失われた時を求めて 8 (ちくま文庫 ふ 13-8)

  • 筑摩書房
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感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (784ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480027283

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  • ちくま文庫版では1冊の囚われの女。どうでもいいけど約800ページでまず本としての存在感がすごい。

    パリのアパルトマンの外の音が溢れる朝の情景。
    音楽論、文学論が詳しく語られる。もう一度よく読み返したい。ヴァントゥイユの七重奏はどんな編成なんだろう。ヴァイオリン、ハープ…?

    囚われる女はアルベルチーヌ。話者はアルベルチーヌの事を愛していないながらも手放せない。手放すと何処かに行って良からぬ事をしてしまうから囲ってしまう。この心理はよくわからない。
    対するアルベルチーヌも色々好き勝手したいしこれまでも嘘ついてごまかしてきたけどとりあえず囲われておく。ここもよくわからない。
    ごまかしあってアルベルチーヌを劇場から連れ戻した夜に話者は一人でヴェルデュラン家の夜会=モレルの演奏会に行く。この夜会はシャルリュス氏がモレルを引き立たせるために開催した本当ならヴェルデュランのところには行かないようなランクの人々を呼んだもの。ヴァントゥイユの未発表だった七重奏曲は素晴らしいもので演奏会は大成功する。しかし蔑まれたヴェルデュラン夫人はモレルを焚きつけてシャルリュス氏を陥れる。
    話者はこの夜会にヴェルデュラン嬢が来る予定だった事、アルベルチーヌが彼女に会いたいのでこの夜会に出たがっていた事でアルベルチーヌに対する不信を募らせる。
    話者は自宅でアルベルチーヌと話し、心の平穏を得ようとする。アルベルチーヌは話者と相対すると話者の嫌がる事はしない。話者は自分の不信と折り合いをつけ、アルベルチーヌには金を使ってやる。しかし話者もアルベルチーヌを愛してはおらず、どのようにこの関係を終わらせるかを考え続ける。話者がアルベルチーヌを置いてヴェネチアに旅に出る事を夢想した朝、アルベルチーヌは何も言わずに話者のアパルトマンを去る。

  • 律儀に本作の各巻を読み終えるたびに一応評価をしてきたのだけれども、もはや本作は評価の軸を軽々と逸脱していて、なんだか唸り声をあげて考え込んだ。
    「囚われの女」といえど、愛情もないのにアルベルチーヌに対する嫉妬に囚われているのは「私」であり、彼女を愛してもいないのに、嫉妬を原動力に彼女を自宅になかば捕縛しておくというその動機が狂っており、一方で彼女を狂わせる作曲家ヴァントゥイユの娘の「仲間」の女性が、ヴァントゥイユの未発表曲の記譜を引き受け、彼の曲が社交界で披露されるに至ったいきさつとか、とにかく、誰を貶めて誰を褒めていいのかとんとわからないというこの状況が現実、生きるということなのだ、ということが、というか、それだけを実感するしかないところが、もはやこれを傑作としか言うことができない理由なのだろう。

    面白いのは、ストーリー展開を知るには本作を数ページずつ読むだけで足りる。ではなぜ本作のような饒舌についていくのか。それは、狂っているから。時間を浪費しているから。

  • プルーストの大作全10巻内8巻まで読めました。この第8巻はかなりのヴォリュームで読むの大変だった。
    主人公はアルベチーヌに対して愛情はない、とひたすら言い続けているが、アルベチーヌに対してひたすら嫉妬をしていて、そのため同棲なんかしちゃって、それでも好きじゃないよ。と言い続けてる。で、別れ話しまで始めるけど、本当に出て行ったらどーしよー、とか心配しちゃっててなんともめんどくさい性格。
    この巻で初めて主人公の名前がマルセルと呼ばれるシーンがある。今まで頑なに名前を出さなかったのに!マルセルってことはやっぱり主人公は作者なんだね。でも、実際のプルーストは同性愛車だったようだけど、小説の主人公はむしろ女性にめっぽう惚れやすい性格なんのがおもしろい。

  • マルセル・プルーストの大作

  • 舞台を再びパリに移しての10冊シリーズ第8巻。愛ゆえではなく嫉妬ゆえに相手と離れられない話者、プルーストが描く感情世界は決して美しいものではないけど、だからこそリアルで、「人間の中にある共通項」を痛切に感じてしまう。綺麗事ではない、狡猾だったり醜かったり自惚れていたり、敏感な感情と自己中心的な欲求と、なんとストレートに、リアルに、そして事細かに描かれていることか。プルーストの勇気を改めて感じながら読了。

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