中島敦全集〈2〉 (ちくま文庫)

著者 :
  • 筑摩書房
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本棚登録 : 175
レビュー : 11
  • Amazon.co.jp ・本 (560ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480027528

感想・レビュー・書評

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  • 「かめれおん日記」と「狼疾記」が身につまされ過ぎてつらい

  • パラオ周辺の出来事を描いた、南島譚や環礁からは暖かい光と風を感じる。
    「夫婦」からは、妻に頭の上がらない夫、ギラ・コシサンが、妻よりも善き美女リメイと添い遂げる話が描かれているが、分かりやすくて面白い。
    他部族の女が炊事女としてやって来て、気に入った男を持って帰るのもそうだし、恐妻エビルがある種の力を持つ女系一族であることも、文化って上手いことなってるなーと感心。

    「牛人」では、夢に見た救い人であるはずの豎牛に騙され、追い込まれてゆく叔孫が哀れ。
    珍しく筋書きが因果応報でないというか、急に黒い展開の話で、不穏。

    書簡については、妻へのあれやこれやとか、子供へのパパぶりが描かれているのだけど、いつも思うのは、小説家だからといって、どんな文章もこうしっかりと残されては敵わないのではないか、とか思ったりする。
    画家はどうか分からないが、超一流の俳優とか音楽家の書簡集と違って、文学者は大抵の場合、全集には入るように思う。まあ、それも全集が出るほどの人であれば、ということだけど。

  • 「南島譚」や「環礁」の平易でユーモアーに富んだ文章は、それまでの中島敦の印象を大きく変えてくれた。南洋の風物や人々の暮らしに触れた中島の驚きや好奇心が素直な筆致から伝わってくる。日記や書簡についても中島の意識の方向が感じられて興味深い。

    「わが西遊記」を読んだ後は、万城目学の「悟浄出立」も読むことをお薦めする。

  • ミクロネシヤ巡島記抄が読みたかったのでうれしい!
    夾竹桃の家の女の出だしなんか堪らない。
    「 午後。風がすっかり呼吸を停めた。」

    南の島の色彩の見事さをここまで正確に魅力的に描ける筆力。やはり天才。

    書簡がまたいい! たか夫人へ宛てた手紙がもう最高。昼はこどものことを思わないようにしているが、夜になると思ってしまうとか、心配しないでほしいとか、手紙ほしいとか、でも生活に差し障るほどは書かぬで良いとか、もう愛情がこれでもかってあふれてる手紙。あんな手紙書きたいもらいたい。文章家ですね。

  • 2012 1/13「盈虚」のみ読了。青空文庫で読んだ。
    青空文庫のデータをガラケーで表示しつつ読了。
    衛国の太子の興隆を描く話。
    ラストの戎人の台詞が決まっている。

  • 日記や書簡に触れると、その漢語朝の文体から伝わってくるとは違った中島敦さんが見えてきます。

  • 「南島譚」「環礁」
    南洋の空と海の碧が・長閑と倦怠の異郷情緒が・憧憬を誘う。エキゾティシズム。

    「わが西遊記」
    近代的な自己意識の苦悶――無限の反省作用・対象化作用――に陥った悟浄の精神的遍歴。悟空の如き自己意識の超越或いは無化がこの苦悩を解く道であることが示唆されているが、しかし自己意識の自己意識たる所以はその原理的な超越不可能性にあると思う。それを捨てることは決してできないのだ。それにしても、やはり中島敦は、近代の苦悩を描いた近代の作家である。

    「過去帳」
    自己と世界との間に懸隔を感じざるを得ない虚無感・無常観に苛まれる形而上学的苦悩の形式を、僕も共有する。世俗に馴染めぬ自己に苦しむ一方で、俗人とは交わらぬという自尊心――しかしその実、世俗へ降り立つことで自己の超越性が脅かされることを極度に恐れる"臆病な自尊心"。その自己は、軽蔑する当の俗世の喝采を密かに求めてはいるのではないか。世俗に対する冷笑は、その喝采を獲得する為の実人生上の能力を欠いた自己が何とか維持しようとする自尊心の、裏返された顕れではないか。世俗を求めながら世俗を得られぬ者の、随分と分かり易く屈折した俗物性ではないか。超俗を偽装するのは常に俗物そのものではなかったか。自意識の形而上学的懊悩に自己を摩滅し、その徹底性ゆえに自己否定を止め得なかった中島の無限の苦しみ。

  • 下レビュー参照のこと

  • 西遊記からのスピンオフ「悟浄出世」と「悟浄歎異」。悟浄はもちろん悟空や八戒、三蔵の人物像が西遊記の世界にやけにリアリティを与えてくれます。

  • 中島敦は漢文調の文体がな……と敬遠してしまっている人にオススメ。読み易い短篇ばかりなので、中島敦のエッセンスを知るのにかなり入り易いかと。「自意識」について日々考えている人にとっては、特に興味深いテーマとなっているかもしれません。

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著者プロフィール

中島敦

一九〇九年(明治四二)、東京・四谷に生まれる。三〇年、東京大学国文学科入学。三三年に卒業し、横浜高等女学校に国語科教師として就職。職の傍ら執筆活動に取り組み、「中央公論」の公募に応じた『虎狩』(一九三四)で作家としての地位を確立。四一年七月、パラオ南洋庁国語編修書記として赴任。持病の喘息と闘いつつ『山月記』『文字禍』『光と風と夢』等の傑作を書き上げる。四二年(昭和十七)、職を辞して作家生活に入ろうとしたが、喘息が重篤となり、同年十二月に夭折。

「2019年 『南洋通信 増補新版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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