三島由紀夫レター教室 (ちくま文庫)

著者 :
  • 筑摩書房
3.79
  • (269)
  • (335)
  • (415)
  • (27)
  • (6)
本棚登録 : 2529
レビュー : 373
  • Amazon.co.jp ・本 (227ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480025777

作品紹介・あらすじ

職業も年齢も異なる5人の登場人物が繰りひろげるさまざまな出来事をすべて手紙形式で表現した異色小説。恋したりフラレたり、金を借りたり断わられたり、あざけり合ったり、憎み合ったりと、もつれた糸がこんがらかって…。山本容子のオシヤレな挿画を添えて、手紙を書くのが苦手なあなたに贈る枠な文例集。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 5人の男女のあいだでやり取りされた手紙で進む本書、とにかく書き手の人間性が丸見えでおもしろい!
    なんせ5人が5人とも曲者ぞろい。
    筆まめな彼らのペンが生み出す文章と、移ろう人間関係に、にんまり笑いが止まりませんでした。

    手紙は「キチンと封をされた紙の密室」。
    ラブレターに脅迫状、借金の申込みに肉体関係を求める手紙まで、こんなことも書いちゃうのか、と驚くような内容の手紙が飛び交います。
    他人同士の手紙だから笑って読んでいられるけれど、当事者にはなりたくないな~とも思ったり。
    でもここまで自分の感情や思惑を文字で表現できる文章力には憧れます。

    最後に添えられた作者から読者への手紙も奮っています。
    三島が女性からのファンレターをばっさり切って捨てる痛快さがたまりません。
    けらけら笑いたいとき、ブラックユーモアににんまりしたいときに読み返したい1冊です。

  • 性別も年齢も職業も異なる、筆まめな5人がおくる書簡体小説。

    デートのお誘い、金銭の依頼、恋愛相談、お見舞い状、果ては悪口や裏切り絶縁まで悲喜交々、様々なやりとりが手紙上で行われます。連作小説のように、読み進めていけばいくほどそれぞれの気持ちや思惑が複雑に絡み合い、「まったく人間ってやつは…」と妙な悟りと愛着を感じます。氷ママ子女史と山トビ夫氏のやりとりには終始にやにやとさせられました。トビ夫氏の株が後半に向けて急上昇したのは私だけではないはず。
    一回のやりとりに時間を掛け、内容も熟考でき(時として殴り書く場面もあるようですが笑)、相手の顔を思い浮かべながら一文字一文字を綴る手紙、そして文面からこうも隠しきれない個性が光ってしまう手紙というツールに改めて魅力を感じます。
    三島由紀夫の魅力再発見!ユーモアに富んだ愉快な作品でした。

  • 久しぶりに本を読んだからリハビリ感覚で読めた。あの三島の軽妙な一冊。よい!

  • こんな面白い、辛辣で瀟洒な本がまたとあるでしょうか。
    最高に面白かったです。

    言わねばならないことを述べるには率直であること。

    相手をこてんぱんにしているようでも 
    どこか読み手の心には一筋の退路を確保する
    温かさを持つこと

    言いたいことはいうけれど、自分でコントロール出来ないほど
    自分自身の気持ちに夢中になって乱れないという姿勢。

    なりふり構いながらも、今、まさに動いている
    心を見せるという、相反した付き合いの極意。

    行き過ぎないたしなみの良さ。

    世の中自分の思い通りには運ばないものだという
    冷静な了解がある上で、ほんの少し覗く書き手の真情。

    それがある手紙は、きっと素敵です。

    それと、人間って、「可愛げ」がないとダメだなって
    ほとほと思いました。媚じゃなくって「可愛げ」。

    多分文章のほうがそういうものが伝わりやすいのかも
    しれませんね。

    三島の作品は、恥ずかしいことながら初読でしたけれど
    あっという間に読みました。

    この本は美文麗文を書くには向きません。
    でも上に挙げたような大事なことを身につけて
    手紙をしたためるには、最高の本です。

    これと、アンブローズ ビアスの「悪魔の辞典」と
    ラクロの「危険な関係」をセットにして読みたいですね。

    その時点で私のひねくれかげんがわかってしまうと
    いうものですけれど。

    小説の方はなんとなく難解なのかなって思い込んで
    いましたから、彼の随筆を片っ端から読んでみましょう。

    三島由紀夫という人に惚れたら、その時初めて小説を
    読み始めてもいい気がしてきました。

    中毒になりそうな、予感がします。
    知的で、アイロニカルで、でも優しい―。

    ひと夏、その背中を追いかけてみようと
    決心しました。

  • 現代は手紙の時代ではないので、ちょっと古臭い感じは否めない。
    でも、そこそこ面白く読みました。
    登場人物が5人というのも、いいですね。
    お名前がそれぞれ個性的。笑えました。

  • れっきとした小説。

    男女5人の手紙のやりとりだけでストーリーが展開していくという変わった小説だが、構成がマジで巧み!!!!!!!

    登場人物の名前も「炎タケル」「氷ママ子」などとかなりユニークだし、各章のタイトルも「借金の申し込み」「処女でないことを打ち明ける手紙」など、最初パラパラと本を捲っただけでは、なんじゃこりゃと言いたくなる本だ。

    が、少ない情報量や話しかけるような手紙の何気ない一文によって、登場人物たちの性格や人生、ストーリーの上での感情の動きなどを明らかにしていく作者のセンスが光る。

    皮肉とユーモアたっぷりの独特な世界観の中で、どこかコミカルなテンポで進んで行く文章の中にも、人生の悲哀のようなものが感じられる。

    あまり力を入れずに読むことができる。三島由紀夫は苦手という人にもおすすめ。

    最後のほうはストーリーの流れに読み込まれてしまって、私は三重県鈴鹿市のローカル線で乗り過ごしてしまいました。

  • 「三島由紀夫レター教室」読了。アンタらは魑魅魍魎か?と疑いたくなる複雑怪奇且つ簡単明瞭な、ひたすら自分は正しくてステキと信じている人達が「手紙」を主軸に闊歩しまくり、なんかイイ感じに鞘に収まる。終盤・トラ一君の「どうぞどうぞ〜」がステキ。一気に読める。てか、読むなら一気にいけ!

  • 大学生の時に読んで三島由紀夫のイメージが一変した。
    かなり風変りな手紙のお手本集。
    再読して、やっぱり面白い!と膝を何度叩いたことか。

    そして忘れかけていたことを思い出したのだった。
    こういうユーモア溢れる手紙を書きたいとずーっと思っていたこと。

    納得したのだった。
    最近自分が書く手紙に対する違和感の訳を。

    言葉の表現がいちいち面白くてその度に心が踊る。

    例えば・・・

    「あいかわらずおヒマですか?あいかわらずご多忙ですかと聞くのはあまりに月並みですから」

    とか

    「甘言で釣ろうなどというところもなく、私に結婚を申込みながら、結婚したらどうしてやる、という保証はなにもなく、ぜんぜん自分勝手で、あなたらしくて、ステキでした」

    とか

    「あなたみたいな底抜けの人は、もうここらあたりでバカがどんづまりかと思うと、またその下があるので、おどろくほかはありません。本当にすばらしいわね、あなたって!」

    とか

    「あなたはウソで固めた女性だからこそ魅力があったのに、私と同じくらい真正直な人間だとわかったら、ちょっと魅力半減ですね」

    とか・・・。
    愛のある悪口はこう表現すれば粋に聞こえるのかと勉強になり、そうだ、悪口用の語彙を増やすのは楽しいかもしれないなと思ったり。

    そして最後に書かれていた手紙を書くにあたって一番大切なこと。大真面目に胸を付かれて、参りましたと唸った。
    手紙の神髄。それなのにすっかり忘れかけていた。
    人は読むべきときに読むべきものを読むんだなぁ。

    ・有名人へのファンレターの書き方
    ・借金の申し込みの書き方
    ・愛を裏切った男への脅迫状の書き方
    ・陰謀を打ち明ける手紙の書き方
    ・妊娠を知らせる手紙の書き方

    これはこの「レター教室」で書かれていることのほんの一部だけれど、こんなサブタイトルで手紙の書き方のワークショップをやったら受講生さんは集まるだろうか?
    でも、これを教えるには人生経験も重要だ。

    なぜかこの本を読むと心豊かに、そしてユーモアたっぷりに生きたいと切実に思うのだ。

  • じかに会っては話せないことも、手紙では話せるということがある
    顔を合わせないぶん、大胆な告白がすんなりできるし
    嘘をつくのに顔色をとりつくろう必要もない
    たいへん便利なものだ、しかしそれゆえに人は
    独りよがりな手紙というものも、書いてしまいがちなんだ
    では、簡潔でなおかつ人の胸をうつ手紙文とはいかなるものなのか
    それを三島由紀夫が教えましょう、という体裁の…
    まあ書簡小説ですね
    ハウツーというのではないな
    大まかな筋書きは「潮騒」の改変だが
    若い恋人たちを邪魔する中年の描写に、かなり熱がこもっている
    そして、島の神様に相当する役割は
    テレビ中毒の青年が担っている
    やさしい理想の世界はテレビのなかにしか存在しない
    そんな絶望が、60年代の若者にとってもリアルだったわけだ
    とはいえ、終盤に変節する中年男の描写を読む限り
    三島もやはり愛とヒューマニズムの夢は捨てきれなかったのだろう
    通俗ものだから、と言えばそれまでだけど…

  • 五人の物語。
    氷ママ子の、嫉妬のあまり相手の恋愛の邪魔をしてしまうというような気持ちがとても理解できる気がする。
    五人の手紙を読み進めながら話は発展していくが、手紙ならではのその人の心情だとか本音だとか(もちろん手紙でも嘘をつくことはできるが)が上手く表現されており、改めて手紙って素敵だなと思えた。

全373件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

三島由紀夫(1925.1.14~1970.11.25) 小説家、劇作家。
東京生まれ。学習院時代から文才を注目され、1944年、東大入学と同時に『花ざかりの森』を刊行。47年、東大卒業後、大蔵省に勤務するも、翌年辞職。49年、『仮面の告白』で新進作家として地位を確立。『金閣寺』『鏡子の家』『近代能楽集』など、強固な美意識で彫たくされた作品を発表。海外での評価も高い。68年、楯の会結成。『豊饒の海』の最終回を書き上げ、陸上自衛隊市ヶ谷駐屯地東部方面総監室に立てこもり、割腹自決。

「2017年 『告白 三島由紀夫未公開インタビュー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

三島由紀夫の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

三島由紀夫レター教室 (ちくま文庫)に関連する談話室の質問

三島由紀夫レター教室 (ちくま文庫)を本棚に登録しているひと

ツイートする