- Amazon.co.jp ・本 (176ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480025463
感想・レビュー・書評
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子どもの頃に飲まされた牛乳、ロボットを作って遊んだ森永のキャラメルの箱、戦中の日の丸弁当、母親になってから成人した娘といっしょにデパートで食べたまずいオムレツ。死んだ夫の墓参り、死ぬ前の夫と食べたビワ。
ひとりの女性の、それぞれの年代の食べものと思い出が何か語りたそうに並べられている。多感期がまるまる戦争だった1925年生まれの著者。そのことばは、やわらかく、すなおで、読みやすく、トゲがある。女性におすすめ、短編エッセイ集。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
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なんとも印象深い随筆。うっとりと読んでしまった。
「ひょっとしたらあのとき、枇杷を食べていたのだけれど、あの人の指と手も食べてしまったのかな」
「天井裏の奥のほうまでうねうねと、どこまでも広がった緋毛氈の上に、どこかだか、その辺りだけ照らす光が射していて、お内裏さまや官女や仕丁や五人囃子や高砂のじじばばが、うっすら開けた受け唇を濃く赤く光らせたまま、気絶したようになって、あっちを向いたり、こっちを向いたり、ひっくり返ったりしているのが見えた。」
「大殿から沸き流れてくる歌のようなものは、高音部にかかると、ヒィッと調子の外れた金切り声が混ざる。ー『実にうまく作曲してあるねぇ。おばさんたちって、どんなふうな歌を歌っても、こうなっちゃうところがある。その、こうなっちゃう音階や節回しばかり使って作曲してある』」 -
どこにでもある
そこらへんにある
出来事を
武田百合子さんが
つまみあげたとたんに
いっとう特別な
なんだか唯一無二の
珍しいものになって
その時代を写し取るお話に
なっていく
不思議な
静謐感がここちよい
なぜか
バスターキートンさんの無声映画を
観た後のような余韻が残る -
読者評価が高かったので期待して読んだものの、そこまでキラリとするようなものが見当たらなかった。一歩踏み込んで深く書く事をせず、思いのままサラサラと書いているような読みやすい文体だと思った。
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読んでいるだけで心があたたかくなるような本。
いい時代だなぁ。
いつの時代も食べ物の話しが好き。 -
ゆっくり、じっくり読んでいる。読み終わるのが惜しい。「富士日記」読み終える前の「もう楽しみが無くなってしまうのか…」を思い出す。野見山暁治さんや高峰秀子さんのエッセーもそんなだが、日常生活に対する純粋無垢の感覚と言語表現に驚く。「上手」と思わせるようなら未だ未だと教えてくれるす凄さだ。 ※読書カテゴリーに、野見山さんと高峰さんの記事有ります。
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『琵琶』『牛乳』『キャラメル』『お弁当』と続き、題名も「~の食卓」だから、食べ物エッセーと思って読み始める。池波正太郎さんのエッセーみたいなのかと思ったら違った。食物が題名だが料理なんか出てこない。普通の食い物なわけで、子供はこんなふうに味を感じていて、それを武田さんはこんな言葉で表すのかと感嘆する。こういうのは夢に近い。幸せな夢見ている時はたいていこんな感じだ。飛ぶ夢の時も、秘密の入り口見つけた時も。立男はこんな感覚のエッセ-が好きだ。内田百けんさんのエッセーが好きなのもそのせいだ。エッセーの醍醐味はここらにあると立男は断言する。
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昨日『お弁当』まで読み、今日から『雛祭りの頃』。もう90頁(全143頁)しか残ってない。「富士日記」は人に読ませる予定もなく、ちゃちな分別を蹴飛ばす日記だが、このエッセーはそれを濃縮している。時間をかけて煮詰めるとこんな絶妙な味わいがうまれるのだ。その分、読み終わるのが前よりも惜しくて堪らない。「この夢、覚めませんように」と思って夢を楽しむことがある。読書途中の今、そんな感じ。 -
2015/08/03 再読。
最後の夢の話を読んでいるときにうつらうつらとほんとに眠くなってしまって一眠りしてしまった《文が退屈なのでなくすーっと眠くなったのです......枇杷の話。泰淳のことをほんとに愛してらっしゃったんだなぁ
お弁当の話、まずいオムレツの話、牛乳、キャラメル、幼い頃の話もとても興味深いです。
装丁、挿絵もとても百合子さんらしいようで素敵。 -
なんだか鈴木清順の映画を思い起こす。
舌に残る記憶って、絶大なんだ、な。 -
たべものとそれに纏わる記憶。
読み終わったあと私も自分のなかの記憶を辿ってみました。