良寛 (ちくま文庫 か 9-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (281ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480023551

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  • 筑摩書房 日本詩人選
    唐木順三 「 良寛 」

    「生涯、身を立つるに懶(ものう)く」で始まり、漱石の「大愚到り難く」で終わる良寛論。良寛作品の背景として、寒山の漢詩、道元、万葉の歌の影響を上げている。

    人生の晩年で良寛に惹かれる人が多いのは、漢詩の省略美 や 仏教や万葉の中にある日本人の心性を感じるからか?


    自由に生きるためには、人との接触を避け、利益や名理利を求めず、是非善悪を判断するな、と言っているようにも読める。

    旧漢字は読みにくいが、ルビがあるので 音感は理解できる。良寛の言葉のつなぎ目の上手さは感じる


    良寛が好んで使う言葉
    *任、隨
    *騰騰
    *悠々、優游〜何もせずにぶらりと遊ぶ
    *聞く〜世俗の雑音を断ち、宇宙のリズムを聞く

    生涯、身を立つるに懶(ものう)く
    騰騰(とうとう)、天眞に任す
    嚢中、三升の米
    爐邊(ろへん)、一束の薪(たきぎ)
    誰か問わん、迷悟の跡
    何ぞ知らん、明利の塵
    夜雨、草庵の裡(うち)
    双脚、等閑(とうかん)に伸ばす


    訳)世の中に身を立てて、何かをすることは嫌で、ぼんやりとして、あるがままの天然自然の真理に、自分を任せている
    ずた袋には 托鉢で恵まれた三升の米があり、いろりには 山から集めたひとたばの薪がある。米と薪のほかに何が要るか
    迷い悟りは自分にはどうでもいい世界であり、名誉利益は関わりあったことではない
    夜の雨ふる静かな庵で、両足を気ままに伸ばしているだけ


    やまかげの岩間をつたふ苔水のかすかに我はすみわたるかも
    *天然の呼吸に自分の呼吸を同一化(実相に観入して自然と自己の一元化した生を写す)
    *苔水の=苔水に通う心


    草の庵(いほ)に足さしのべて 小山田の山田のかはづ聞くがたのしさ
    *足をさしのべて うきうきしている
    *「双脚、等閑(とうかん)に伸ばす」は 静寂の中出思慮分別が止まって脚を投げ出す感じ


    むらぎもの心楽しも春の日に 鳥のむらがり遊ぶを見れば
    むらぎもの心は和ぎぬ永き日に これの み園の林をみれば
    *むらぎも=心にかかる枕詞〜心の痛み、嘆き
    *「鳥のむらがり遊ぶを見れば」「これのみ園の林をみれば」音調、単純の中に含まれる豊かさ
    *「心、楽しも」の背後に 雪国の孤独と寂寥がある。だから鳥で群れて遊ぶさまが楽しい


    世の中に まじらぬとにはあらねど ひとり遊びぞ我はまされる
    *世の中に交じるより、ひとり遊び(詩歌を作り、読み、筆をとる)を好む
    *世の中=明利、自負、嫉妬のある社会











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著者プロフィール

1904年長野県に生まれる。1927年京都大学文学部哲学科卒業。文芸評論家。筑摩書房顧問、明治大学文学部教授を務める。1980年没。著書に『中世の文学』『無常』『無用者の系譜』『中世から近世へ』『新版現代史への試み』『日本人の心の歴史』上・下など多数。このほか全集として『唐木順三全集』全19巻がある。

「2022年 『禅と自然』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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