超芸術トマソン (ちくま文庫 あ 10-1)

著者 :
  • 筑摩書房
3.88
  • (98)
  • (86)
  • (119)
  • (7)
  • (1)
本棚登録 : 1209
感想 : 88
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (495ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480021892

作品紹介・あらすじ

都市に"トマソン"という幽霊が出る!?街歩きに新しい楽しみを、表現の世界に新しい衝撃を与えた"超芸術トマソン"の全貌が、いまここに明らかにされる。多くの反響を呼んだ話題の本に、その後の「路上観察学」への発展のプロセスと、新発見の珍物件を大幅に増補した決定版。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 二階にあるが階段の存在しないドア、上って下りるだけでどこにも到達しない階段など、街中に潜む不可思議な建築物を「超芸術トマソン」と名付け、一般市民からの投書も駆使しながら、不可思議なトマソンの世界を面白おかしく描く。

    90年代に青春時代を過ごした私のような人間にとっては、トマソン≒VOW物件、に近いものを感じるわけだが、本書の魅力はトマソン自体の面白さ、というよりはトマソンを語る赤瀬川原平のユーモラスな文章力にある。トマソンの世界を論理的に分類したかと思えば、日本各地、さらにはフランスや中国などからも送られてくるトマソン発見の投書に対して適切な突っ込みを入れていく語り口はそれ自体が純粋に面白い。

    後に作家としても知られるようになる著者の高い文章力を実感し、あっという間に読めてしまう超芸術トマソンの世界。

  • 面白い。面白いんだが、途中で飽きてしまった。
    最初はめちゃくちゃワクワクするんだが…。

    この本を現代手に取る人はもう既にサブカルオタクの道を通ってきた大人か、絶賛ビレバンに通っているヘッドホンにオーバーサイズパーカーの学生ではなかろうか。

    最近そんなサブカル民に街歩きはブーム。
    右目の室外機、地域性のあるガードレール、タイル、団地、カラーコーン、電柱、看板…上げればお散歩のテーマはキリがない。
    そんなお散歩テーマのひとつがトマソン。
    使われなくなったドアや行き先のなくなった階段、埋められた窓口。

    今の様にネットを通じて流行る前にこれをまとめていたという先見の眼がすごい。
    また気が向いたときに読んでみます。

  • もともと、元デンマークサッカー代表のヨン・ダール・トマソン選手のファンで、トマソンの情報収集をしようとウキウキ検索したところ、「超芸術」とか「シュール」という予想外の言葉が一緒に上がってきました。
    なんだろうと思って読んだのがこの本。

    まったくサッカーのトマソン選手とは関係ありません。

    ただ、もともとはゲーリー・トマソンという人の名前から付けられていました。
    助っ人選手として巨人にきたものの、大した結果を出さなかったためファンから「トマ損」と呼ばれたそう。
    さらに赤瀬川原平氏が、ムダな建築物を意味する「超芸術トマソン現象」という言葉を作り上げたとのことです。(本人がそれを知っているのかは気になるところです)

    さて、そんな世の中に不要な建築物を見つけてはその無用さを愛でるというこの本。
    おもしろい着眼点です。

    かつては必要だったのに、いつしか時代の流れに取り残されて、すっかり無意味な存在となったものは、気を付けて周りを見回せば、けっこう見つけられるものだと、この本で教えられました。

    赤瀬川原平氏が、本職の作家の仕事とは別にライフワークとして立ち上げたトマソン探索。それに賛同した多くの人々が、情報を寄せています。
    氏はそうした市井の人々の情報に感謝したり、応援したり、時には「このところ読者からの報告が少ない。たるんでおる。君たちは人の報告を見るだけの人生を送るのか!そういうものはトマソンの空振りのバットにあたって骨折するぞ。」などといって鼓舞しています。

    そうしたトマソン探索、そして読者との交流が、全編を通じてとても楽しそうに綴られています。
    石を載せたトタンの屋根の写真を「世の中は全て漬物である」と表現するあたり、やはり作家。
    無用の長物と作家のイマジネーションが重なり、この本を奥行きのあるものにしています。

    この本を読み終えると、自分でも身近なトマソンを探したくて仕方がなくなります。
    一番見つけやすいのは、行き先を失った「完璧な無用階段」でしょうか。
    日常のひそかな楽しみが増えました。

  • 街の亡霊は俺の住む街にもいるんだろーな。

  • 発見の喜びに満ちた書物

  • タモリ倶楽部的な。時代が85年前後ということで投稿者の住所が載っていたりピカドンだの気違いだのNGワードオンパレードだったり不法侵入しまくっていたりとなかなかの時代錯誤。でもこのジャンルは夢ありますよね。

  • 街中に存在する、超芸術(使いようがないけれど存在感ある建築物など)を集めた本。
    壊される予定の銭湯の煙突に立って撮った写真は圧巻。

  • 超芸術トマソンとは、「不動産に付着していて美しく保存されている無用の長物」。
    「高所ドア」(特に障子式引戸)、「純粋階段」、「純粋踊り場」に興味を持った。実物を見てみたい。
    表紙にもなっているエントツ写真数枚は見応えがあって凄かった。

    1987年発行の古めの本なので、今では規制されそうな原爆や性行為に例えた表現が多数出てくるので注意。
    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
    都市に“トマソン”という幽霊が出る!?街歩きに新しい楽しみを、表現の世界に新しい衝撃を与えた“超芸術トマソン”の全貌が、いまここに明らかにされる。多くの反響を呼んだ話題の本に、その後の「路上観察学」への発展のプロセスと、新発見の珍物件を大幅に増補した決定版

  • なんだこれ珍百景がここにもあそこにも
    白黒写真だと余計に曰く付きに見えるな…

  • 大学時代の恩師にトマソンの存在を教えてもらい、それから興味を持ちトマソン収集を続けてきたが、数年の月日がたってようやく読むことができた。
    トマソンのタイプはすでに知っているものが多かったが、型にはまらない多種多様なトマソンもあり面白かった。
    トマソニアンによるトマソン報告書、それに対する著者・赤瀬川原平のレビューの掛け合いが良かった。
    500ページほどの超大作であるが、飽きない語り口のためスラスラ読み進めることができた。

    これから超芸術トマソンの発展編、路上観察学入門を読む。

全88件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

赤瀬川原平(あかせがわ・げんぺい)
1937年横浜生まれ。画家。作家。路上観察学会会員。武蔵野美術学校中退。前衛芸術家、千円札事件被告、イラストレーターなどを経て、1981年『父が消えた』(尾辻(★正字)克彦の筆名で発表)で第84回芥川賞を受賞。著書に『自分の謎(★正字)』『四角形の歴史』『新解さんの謎(★謎)』『超芸術トマソン』『ゼロ発信』『老人力』『赤瀬川原平の日本美術観察隊』『名画読本〈日本画編〉どう味わうか』。また、山下裕二氏との共著に『日本美術応援団』『日本美術観光団』『京都、オトナの修学旅行』などがある。2014年逝去。

「2022年 『ふしぎなお金』 で使われていた紹介文から引用しています。」

赤瀬川原平の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
川上 弘美
伊坂 幸太郎
赤瀬川 原平
赤瀬川 原平
ジョージ・オーウ...
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×