。
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「明暗」収録。漱石最後の作品にして大長編。未完が惜しまれる。