失われた時を求めて 9 逃げさる女 (ちくま文庫 ふ 13-9)

  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (522ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480027290

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  • 逃げさる女
    アルベルチーヌが意外にすぐ死ぬ。そのあとのグダグタが長い。そしてアルベルチーヌやアンドレがエロい。一番ひどいのはモレル。全てモレルが悪いんじゃないかってくらいに悪い。あのサンルーまでたぶらかすとはシャルリュス男爵以上。

    失われた時を求めてといえばのマドレーヌからの回想や花咲く乙女たちのかげにでの浜辺での健康的な少女たちや社交からの陰画ともいえるくらい遠いところまで来てしまったと感じる

    囚われの女の最後に話者のもとをアルベルチーヌが突然去ったところからの続きで始まる。アルベルチーヌを取り戻さなきゃという焦りとフランソワーズにはその焦りを気づかれたくないという情けなさが同居。
    そしてさらなる急展開でアルベルチーヌは落馬して死ぬ。この時点でかなり序盤。その後アルベルチーヌのレズビアン癖の探索を人伝に色々聞き回り鬱屈する。
    ようやく物語が展開するのは自分の書いた記事が新聞に載ってから。ゲルマント侯爵夫人のところで出会ったのは今はフォルシュヴル嬢になったジルベルト。しかしジルベルトへの感情はもうない。
    アルベルチーヌへの気持ちは3つの宿駅を通って消えていく。一つ目はジルベルト。二つ目はアンドレ。アンドレはこれまで語っていなかったアルベルチーヌのさまざまな情事を話者に暴露していく。しかし話者の心はさほど乱されなくなっていく。アンドレは「ヴェルデュランの甥くさっちゃった」と結婚。くさっちゃったはアルベルチーヌの処女も奪っていた。アルベルチーヌとモレルは田舎の女を連れ出して3P。
    そして3つ目はヴェネチア。母と訪れたヴェネチアの芸術や女を楽しみながらアルベルチーヌへの想いは更に薄れていく。なぜかヴェネチアに集結する過去の登場人物。死んだはずのアルベルチーヌからの電報。ママと一緒に帰るのは嫌と言いながら結局は一緒に帰る。帰りの汽車の中で読んだ手紙で明かされるジルベルトとサンルーの結婚とカンブルメール家の坊ちゃんとジュピアンの娘の結婚(シャルリュスが黒幕)。
    サンルーは同性愛に目覚めていてジルベルトを困らせる。

  • 人間というのは何と虚栄心に満ち、愚かなのか。人間がなまじっか知性を獲得したせいで引き起こされる悲劇。ある種の戦略の結果を超越した結末。
    夏目漱石の「虞美人草」を読み終えた時以来味わった、あまりに複雑な心のざわめき。

    本作にはこの長さが必要だったのだな。というのも、死者をいつまでも忘れない、的な恋愛小説とか家族小説とかあるけど、そんなのは時間の経過によって忘却という便利な機能が当人の意識状態を変えてしまうがゆえに本来成り立たないものなのだ。なまじっかページ数が少ないと、運命みたいなものがさも存在しているかのように錯覚されるが、本作はその過剰なページ数によって、そんなのは欺瞞であると証明している。にもかかわらず、あいかわらず運命を都合よく利用する小説が量産されている問題を考えなければならない。

  • 前巻のラストで主人公の家を出て行ったアルベチーヌ。前巻ではさんざんアルベチーヌを愛していないと語り、自ら軽く別れ話までしていたのに、いざ本当にアルベチーヌが出て行くと、猛烈に戻って来て欲しくなり、どんなことをしてでも戻って来て欲しい!と思う主人公。このアルベチーヌへの未練と、別れの悲しみと、アルベチーヌへの疑惑を考え出すともうどうにも止まらない。このくだりだけで250ページほどあーでもない、こーでもない、と考え続けてるんだから凄い。しかも、危うく犯罪者ギリギリの変態的な行為にまで走ってしまうほど追い詰められる主人公。ある意味今までのエピソードの中で1番キモくて面白かった。いよいよ超大作も残り1冊!

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