- Amazon.co.jp ・本 (247ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480022868
作品紹介・あらすじ
江戸人と遊ぼう!北斎も源内も京伝も、みんな江戸のワタシらだ!!江戸人に共鳴し、彼らに新たな生命を吹き込む現代絵師が、ワクワク、イキイキ、しみじみと江戸を語る。吉原、春画、戯作、粋…。中島梓、高橋克彦、岡本蛍各氏との対談も併せて収録。江戸の雰囲気に浸っているうちに、いつしか江戸人に…。
感想・レビュー・書評
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1989年発行、筑摩書房のちくま文庫。9編。江戸の情報というよりも江戸時代へのスタンスというか、現代からみた江戸時代とはどういう時代として関わるかというのが主題か。江戸時代の情報を仕入れたいと思って読むと期待外れかもしれません。
掲載作:『ありんす国だより‐吉原について』、きもの対談『不自由のすすめ』中島梓(対談)、『よっこら、すうすう、はあはあ‐春画について』、みちのく対談『江戸人のテレビ』高橋克彦(対談)、『真があって運のつき‐戯作について』、黄表紙を読む『金々先生栄花夢』、『つかず、はなれず、ユラユラと‐粋について』、こたつ対談『東京最後のおめでた人間』岡本蛍(対談)、特別付録『乙好太郎駄弁居眠胡散噺全』(おとこたろうぺちゃくちゃむにゃむにゃうさんばなし)、
あとがき:「御礼‐あとがき」、解説:『解説 杉浦日向子の「江戸アソビ」』泉麻人、他:「『江戸へようこそ』関連年号早わかり表」、詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
この本の肝は前口上にある。杉浦ひなこ先生の眼差しは、安楽椅子人類学者のよう。
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黄表紙を読む『金々先生栄華夢』が良かった。
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杉浦日向子がテレビで江戸を語っていたころからフアンだった。漫画家として一流なので、絵も楽しみだった。たくさんの本を出しているが、この本がとても好きだ。杉浦日向子は、単に「江戸」が好きというのではない。稲垣史生についてしっかり学習している。だからといって歴史として『江戸」を見ているのでもない。杉浦日向子の江戸は「江戸という名の都市に起こったさまざまな現象」を指している。、言う。「古い昔のでき事でなく、常にここにある同時代にまじっている江戸を見たいと感じています。」私も江戸切り絵図を手に町を歩いても、今を意識したいと思っている。
具体的にというか実際的にこの本で一番学習したのは、<黄表紙を読む『金々先生栄花之夢』>だった。
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江戸を題材としたマンガを描いてきた著者が、江戸時代の吉原、春画、戯作、そして「粋」について語った本です。
そのほか、中島梓、高橋克彦、岡本螢との対談や、恋川春町の黄表紙『金々先生栄花夢』を読んでみるコーナー、著者と岡本螢の合作「乙好太郎駄弁居眠胡散噺」(おとこたろうぺちゃくちゃむにゃむにゃうさんばなし)が収められています。
庶民の「晴れ晴れとした絶望感」への共感を表明する著者が、現在の東京に生きる自分の姿を「最後の東京おめでた人間」と規定しているのがなんとなく腑に落ちるように感じられました。著者は、九鬼周造の名著『「いき」の構造』では「媚態」「意気地」「あこがれ」という三つの契機によって「粋」を説明していることに触れていますが、著者のいう「最後の東京おめでた人間」という生き様にも、それと同じような気持ちの張りと艶っぽさと、しかもそれに捕らわれない自由を感じるように思います。 -
江戸へようこそ 杉浦日向子 ちくま文庫
江戸後期の一般庶民が
どれだけ平穏だったかと言うと
「宵越しの金は持たねえ」と
明日の心配をせずに粋がれたことだけでもわかるし
財布を女房が管理するカカア天下であったことでも
納得がいく
学問に遊びにあらゆる事に好奇心が強く
性のモラルも開放的で
吉原などの岡場所が公認だったことや
浮気やお隣同士でスワッピングとかも
雑居部屋でのセックスもありで
明るい環境だったらしい
男色やアナルセックスも普通の事だったらしい
戯作とか洒落とか粋などは遊び心の頂点であり
心にゆとりのある環境だからこその文化に違いない
いずれにしても何かに付け江戸はすごい
参勤交代もあり長く安定した政権でもあり
当時としては世界一の大都市だろうし
庶民の文盲もほとんど無く文化も知識も教養も高く
鉄砲や機関車見ればすぐに現物を創り出すし
憲法やら飛行機を設計していたというし
数学や測量も発展し日本列島の地図も作っていたようだ
それにしても杉浦日向子の好奇心もすごいし
江戸人に負けないその深い洞察力によって
見て来たように細部まで五感に響く語り口は
学問を越えて絶品である -
杉浦日向子さん、本当に賢い方ですね。中島梓お姉さん相手に受け止めながらきちんとコメントしていく力量は見事なもののですね。さまざまそうだったのかと膝を打つまざまな解説が散りばめられ楽しめる一作だった。
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江戸エッセイ、対談、漫画と盛りだくさんの本書。師匠の江戸に関する造形の深さを再認識。特に黄表紙は師匠の解説がなければ、真の面白味が判らず仕舞だった。古典が苦手では「江戸」は半可通なのか?! と自己嫌悪(^^;泉麻人の解説は軽過ぎ!
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江戸が好きという思いが柔らかい文体で伝わってくる。細かい知識も書かれているけど、かたさはない。
浮世絵について書いてあるとこの「有体に描きては興無きものなり」が江戸って感じ。 -
80年代的な価値観があるが
野暮、粋、気障の解説は見事。
野暮は生活・地面(生み出す、商人、政治家、主張、固執
粋は遊び・天(非生産、明るい虚無、距離感
最低なのが気障(英国紳士的な)、とりわけ半可通(自覚なし)。
野暮の究極は後白河法皇かな。