三島由紀夫レター教室 (ちくま文庫)

著者 :
  • 筑摩書房
3.80
  • (277)
  • (347)
  • (421)
  • (28)
  • (7)
本棚登録 : 2688
レビュー : 386
  • Amazon.co.jp ・本 (227ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480025777

作品紹介・あらすじ

職業も年齢も異なる5人の登場人物が繰りひろげるさまざまな出来事をすべて手紙形式で表現した異色小説。恋したりフラレたり、金を借りたり断わられたり、あざけり合ったり、憎み合ったりと、もつれた糸がこんがらかって…。山本容子のオシヤレな挿画を添えて、手紙を書くのが苦手なあなたに贈る枠な文例集。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 三島由起夫、いや由紀夫が(笑)、手紙形式というちょっと変わった着想にて、手紙ならではの人間の機微な感情の行き来について物語しています。
    登場人物は、金持ちマダム、色男の中年デザイナー、若き劇団青年、OL、太ったぐうたら青年という感じでこれだけでも、これからのわくわくするような話の展開が期待されます。
    手紙でやり取りする話の内容が割と軽いので手軽に面白く読めてしまいますが、そこは三島由紀夫なりのそれぞれの心理描写が楽しくて、なかなかじっくりと読ませてくれましたね。
    特に金持ちマダムと色男の中年デザイナー、太ったぐうたら青年のキャラが際立っていて、終始にやにやしながら読了しました。
    群ようこの解説にもある通り、それぞれの年代に即した感情移入ができるようにもなっていると思われ、十年二十年後に読み直すと、また違った見方で本書に接することができるほど、軽いなりに味わい深い物語になっていると思います。
    これは手紙ならではの、何回も読み直すという特質を上手く使った筆致になっているからなんでしょうね。
    あと、最後の三島由紀夫からの読者への言葉もなかなか面白いものでした。
    名前を間違えるなというのは当然として、手紙を書く時は相手は自分に関心を持っていないと思って書け、というのは目から鱗が落ちないまでもなるほどそうかなと思わせるものがありました。
    現代では手紙を書く機会が減り、電子メールでやり取りする機会の方が断トツで多くなっていますが、電子メールでも同じことが言えますよね。
    電子メールでは味わいを感じることは少ないですが、私も相手の関心を引くような書き方を心がけたいと思います。
    三島由紀夫によれば、相手の関心を得るには、一、大金 二、名誉 三、性欲 四、感情 だそうですが。(笑)

    • やまさん
      mkt99さん、こんにちは。
      いいね!有難う御座います。
      mkt99さん、こんにちは。
      いいね!有難う御座います。
      2019/11/03
    • mkt99さん
      やまさん、こんにちは。
      こちらこそ、いいね!をありがとうございます。
      今後ともよろしくお願いいたします。
      やまさん、こんにちは。
      こちらこそ、いいね!をありがとうございます。
      今後ともよろしくお願いいたします。
      2019/11/09
  • 5人の男女のあいだでやり取りされた手紙で進む本書、とにかく書き手の人間性が丸見えでおもしろい!
    なんせ5人が5人とも曲者ぞろい。
    筆まめな彼らのペンが生み出す文章と、移ろう人間関係に、にんまり笑いが止まりませんでした。

    手紙は「キチンと封をされた紙の密室」。
    ラブレターに脅迫状、借金の申込みに肉体関係を求める手紙まで、こんなことも書いちゃうのか、と驚くような内容の手紙が飛び交います。
    他人同士の手紙だから笑って読んでいられるけれど、当事者にはなりたくないな~とも思ったり。
    でもここまで自分の感情や思惑を文字で表現できる文章力には憧れます。

    最後に添えられた作者から読者への手紙も奮っています。
    三島が女性からのファンレターをばっさり切って捨てる痛快さがたまりません。
    けらけら笑いたいとき、ブラックユーモアににんまりしたいときに読み返したい1冊です。

  • ▼手紙を書くときには、相手はまったくこちらに関心がない、という前提で書きはじめなければいけません。これがいちばん大切なところです。
     世の中を知る、ということは、他人は決して他人に深い関心を持ちえない、もし持ち得るとすれば自分の利害にからんだ時だけだ、というニガいニガい哲学を、腹の底からよく知ることです。
     世の中の人間は、みんな自分勝手の目的へ向かって邁進しており、他人に関心を持つのはよほど例外的だ、とわかったときに、はじめてあなたの書く手紙にはいきいきとした力がそなわり、人の心をゆすぶる手紙が書けるようになるのです。(本文から)
    ▼「三島由紀夫のレター教室」三島由紀夫。ちくま文庫、221頁。サクッと読めます。2020年2月読了。初出1966年。ウディ・アレンの良くできた恋愛コメディを観た気分。軽いだけに見えて、人生と恋愛への皮肉と諧謔に満ち。ヒトの愚かさに肩をすくめる感じと、そんな愚かさが愛おしい感じ。
    ▼「女性自身」に連載した小説。編集者もちゃんと役割を果たしたのか、三島さんの小説の中でもおそらくかなり柔らかく、読み易い。で、十分に面白かった。うまいなー。職人というか娯楽に徹しているのか、かなり、マトモです。ヘンタイな感じが薄かった。普通のも、書けるんやんか。
    ▼5人の、手紙のやり取りが、小説になっています。
    ①40代の未亡人、英会話塾経営者
    ②40代の衣服デザイナー、既婚だが、①のボーイフレンド
    ③20代の会社員女子(①の元生徒)
    ④20代の演劇青年(②の知人)
    ⑤30代の暢気なTvばかり見てる男(③の従兄弟)
    最後には、ここから二組のカップルが出来上がります。かなり笑えます。あははと笑ってると、まさにエスプリの効いた名台詞にうなります。
    ▼実は現代性が高い。さすが、ちくま文庫。
    メールやSNSが手紙の一種だとすれば、有史以来日本人が(世界中も)これほど手紙を書いている時代はありません。テレビ漬けな男は、ネットやゲームの中毒にも似ています。会ったり電話するよりも手紙を選ぶコミュニケーションは、生ではない活字依存と考えれば、今風ですね。
    ▼しかし、三島、キレ者だなあ、と、改めて。まだまだ読んでない本がいっぱい。楽しみです。
    ▼そして、この本には「男が好きな男」が、出てきません。同性愛が出てこない。三島なのに。
    ▼同性愛者である男性は、女性に冷徹かつシビアかつ洞察的で無駄な優しさの無い助言をできるという、「ベスト・フレンズ・ウェディング」などでパターンがされた【イイ男、ゲイ、女の友達】というのが、なんとなく当てはまる気が(三島さんが)。

    /////////以下全て本文より///////

    ▼だれでも、自分と全く同じ種類の人間を愛することはできませんものね。

    ▼*英語の手紙について
    1.手紙はなるべくなら、I(アイ)ではじまらぬようにすることです。
    2.物喜びをなさい。
    3.日常の些事をユーモアを混ぜて入れなさい。
    4.文法や構文に凝るよりも、形容詞に凝りなさい。
    5.ときどきちょっと文法や綴(スペリング)をまちがえなさい。
    6.英語の手紙ということを忘れて書きなさい。
    返事はなるたけすぐ出すように。私は世界中で、日本人ほど筆不精な国民はないのではないかと思います。

    ▼大ていの女は、年をとり、魅力を失えば失うほど、相手への思いやりや賛美を忘れ、しゃにむに自分を売りこもうとして失敗するのです。

    ▼恋愛というものは『若さ』と『バカさ』をあわせもった年齢の特技で、『若さ』も『バカさ』も失った時に、恋愛の資格を失うのかもしれません

    ▼なぜ断られるか?それは彼女にやさしさと自信との平和な結合がないからです。女の真の魅力は、その二つのものの平和で自然な結合以外にはないのですからね。彼女の心のアンバランスを、男性は一目で見抜いてしまうのです。

  • 性別も年齢も職業も異なる、筆まめな5人がおくる書簡体小説。

    デートのお誘い、金銭の依頼、恋愛相談、お見舞い状、果ては悪口や裏切り絶縁まで悲喜交々、様々なやりとりが手紙上で行われます。連作小説のように、読み進めていけばいくほどそれぞれの気持ちや思惑が複雑に絡み合い、「まったく人間ってやつは…」と妙な悟りと愛着を感じます。氷ママ子女史と山トビ夫氏のやりとりには終始にやにやとさせられました。トビ夫氏の株が後半に向けて急上昇したのは私だけではないはず。
    一回のやりとりに時間を掛け、内容も熟考でき(時として殴り書く場面もあるようですが笑)、相手の顔を思い浮かべながら一文字一文字を綴る手紙、そして文面からこうも隠しきれない個性が光ってしまう手紙というツールに改めて魅力を感じます。
    三島由紀夫の魅力再発見!ユーモアに富んだ愉快な作品でした。

  • 久しぶりに本を読んだからリハビリ感覚で読めた。あの三島の軽妙な一冊。よい!

  • こんな面白い、辛辣で瀟洒な本がまたとあるでしょうか。
    最高に面白かったです。

    言わねばならないことを述べるには率直であること。

    相手をこてんぱんにしているようでも 
    どこか読み手の心には一筋の退路を確保する
    温かさを持つこと

    言いたいことはいうけれど、自分でコントロール出来ないほど
    自分自身の気持ちに夢中になって乱れないという姿勢。

    なりふり構いながらも、今、まさに動いている
    心を見せるという、相反した付き合いの極意。

    行き過ぎないたしなみの良さ。

    世の中自分の思い通りには運ばないものだという
    冷静な了解がある上で、ほんの少し覗く書き手の真情。

    それがある手紙は、きっと素敵です。

    それと、人間って、「可愛げ」がないとダメだなって
    ほとほと思いました。媚じゃなくって「可愛げ」。

    多分文章のほうがそういうものが伝わりやすいのかも
    しれませんね。

    三島の作品は、恥ずかしいことながら初読でしたけれど
    あっという間に読みました。

    この本は美文麗文を書くには向きません。
    でも上に挙げたような大事なことを身につけて
    手紙をしたためるには、最高の本です。

    これと、アンブローズ ビアスの「悪魔の辞典」と
    ラクロの「危険な関係」をセットにして読みたいですね。

    その時点で私のひねくれかげんがわかってしまうと
    いうものですけれど。

    小説の方はなんとなく難解なのかなって思い込んで
    いましたから、彼の随筆を片っ端から読んでみましょう。

    三島由紀夫という人に惚れたら、その時初めて小説を
    読み始めてもいい気がしてきました。

    中毒になりそうな、予感がします。
    知的で、アイロニカルで、でも優しい―。

    ひと夏、その背中を追いかけてみようと
    決心しました。

  • れっきとした小説。

    男女5人の手紙のやりとりだけでストーリーが展開していくという変わった小説だが、構成がマジで巧み!!!!!!!

    登場人物の名前も「炎タケル」「氷ママ子」などとかなりユニークだし、各章のタイトルも「借金の申し込み」「処女でないことを打ち明ける手紙」など、最初パラパラと本を捲っただけでは、なんじゃこりゃと言いたくなる本だ。

    が、少ない情報量や話しかけるような手紙の何気ない一文によって、登場人物たちの性格や人生、ストーリーの上での感情の動きなどを明らかにしていく作者のセンスが光る。

    皮肉とユーモアたっぷりの独特な世界観の中で、どこかコミカルなテンポで進んで行く文章の中にも、人生の悲哀のようなものが感じられる。

    あまり力を入れずに読むことができる。三島由紀夫は苦手という人にもおすすめ。

    最後のほうはストーリーの流れに読み込まれてしまって、私は三重県鈴鹿市のローカル線で乗り過ごしてしまいました。

  • 大学生の時に読んで三島由紀夫のイメージが一変した。
    かなり風変りな手紙のお手本集。
    再読して、やっぱり面白い!と膝を何度叩いたことか。

    そして忘れかけていたことを思い出したのだった。
    こういうユーモア溢れる手紙を書きたいとずーっと思っていたこと。

    納得したのだった。
    最近自分が書く手紙に対する違和感の訳を。

    言葉の表現がいちいち面白くてその度に心が踊る。

    例えば・・・

    「あいかわらずおヒマですか?あいかわらずご多忙ですかと聞くのはあまりに月並みですから」

    とか

    「甘言で釣ろうなどというところもなく、私に結婚を申込みながら、結婚したらどうしてやる、という保証はなにもなく、ぜんぜん自分勝手で、あなたらしくて、ステキでした」

    とか

    「あなたみたいな底抜けの人は、もうここらあたりでバカがどんづまりかと思うと、またその下があるので、おどろくほかはありません。本当にすばらしいわね、あなたって!」

    とか

    「あなたはウソで固めた女性だからこそ魅力があったのに、私と同じくらい真正直な人間だとわかったら、ちょっと魅力半減ですね」

    とか・・・。
    愛のある悪口はこう表現すれば粋に聞こえるのかと勉強になり、そうだ、悪口用の語彙を増やすのは楽しいかもしれないなと思ったり。

    そして最後に書かれていた手紙を書くにあたって一番大切なこと。大真面目に胸を付かれて、参りましたと唸った。
    手紙の神髄。それなのにすっかり忘れかけていた。
    人は読むべきときに読むべきものを読むんだなぁ。

    ・有名人へのファンレターの書き方
    ・借金の申し込みの書き方
    ・愛を裏切った男への脅迫状の書き方
    ・陰謀を打ち明ける手紙の書き方
    ・妊娠を知らせる手紙の書き方

    これはこの「レター教室」で書かれていることのほんの一部だけれど、こんなサブタイトルで手紙の書き方のワークショップをやったら受講生さんは集まるだろうか?
    でも、これを教えるには人生経験も重要だ。

    なぜかこの本を読むと心豊かに、そしてユーモアたっぷりに生きたいと切実に思うのだ。

  • 現代は手紙の時代ではないので、ちょっと古臭い感じは否めない。
    でも、そこそこ面白く読みました。
    登場人物が5人というのも、いいですね。
    お名前がそれぞれ個性的。笑えました。

  • なんとも不思議で面白い感覚。

    個性あふれる5人の登場人物が、手紙形式によって独白し、それらがつらなることでストーリーが生まれてくる。
    また、個性が表れた手紙のなかには、細かな心理描写や価値観なども散りばめられており、一つのエッセイのように楽しめる。

    私は文章を書くことはそれほど嫌いではなく、むしろ様々に書き連ねたいタイプ。
    昨今のLINEなどはどうも苦手。
    かつて、電子メールなどなかった時代、遠距離恋愛で数週間おきに手紙のやりとりをしていた頃が懐かしく思い出され、久々に手紙、書いてみよっかな...(^^)

全386件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

三島由紀夫(1925.1.14~1970.11.25) 小説家、劇作家。
東京生まれ。学習院時代から文才を注目され、1944年、東大入学と同時に『花ざかりの森』を刊行。47年、東大卒業後、大蔵省に勤務するも、翌年辞職。49年、『仮面の告白』で新進作家として地位を確立。『金閣寺』『鏡子の家』『近代能楽集』など、強固な美意識で彫たくされた作品を発表。海外での評価も高い。68年、楯の会結成。『豊饒の海』の最終回を書き上げ、陸上自衛隊市ヶ谷駐屯地東部方面総監室に立てこもり、割腹自決。

「2017年 『告白 三島由紀夫未公開インタビュー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

三島由紀夫の作品

三島由紀夫レター教室 (ちくま文庫)に関連する談話室の質問

三島由紀夫レター教室 (ちくま文庫)を本棚に登録しているひと

ツイートする