ナボコフの一ダース (ちくま文庫 な 10-1)

  • 筑摩書房
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本棚登録 : 78
感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480025197

作品紹介・あらすじ

同姓同名の男にまちがわれ、借りたこともない本の返済を迫られたり、見知らぬ人々のパーティに招待されたりと、ポーの「ウィリアム・ウィルスン」を彷彿とさせる作品「一族団欒の図、1945年」や、家族から見世物にされる怪物双生児の話など、本書は"文体の魔術師"ナボコフが、SF、ポルノ小説、童話、探偵小説などの体裁をとりながら、彼独自の世界を見事に結実させた短編集である。

感想・レビュー・書評

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  • 苦労して苦労して、そして報われない話が多い。亡命作家の短篇集ということなのだろうか、祖国を出ていかざるを得なかったこととか、大切な場に立ち戻れない記憶を持ったまま生きることとか、そういう取り返しのつかない苦しさが表れているよう。長編では背景として挿入される程度に感じていた著者の亡命ロシア人としての感情が、どこを切ってもじわじわ滲み出てくるような本だった。

    ただこの本は読んだ情報から像を結ぶのが難しい話が多くて(うん、それから?というところで終わる)、個人的な読みづらさが本全体の印象になったかもしれない。比較的自分の中で起承転結が見えたのは以下のとおり。「夢に生きる人」「城、雲、湖」「「いつかアレッポで……」」「マドモアゼルO」

    「マドモアゼルO」はガルシア=マルケスの短編を思い出した。住み込みの家庭教師はどうしていつも頓珍漢な哀しい存在なんだろう。

  • 「フィアルタの春」★★★
    「忘れられた詩人」★★★
    「初恋」★★★
    「合図と象徴」★★
    「アシスタント・プロデューサー」★★★
    「夢に生きる人」
    「城、雲、湖」
    「一族団欒の図、一九四五年」
    「いつかアレッポで……」
    「時間と引き潮」
    「ある怪物双生児の生涯の数場面」
    「マドモアゼルO」
    「ランス」

  • 亡命後各国を転々としながら書かれたロリータ以前の短編13作。そういえばナボコフって長編しか読んだことなかったかも。どれもテイストが違って面白かった。

    「初恋」と「マドモアゼルO」は解説によるとナボコフ自身の実体験らしい。タイトル通りの幼いころの初恋と、家庭教師だった女性の思い出の話。たしかにどちらもノスタルジックでオチが優しい。

    シャム双生児の「ある怪物双生児の生涯の数場面」は個人的に好きなモチーフなので一番気に入ったのだけど、作品として面白いかどうかはわからない(苦笑)

    恋人というわけではないけれど人生のいくつかの場面でなぜか何度も邂逅する女性が現れる「フィアルタの春」と、謎めいた妻の言動に振り回されて時空間まで歪んでくるような「いつかアレッポで……」は、ナボコフの女性観のようなものが出ていた気がする。

    若くして死んだはずの詩人を名乗る老人が現れる「忘れられた詩人」、懸賞で当たった旅行に参加しただけなのに何故か酷いめにあわされる主人公がひたすら気の毒な「城、雲、湖」、一種のドッペルゲンガー?同姓同名の人間と間違われて振り回される「一族団欒の図、一九四五年」など、不条理シュール系は安定の面白さ。「合図と象徴」は狂気の正体がわからず不気味。

    「ランス」は主人公が適当に書いてるSF小説のようなものが支離滅裂だけどチープで変に印象に残った。

    ※収録作品
    フィアルタの春/忘れられた詩人/初恋/合図と象徴/アシスタント・プロデューサー/夢に生きる人/城、雲、湖/一族団欒の図、一九四五年/「いつかアレッポで……」/時間と引き潮/ある怪物双生児の生涯の数場面/マドモアゼルO/ランス

  • つかみ所のない話が多かった。文体は感傷的で皮肉っぽくて子供のお伽話みたいだった。「雲、城、湖」の代理人は人類をやめられていいなあと思う。抽象画の油絵みたいな、よくわからないけど気持ちのいい短篇集だった。

  • 翻訳がいいのか原文がいいのか、あまりに読み易す過ぎて、つるんと読んでしまった。。。

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