失われた時を求めて 1 (ちくま文庫 ふ 13-1)

  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (759ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480027214

感想・レビュー・書評

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  • 退屈を持て余した末、ついに手を出してしまった沼。

    物語の進行上の必然性などとはほぼ無関係に、語り手の目に留まったものについて突然考察が始まるという、、、。

    普通の小説とは勝手が違って、読み始めて数日は全然ページが進まなかったが、ある日を境にぐっとよめるようになった。

    自分の頭の中で、ほかの誰かが思考しているような感覚におちいる不思議な小説。思考過程をすべて文字に起こしている感じ。

    まだあと9冊も残っている。大学復旧がはやいか読了がはやいか、、、。

  • あるきっかけがあって、これは死ぬまでに読んでおかねばと思って慌てて読み始めた。ら、面白いのなんの。

    記憶を思い出すがままに綴られた小説だと思いきや違った。読み手を引っ張っていこうという企みに満ちた、サスペンス満載の構成だった。本作の紙数の大半はスワン氏とオデットとの恋愛に割かれているが、それが「私」の、スワン氏の娘ジルベルトへの愛に、時を隔てて繋がっていく……
    本作の大きなテーマと感じたのは、「時が永遠に流れてさえいれば、私たちはいつか何かを成就することができるのか」ということ。しかし残酷なことに、本作が一方で克明に描き出すのは、時は不可逆であるがゆえに変更がきかず、幸福な記憶は幸福として、後悔は後悔として定着するしかなく、そのどちらを思い出すのか、その引き金を引くのは、現在の私たちの心の状態でしかないという、生きているということの現実。

  • 20年以上前にゲルマントのほうあたりで挫折した失時を読むプロジェクトを始める。

    コンブレーは光文社の新訳(AmazonプライムのKindle版)で読んだのでスワンの恋から井上究一郎訳で読む。
    スワンは遠くから離れて見ると単にキモい金持ちのオッさんにしか見えないし、オデットもそれが職業と言ってしまえばそれまでだけど男の誑かしぶりがひどい。だけどスワンのイジイジした心の動きは、誰もが経験したことのある誰かを好きになる気持ち、気がつくとその人のことを考えている気持ち、何かを体験すればその人と一緒に体験したいと思う気持ち、の様な本当の恋の心情を言葉にするとこうなってしまうものであるのが間違いないので、読んでいると情けなさと共感で胸が痛くなる。
    土地の名ー名
    イタリアへの旅の憧れをその土地土地の名前で盛り上げるも、気持ちが盛り上がり過ぎて体調を崩して旅は取りやめになるのは如何にもプルーストっぽい。その結果行くことになったシャンゼリゼの公園でスワンの娘ジルベルトと近づく。スワンの妻となったオデットも主人公にとっては神の様に憧れる存在だった。
    末尾で急に時代は作者の現代に移り、良き時代を憧憬する。

    翻訳は光文社や岩波の新しい方がわかりやすいかも。少なくとも文字のサイズや行間はちくま文庫版が一番小さい。

  • とりあえず、第一章コンブレーは読んだ。第二章のスワンの恋、第三章土地の名、ーー名、 はまた機会を改めて。

    描写が、細かくてすごい。知識が足りなくて、うまく想像できないのがもどかしい。

    有名なマドレーヌのシーンって、第一章で出てくるのね。結構あっさり見つけられて驚いた。

    第一章の後編で、いきなりレズビアンのカップルが出てきたのにはたまげたわ。同性愛の要素がある小説と小耳に挟んだことはあるけれど、せいぜいほんの少し匂わす程度だと思ってた。

    それにしても、どんなに美しい土地だろうと、知り合いとしか顔を合わせる機会がない田舎は恐怖だわ。

    また読もう。

  • 東大京大教授が薦めるリスト100選抜

    No.25

  • 6巻あたりで挫折。

  • 井上訳のニョロニョロ文は、ひっじょうに読みにくい。意識を集中させ、ほかのことを排除し、没頭しないと、意味がわからずおなじところを何度も読む羽目になる。

    そんなで、読み終わるのに2か月もかかってしまった。
    じゃあつまらないかというとそんなことはなくて、スワンの嫉妬のところなんて、恐るべき観察眼で圧倒的、超面白い(でも400ページもやらなくても…)。


    計算上だと、全巻読破には20か月かかることになるが、いつ終わるだろう。

  • 紅茶に浸したマドレーヌを食べた瞬間に感じた幸福感から始まる長い物語の第一巻。年内に最後まで読みたいと思っています。

    第一部「コンブレー」は読むのにとても時間がかかったが、さすがに文章の比喩表現がとても素晴らしく読み応えは凄くあります。これと言ったストーリーがあるわけではなく主人公の思考の流れが描かれている。
    第二部「スワンの恋」では、主人公は登場せずにスワン氏とその奥様との恋愛が描かれていて、ここからストーリーらしきものが始まる。
    第三部「土地の名、-----名」では、土地の名に関する主人公の妄想が凄い。そして、いよいよ主人公とスワンの娘であるジルベルトの恋愛模様が描かれる。

    時間をかけてゆっくり読破したいと思います。

  • どうして綺麗なものしか追い求めてないこの主人公は、誰にでも好かれるのか。彼が主人公たる所以は何だろう。

  • 言わずとしれたプルーストの名作
    マルセル・プルーストのこの長編小説は、七篇にわけられる。
    第一篇 スワン家のほうへ   第二篇 花咲く乙女たちのかげに
    第三篇 ゲルマントのほう   第四篇 ソドムとゴモラ
    第五篇 囚われの女   第六篇 逃げさる女   第七篇 見出された時

    第一篇 スワン家のほうへ は、
    第一部 コンブレー   第二部 スワンの恋   第三部 土地の名、ー名 によって構成されている。

    第一部 コンブレーは、語り手の回想から物語がはじまってゆく。

    プチット・マドレーヌを浸した紅茶を口に含んだ瞬間に訪れた回想、すなわち、プルースト現象とのちに、名づけられることになる味覚などによって過去の体験や視覚などの感覚的記憶が呼び起こされるという場面が有名だが、
    マドレーヌが登場する前に、コンブレーで過ごした日々の回想ははじまる。

    一家はパリの自宅から祖父母や大叔母たちの住むコンブレーでしばしば滞在する。この小さな町は、シャルトルから程近いプルーストの実家のあるイリエという小さな町であり、本書にあやかって町の名前も「イリエ=コンブレー」になったという。

    語り手の少年は虚弱な甘えん坊で、ママの接吻がなによりも恋しかったが、来客などがあるとその接吻は中止されることがあった。ある夜、彼は芝居ががった手を打って母を一夜独り占めすることに成功する。
    母は、ジョルジュ・サンドの『フランソワ・ル・シャンピ』を読み聞かせる。

    このあと、プチット・マドレーヌの挿話が入り、また長々とコンブレーの回想が続くが、登場人物も多く登場するので、だらだらと読んでいると何度も前のページに戻らなければならないはめになる。

    祖父母、大叔母、その娘のレオニー叔母、祖父母の姉妹、両親、語り手の少年と召使のフランソワーズ。
    フランソワーズは、大叔母に仕え、レオニー叔母に仕え、語り手の家の召使になっていく人物。

    そして、隣人のスワン。 株式仲買人のスワンの父と語り手の祖父は親友で父親が亡くなってからも親しく付き合っていた。
    社交界でも有名人で伯爵やイギリス皇太子などとも友人であるが、ユダヤ人であるという人物。第二部は彼が主人公になる。

    女性関係が派手で祖父と悶着をおこしたアドルフ叔父を語り手は時々尋ねてゆくが、のちにスワン夫人となるオデットが「ばら色の婦人」として第一部で登場する。

    語り手の年長の友人のブロック、夏冬の休暇と週末をコンブレーで過ごす科学者で技師で作家であるルグランダン氏、
    妻を亡くし男手ひとつで娘を育てているヴァントゥイユ氏は、ピアノ教師であり作曲家で、彼の作曲したソナタは第二部で重要な役割を果たすことになった。
    ヴァントゥイユは亡くなるが、一人娘は同性愛者で女友達が父の遺影を(父を)口汚い言葉で冒涜するのを静観しただけでなく、父の尊厳を奪いながら加虐的被虐的極みに進んでいくことに快楽を覚えるのだった。

    コンブレーには散歩に行くのにふたつの方角があり、
    ひとつは、ゲルマントのほう もうひとつはスワン家のほう であった。
    ゲルマントは由緒正しき貴族であり、スワン家はユダヤ系のブルジョアで、この啓示は今後の展開に大きな意味を持つらしい。

    第二部のスワンの恋は、時を15年ほど後戻りしたスワンとオデットの恋物語で、フォルカー・シュレンドルフ監督 ジェレミー・アイアンズ アラン・ドロンなどの出演者で映画化もされている。
    構成としては第一部のコンブレーより格段読みやすく独立した小説としても楽しむことができる。

    スワンは、劇場で昔の友人からオデット・ド・クレシーを紹介され、オデットの紹介で、ヴェルデュラン家のサロンに出入りしはじめた。

    ヴェルデュラン家はブルジョアではあったけれど、スワンが今まで出入りしていた伯爵やその他の貴族のサロンとは違い、所謂俗っぽいお金持ちのグループで、スワンはなぜかしらそのサロンを気に入ってしまう。

    オデットは、高級娼婦で(スワンはそのことを聞かないふりをしたが)美人ではあったけどスワンの好みでは全然なかった。しかし、ある時、彼女がシスティーナ礼拝堂にボッティチェルリが描いたモーセの妻のチッポラと似ていることに気づきだんだんオデットの虜になっていく。

    ヴェルデュランのサロンには、コタール医師夫妻、若いピアニスト、元門番のピアニストの叔母、ムッシュー・ビッシュと呼ばれている画家、夫妻の古い馴染みの冴えないサニエットなどが客として集まっていた。

    はじめてヴェルデュランの晩餐に列席したスワンが耳にしたのは、ヴァントゥイユのソナタでこの曲はふたりの恋の国歌になっていったのだった。

    最初の頃スワンはオデットに逢うまでの時間、自分の好みの若いお針子と逢瀬を楽しみ、ヴェルデュラン家に赴いたりしていたのだが、どんどんオデットの虜になって、サロンに新参者のフォルシュヴィル伯爵が現われて、オデットに言い寄るようになってからはますます愛と嫉妬の盲者になってしまう。

    「カトレアをする」という二人にしか分からないメタファーが語られるが(意味はあえてここでは伏せます)このあたりのくだりは、個人的にとても好きだ。
    二人が何気なく用いる単なる言葉になってしまってからも、この忘れられた用法を記念しながら、二人の用語の中に長く生き残ったという文章は、プチット・マドレーヌと同じくらい印象的に私のなかに刻まれました。

    さて、スワンは、オデットに相変わらずメロメロなのですが、オデット方はフォルシュヴィル伯爵と怪しくなったり、ヴェルデュラン夫妻とヨットの旅に出てしまう。
    オデットへの愛しさが募りつつもオデットの心が離れて行っていることに気づき諦念を抱き始めた頃、サン=トゥーヴェルト公爵の夜会でゲルマント家の一族に会した席で、スワンはオデットとの思い出の曲、ヴァントゥイユのソナタを聴いてしまい、激しく心を掻き乱す。
    ある日、匿名の手紙をスワンは受け取る。
    その手紙にはオデットが数え切れないほどの男たちの愛人であったことや、娼家に出入りしていることなどが書かれてあり、束の間、妬心を燃やしたり書簡の犯人探しをしたりするが、オデットとの恋の終焉を認める。
    ------「ぼくの生涯の何年かをむだにしてしまったなんて、死にたいと思ったなんて、一番大きな恋をしてしまったなんて、ぼくをたのしませもしなければ、ぼくの趣味にもあわなかった女のために!」------
    と、いう文章で第二部の スワンの恋 は幕を閉じる。

    第三部の 土地の名、ー名 は、前の二部に比べると小規模な成り立ちで、主人公は語り手となる。
    恋は完全に終ったと思わせた第二部の幕切れが覚めやらないうちに、それから数年後、スワンとオデットは結婚し、夫妻の間にはジルベルトという娘が誕生している。
    パリの自宅に戻った語り手は、シャン=ゼリゼでジルベルトを見かけ恋してしまう。
    スワン夫人となったオデットも登場するが、ブロンドに灰色のものが混じるようになった頃でも美しく、娘のジルベルトに恋する語り手にも素敵に見えるのであった。

    最近、『失われた時を求めて』は、鈴木道彦さん訳のものが集英社から文庫化されて発売されたが、
    私は、井上究一郎さん訳のちくま文庫の方を読んだ。
    既にパリで、プルーストのお墓参りも(パリ ペール・ラシェーズ墓地)終えた(笑)

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