のんのんばあとオレ (ちくま文庫)

著者 :
  • 筑摩書房
3.74
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本棚登録 : 317
レビュー : 47
  • Amazon.co.jp ・本 (250ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480024442

作品紹介・あらすじ

授業中は居眠りばかり、休み時間には活躍しすぎて立たされたり、家へ帰れば、ガキ大将めざす攻防戦に大いそがし-。学校の成績こそひどいものだったが、彼の心は上の空。「のんのんばあ」といっしょに、お化けや妖怪などの住む目に見えない世界をさまよっていた。少年時代をたっぷり味わいつくして悔いのない、漫画家・水木しげるのおかしなおかしな少年記。

感想・レビュー・書評

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  • 水木しげるの自伝エッセイ。少年時代を中心に。

    のんのんばあ、というのは、水木家の近所に住んでたばあさんで、水木氏の故郷の境港のあたりでは、神仏に仕える女性のことをのんのんさんと呼んだそうだ。
    このおばあさんが、妖怪に詳しい。
    過去には水木家で女中働きしていたりもした関係もあってしげる少年の面倒を見てくれることも多く、しげる少年はのんのんばあからたくさん妖怪の話を聞くわけです。お風呂の掃除をしないと「あかなめ」がくるとか、夜道で誰かがついてくる気配がしたらそれは「べとべとさん」だとか。
    そういうことを教わるうちに、我々に見えている世界とは別の「もうひとつの世界」があるということをしげる少年は自然に理解し受け入れていくのです。
    (人間の謙虚さの鍵というのはこういうところにあるのかもしれないな、なんてふと思いました。)

    この、のんのんばあによって開かれた妖怪の世界との出会いが後の創作活動の源であった、ということでいわば「感謝とリスペクト」も込めてタイトルにもなっているわけだが、彼女から教わったことは妖怪のことだけでなく、「のんのんさん」と呼ばれたこの女性の、決して楽じゃない人生を近くで見てきたことで、"世の中"みたいなものを子どもながらに感じ取っていたこともうかがえる。

    その他、「ガキ大将」の地位を目指して強さと懐の深さを磨いてゆく"男の子物語"な側面もあれば、昆虫採集や新聞の題字収集や動物園作りや油絵製作などの多彩な趣味の世界をとことん追究してきた、そんなふうに"なにかに没頭すること"の尊さ、豊かさ、ありがたさを謳った教育モノ的な側面もある。

    そして、学校を卒業してからの青年時代のことが駆け足で語られる。ここのところもまた、短いながらもいろいろ衝撃的なできごとがさらっと次々描かれ、読みごたえがある。特にちらりと紹介されたラバウル出征については『ラバウル戦記』でいつか詳しく読もうと強く思った。
    で、なんにつけてもやはり少年のころに覚えた新鮮な驚き、感動、これは何物にも換えがたいものだとしみじみ思う、と。同じようなことは安野光雅も何かの本で言っていた。

    「(後から振り返って)輝かしい(と思える)幼少期」の思い出を持っていることは、当たり前のことじゃない。「不遇の幼少期を過ごした」という思いのある人は、大人になって色々な自由を得てからの人生こそ自分の人生だと感じているかもしれない。それは人それぞれだ。
    水木サンも別にそんな人生観を押し付けたり教育論を説いたりしているわけではないが、自伝を書くとなるとそういう結論めいた一文を書かざるを得ないだろう。

    ここからは、この本というより「自伝」って…という話になるが、自分の人生を一言でまとめるなんて無理だけど、いろんな作家が自伝をどう締め括っているか、これに着目して読んでいくのも面白いかもしれない。
    (そういう意味では松谷みよ子の『じょうちゃん』は、まとめきれてない、疑問形で終わっているような印象が、興味深かったなあ。。。)

  • 「河童」を見たことがある
    という人に逢ったことがある

    山道を通りかかると
    五歳児くらいの背格好で
    ニ三人くらいで
    たいがい
    峠近くで相撲をとっている
    そんな姿であるそうな

    リアルに絵まで描いて
    話してくださった
    ちなみに 彼の描く「河童」に
    頭上の皿はなく
    おなかもへそがなく
    つるりとしたものだった

    水木さんのエッセイを
    よむたびに
    さもありなんと
    思っている

  • 作者のルーツ。
    妖怪のベースここにありの人生エッセイ。
    激動が日常。

  • 楽しそうな少年時代だけど、親は心配し通しだっただろうな。

  • 漫画かなと思ったらエッセイだった。
    水木しげるさんの幼少期のことが綴られているけど、小さい頃に自作した話のあらすじなど記憶力の良さにびっくりする。
    発達も遅いし、勉強もできないけれど、健康で友達と元気に暴れている様子がなんだか良い。虫などを収集したり、絵を描いたり、なんだかとても楽しそうだ。今の子供の生活と比較して、豊かさとは、と思う。
    のんのんばあは子守や雑用で来ていた女性のようで、あまり裕福でないのだろう、と綴られている。
    幼い水木さんは、側にいてよく話を聞いてくれる大人がいて少し羨ましいなと思った。

  • 解説:井村君江

  • 2018.09.12

  • 懐かしく静かな気持ちになる。
    とても人間らしさがあるからだと思う。
    驚きの感情とともに、自由に、学びのある少年時代を過ごした水木サンには、のんのんばあがいた。このルーツは、後の水木サンに大きな影響を与えた。

    やっぱり、子どもの頃は、途方にくれるほど、ただの人間活動をすることに徹して間違いないと思う。習い事も勉強も、後で良い。

    恐ろしいほど無駄な時間と不便と自然に囲まれ、かけがえがのない時間を過ごした。
    隔たれた片田舎での孤独感は容赦なく、寂しくなかったと言えば嘘になる時間でもある訳やけど、子どもの頃に、その閉塞された場所で養われた考えた方や物の見方や体やココロは、かけがえの無い実体験とともに根っこの所で息づいており、確実に今の私を支えてるんやなぁって、この本を通して再確認出来た。この再確認が出来て読んで良かった。

  • 天才。おもしろすぎる文体。声を出して笑う箇所がいくつかあった。

  • 水木しげるのいきいきした少年時代をつづった本。
    学校の成績はよくないが、趣味で忙しいというくらい豊な子ども時代を送っていたようだ。
    そのなかでも、妖怪の世界へ導いてくれたのんのんばあとの話は、どれもとてもよい。

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著者プロフィール

水木しげる(みずき しげる)
1922年3月8日 - 2015年11月30日
大阪で生まれ、鳥取県境港市で育つ。従軍経験で左腕を失いながらも生還。終戦後より紙芝居、貸本漫画などを執筆。1964年に『ガロ』にて商業誌デビュー。2007年、『のんのんばあとオレ』によりフランス・アングレーム国際漫画祭で日本人初の最優秀作品賞を受賞。2010年、文化功労者に選出される。代表作に『ゲゲゲの鬼太郎』『河童の三平』『悪魔くん』『劇画ヒットラー』『総員玉砕せよ!』『のんのんばあとオレ』『日本妖怪大全』など。

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