超芸術トマソン (ちくま文庫)

著者 :
  • 筑摩書房
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本棚登録 : 762
レビュー : 70
  • Amazon.co.jp ・本 (495ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480021892

作品紹介・あらすじ

都市に"トマソン"という幽霊が出る!?街歩きに新しい楽しみを、表現の世界に新しい衝撃を与えた"超芸術トマソン"の全貌が、いまここに明らかにされる。多くの反響を呼んだ話題の本に、その後の「路上観察学」への発展のプロセスと、新発見の珍物件を大幅に増補した決定版。

感想・レビュー・書評

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  • もともと、元デンマークサッカー代表のヨン・ダール・トマソン選手のファンで、トマソンの情報収集をしようとウキウキ検索したところ、「超芸術」とか「シュール」という予想外の言葉が一緒に上がってきました。
    なんだろうと思って読んだのがこの本。

    まったくサッカーのトマソン選手とは関係ありません。

    ただ、もともとはゲーリー・トマソンという人の名前から付けられていました。
    助っ人選手として巨人にきたものの、大した結果を出さなかったためファンから「トマ損」と呼ばれたそう。
    さらに赤瀬川原平氏が、ムダな建築物を意味する「超芸術トマソン現象」という言葉を作り上げたとのことです。(本人がそれを知っているのかは気になるところです)

    さて、そんな世の中に不要な建築物を見つけてはその無用さを愛でるというこの本。
    おもしろい着眼点です。

    かつては必要だったのに、いつしか時代の流れに取り残されて、すっかり無意味な存在となったものは、気を付けて周りを見回せば、けっこう見つけられるものだと、この本で教えられました。

    赤瀬川原平氏が、本職の作家の仕事とは別にライフワークとして立ち上げたトマソン探索。それに賛同した多くの人々が、情報を寄せています。
    氏はそうした市井の人々の情報に感謝したり、応援したり、時には「このところ読者からの報告が少ない。たるんでおる。君たちは人の報告を見るだけの人生を送るのか!そういうものはトマソンの空振りのバットにあたって骨折するぞ。」などといって鼓舞しています。

    そうしたトマソン探索、そして読者との交流が、全編を通じてとても楽しそうに綴られています。
    石を載せたトタンの屋根の写真を「世の中は全て漬物である」と表現するあたり、やはり作家。
    無用の長物と作家のイマジネーションが重なり、この本を奥行きのあるものにしています。

    この本を読み終えると、自分でも身近なトマソンを探したくて仕方がなくなります。
    一番見つけやすいのは、行き先を失った「完璧な無用階段」でしょうか。
    日常のひそかな楽しみが増えました。

  • 街の亡霊は俺の住む街にもいるんだろーな。

  • 発見の喜びに満ちた書物

  • こういうの大好き。VOW的な。
    実家に、不自然に飛び出したところがあって、なんでこんな風になっているんだろうと思っていたものが、かつて風呂があった跡だと聞いて驚いたことがある。町を歩いているとこういうものがまだまだあると思うけど、そういうのに気づいて疑問を持って面白がれる人間でありたい。プログラムの中にトマソン的なものがあるとイライラするけどな。
    そして、トマソンの名の由来がすごい。

  • 学生時代に影響を受けた。トマソンを見つけては写真に撮って悦に入ってたのが、恥ずかしくも懐かしい。

  • ゲーリー・トマソン。1981年と1982年に読売ジャイアンツに
    在籍した元プロ野球選手である。1年目こそそれなりに活躍した
    ものの、2年目には不発。それでも四番打者に据えられ続け、
    まるで空振りを見せる為に出場し続けたような選手である。

    そのトマソン元選手にちなんで名付けられたのが、不動産に保存
    されている無用の長物「超芸術トマソン」なのである。

    いやぁ、今読むと懐かしいわ。トマソンと、そこから派生した
    路上観察学が流行ったのは80年代。ちょうど私がPR誌専門の
    編集プロダクションに務めていた頃。

    この場を借りて赤瀬川氏及びトマソン観測センターの皆様に謝罪
    したい。当時の社長が雑誌に掲載されていた数々のトマソン物件
    の写真を目にして丸パクリの企画を思い付いた。

    そのパクリに手を貸したのが私である。不本意だったのだが、
    共犯者になってしまったことに対し、深くお詫び申し上げる。
    でも、既に赤瀬川氏も鬼籍に入っちゃっているんだよな。
    遅かったか。

    さて、トマソン。登って降りるだけの純粋階段、以前は門と
    して機能してたはずなのに何かの理由で塞がれてしまった
    無用門。取っ手まで付いているのに何故か二階の壁に設置
    されている高所ドア。柵やワイヤーを飲み込みながら成長
    しているもの喰う木。

    どれも普通なら何の疑問も持たずに目にしているのだろうが、
    「もしやこれはトマソンでは?」と意識して街歩きをすると、
    続々とトマソンに遭遇してしまうのだ。

    何の気なしに見ていたらただの「ヘンなもの」なんだけどね。
    でも、一旦意識してしまうと「あれもトマソン、これもトマソン」
    になっちゃうの。カメラを持たされ、都内各所で強制的にトマソン
    探しをさせられた私が胸を張って言うのだから間違いないっ!
    (企画をパクっておいて胸を張るなって話だな)。

    本書の中での圧巻は表紙カバーの写真にもなった麻布谷町に取り
    残された銭湯の煙突。アークヒルズ誕生前、既に土地の買収が
    進んでいた時だな。すり鉢状の土地にはそれでも木造家屋が
    何軒か残り、取り壊された銭湯の煙突だけが聳え立っている。

    この煙突のてっぺんに立って撮影された写真は今見ても秀逸。
    高所恐怖症の人は要注意だが。

    しかしなぁ、「麻布谷町」だったのに「アークヒルズ」でいいの
    でしょうか。森ビルさん。

    本書に掲載されているトマソン物件も、街の再開発などで既に
    姿を消しているのだろうな。でも、再々開発が行われたらまた
    もやトマソンが現われるかもしれない。

    尚、本書ではパリや中国などの海外物件も掲載されているが、
    ロシアまでは手が回らなかったのだろうか。私が知る限り、
    ロシアは超芸術トマソンの宝庫なんだけどな。

    バルコニーはあるけどそこへ出る窓がないとか、バルコニーに出る
    窓はちゃんとあるにバルコニーの床がないとか、ドアから壁にしか
    繋がっていない非常階段とか、天井に繋がる無用階段とか。

    もしかしして、これがロシアアバンギャルドって奴かとも思うの
    だが、あの国のことだから単なる施工ミスって可能性の方が大きい
    のかもしれない。

  • 大学以来の再読。やはりこの本は素晴らしい。
    視点をずらした都市の見方をすることで現れてくる都市の有り様を見つけていく本。
    改めてこういった「都市の」狩猟採集力を見直したい。(最近は文献・資料に偏りすぎだからね)

  • 読んだ後に街を、世界を見る目が変わるそんな一冊。異なる考えで物事を見つめる大切さを教えられる。

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著者プロフィール

赤瀬川原平(あかせがわげんぺい)
1937年横浜市生まれ。本名・赤瀬川克彦。愛知県立旭丘高等学校美術科卒業、武蔵野美術学校油絵学科中退。画家・作家。60年代はネオ・ダダ、ハイ・レッド・センターに参加、前衛芸術家として活躍する。70年代は、『櫻画報』などでパロディー・漫画作品を発表。1979年作家・尾辻克彦として執筆した『肌ざわり』で中央公論新人賞、81年『父が消えた』で芥川賞受賞。86年路上観察学会創立に参加。その後ライカ同盟、日本美術応援団を結成。
主な著書に『オブジェを持った無産者』『超芸術トマソン』『カメラが欲しい』『赤瀬川原平の名画読本』『正体不明』『新解さんの謎』『老人力』『四角形の歴史』『東京随筆』など他多数。2014年10月「尾辻克彦×赤瀬川原平 文学と美術の多面体」展(町田市民文学館)「赤瀬川原平の芸術原論 1960年から現在まで」展(千葉市美術館)開催。同月26日逝去。

「2018年 『赤瀬川原平 カメライラスト原画コレクション』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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