日本人をやめる方法 (ちくま文庫 す 6-1)

著者 :
  • 筑摩書房
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感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (253ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480027764

作品紹介・あらすじ

「もう日本人なんかヤメてやる!」と思ったことはありませんか?息がつまりそうな社会、自由や自発性のない文化・習慣、そんなものアッカンベーだ。「日本」を脱出し、オーストラリアに生活する著者が、アナタだけにそっと、「ニッポンを脱ぐ方法」をお教えします。新世紀の冒険者のために。

感想・レビュー・書評

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  • なかなか面白い本(日本人論の部分には突っ込みたい気持ちが沸き起こりましたが)。
    詳しめの目次をつくったので、下に掲げておきます。


    【目次】
    プロローグ 戦略としての相対化 009
    脱日本へのいくつかの動機/アメリカとの単純比較を避ける/社会比較による自己相対化

    第1部 日本社会の深層を縛るもの 027
    第一章 障害としての「班」の思想 029
    日本人の無意識を縛るもの/同調競争を煽る「班」/忠誠競争としての「ハン・コントロール」/「やっかみ」からの解放
    第二章 「籍」の思想との対峙 043
    上下関係と一斉主義/ニッポン独特の「戸籍」/個人の国際化に対する障壁
    第三章 「ものいえば唇寒し」からの自由 056
    日本社会に言論の自由はあるか/マイノリティー・オブ・ワン/「日本の恥」という恥/言論機関の言論の自由/主権在金と金論の自由

    第2部 「脱日本」への道標 071
    第四章 「日本からの難民」という範疇 073
    「会社難民」「教育難民」「地縁難民」/国家意識からの解放、少数集団への共感/日本への難民と日本からの難民
    第五章 越境主義への招待 086
    「マージナル・マン」という概念/冒険の楽しみとしての越境主義/「棄国越境人間」と「在郷越境人間」/越境人間が目指す場所
    第六章 移民一世の楽しみ 098
    移民一世の社会上昇度は言語習得度に正比例/スポーツの訓練に似た言語習得/二世の子どもたちから学ぶ/超自由主義への段階/マイノリティーから地球人への道筋

    第3部 日本人論からの解放 111
    第七章 日本礼賛論のからくり 113
    日本人論が作り出す催眠状態/日本礼賛論の台頭/日本論三つのアンバランス
    第八章 あべこべ日本人論 126
    〈自己概念〉/〈食器〉/〈娯楽〉/〈大衆文化〉/〈街頭〉/〈プライバシー〉/〈非接触主義〉/〈写真〉/〈名刺〉/〈転居状〉/〈留守番〉
    第九章 「日本人勤勉論」を再考する 144
    日本人の怠惰性いろいろ/偏った勤勉性からの自由/勤勉のあり方を自分で選ぶ

    第4部 概念構築の根底 159
    第十章 「考える」ことを考える 161
    スポーツ応援の心理構造/「至上主義」対「相対主義」/「エミック」対「エティック」
    第十一章 英語習得の落とし穴 176
    英語を「書ける」ことがまず第一/書く力の鍛錬から生まれる「使える英語」/英語の情緒性、日本語の論理性

    第5部 個人の国際化への関門 189
    第十二章 テクノクラートの国際化 191
    日本人会に足をとられない/日本型文化帝国主義の危険性
    第十三章 ビザ制度の背後にあるもの 199
    「日高問題」の衝撃/国家権力の「聖域」としてのビザ問題/国家官僚間の協力によるいやがらせ/国境を超えた市民の協力/「関所制度」としてのビザ問題
    第十四章 レイシズムとの戦い 214
    海外での日本批判の複雑さ/反動派と民主派の合致という皮肉/日本国内の反権力運動と海外の「日本たたき」/お互い様主義に目を向ける

    エピローグ 新世紀の暴険者たちへ 227
    海外定住に立ちはだかる六関門/「日本に対する裏切り」という概念/脱日本人への十ヵ条/新世紀の冒険者になろう

    あとがき(メルボルンで 杉本良夫) [243-245]
    文庫版へのあとがき(一九九三年八月四日 杉本良夫) [246-248]
    解説 日本人を続ける方法(森毅) [249-253]

  •  日本という国の賛美。嫌いではないが、肝心な部分を隠しての礼賛は、自国の批判が大声で聞こえてくる他の国々よりも、日本を居心地の悪い国にしているように思う。日本人から、あるいは日本社会から逃れることによって新たな生き方を模索する。それを通して世界の認識を、さらには自分という人間を再構築する。著者はオーストラリアへ移住することによってそういったことを実践してしまった。その経験に裏付けられた思想は極めて説得力がある。あたしの考えおかしい?と思っても「周りはみんな敵だというわけではない」という希望は持っているべきことを認識した。

  • ――――――――――――――――――――――――――――――
    流入賛成派も、流入反対派も、「住みにくい外国と住みよい日本」「弾圧下の胃外国と自由な日本」「貧乏な外国と豊かな日本」という対比図式を、暗黙のうちに共有しているからである。73

    賛否双方とも、ある種の心地よさを気持の奥に秘めて、論争に参加することができる。意識下の深みに横たわっているのは、「優れた日本と劣った外国」という絵模様だからである。74
    ――――――――――――――――――――――――――――――
    この家庭は四代目の中国系オーストラリア人の家族で(…)日本から来た学生はオーストラリアへ来た以上、当然白人家庭に滞在することになっていると思っていた。

    家の中でも一番いい部屋を準備して歓迎しようとしていたこの家族の負った傷は深い。

    このような原理で動いている以上、何百万人の日本人が海外へ出ても「国際化」への道のりは、まだまだ遠い。81
    ――――――――――――――――――――――――――――――
    「日本人」というアイデンティティーが壊れてしまうと、現状に重大な変化が起こる。それは避けて通ろうという訳である。91
    ――――――――――――――――――――――――――――――
    異文化理解というのは、実はこういうエミック概念同士の共通性を抽出する道程であるということができる。エミックをエティックにしていく行程ともいえるかもしれない。175
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  • (要チラ見!)

  • 20年以上前の本なので、少しは日本も変化していると思うけど、確かにここに書かれていることはだいたい今も引き続き起こっています。
    著者が記者クラブメディア→アメリカ→オーストラリアという経緯からか、日本の悪さを並べ、「欧米では」という比較ばかりです。「越境主義」であるのなら、欧米ばかりを比較に取り上げる必要もないし、もっとアジアのことも出てくればよいのに、少々残念です。日本人の悪口を言っているうちは、日本人はやめられないよね。

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