女たちの遠い夏 (ちくま文庫 い 31-1)

  • 筑摩書房
3.20
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感想 : 12
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  • Amazon.co.jp ・本 (275ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480028730

作品紹介・あらすじ

イギリスに住み、娘の自殺という事態に遭遇した悦子は、自分が生きてきた道を回想する。裏切りの記憶、子殺しの幻影、淡く光った山並みの残像-戦後の長崎を舞台に、戦争と戦後の混乱に傷ついた人々の苦しみを、端正流麗な文体で描きあげる。謎めいた構成の背後から、戦後日本の一つの透し図が現われ出る…。長崎生まれ英国育ちでブッカー賞受賞の日本人によるイギリス文壇へのデビュー作。

感想・レビュー・書評

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  • 純文学的作品。確かに日本の情緒が感じられて海外でうける作品だろうなと思った。
    母になっても母親じゃなく女として生きる女は毒親が多いな。娘が見ているのを分かっていながらのあの猫の描写は残酷。連続殺人はなんの話かと思ってたが想起させる文だったのね。

  • 『遠い山なみの光』の改名後の邦題で一度読んだ本。戦後まもなくの長崎を舞台に語り手の悦子が不思議な母娘である佐知子・真理子との接点で語られる。悦子がその後、英国へ渡り、長女景子を自死で喪い、次女ニキに見守られる中で過去を思い出す形で話が進んでいく。悦子・佐知子の会話が中心となり、真理子の未来を暗示しているようなエピソードが、悦子自身の人生と重ね合わされる。佐知子が長崎を離れるに際して、子猫を水死させる場面が淡々と描かれている。著者が日本語をほとんど話せなくなっている英国人であるが、時空を超えた不思議に静謐な世界を描いているように感じる。それは能面を描いたこの本の表紙のイメージそのものである。

  • 文庫解説で、佐知子が佐和子と書かれていた 誰も気づかなかった?

  • 2017年度今月の1冊
    2017年度のノーベル文学賞を受賞されたカズオ・イシグロ氏。どの作品も、内容に関わらず静謐なたたずまいを持っています。この作品は長編第1作で朝鮮戦争下の長崎を舞台としています。原題は「A Pale View of Hills」ほの白い光を浴びている山々。

    【紙の本】金城学院大学図書館の検索はこちら↓
    https://opc.kinjo-u.ac.jp/

  • ‹内容紹介より›
    イギリスに住み、娘の自殺という事態に遭遇した悦子は、自分が生きてきた道を回想する。裏切りの記憶、子殺しの幻影、淡く光った山並みの残像ーー戦後の長崎を舞台に、戦争と戦後の混乱に傷ついた人々の苦しみを、端正流麗な文体で描きあげる。謎めいた構成の背後から、戦後日本の一つの透し図が現れ出る……。長崎生まれ英国育ちでブッカー賞受賞の日本人によるイギリス文壇ヘのデビュー作。

    ーーーー
    2017年ノーベル文学賞を受賞したことを受け、はじめてカズオ・イシグロの著作を読んでみました。
    まずはデビュー作。
    物語の語り手は、「景子」と「ニキ」という二人の娘を持つ景子。姉の景子は日本人(二郎)との娘、妹のニキは英国人との娘。
    細かな理由や原因などは描かれませんが、景子とニキの関係は悪かったようで、景子が自殺した後も、彼女の「影響力」がたしかに家に残っているのを悦子もニキも感じています。
    そしてその感覚が、悦子に長崎時代の記憶を呼び起こさせるのです。
    戦争から立ち直ろうと前を向くうどん屋の藤原さん、自身のこれまでの教育を否定された舅の緒方さん、日本を飛び出しアメリカへわたることを夢見る佐和子とその娘万里子。
    「幸せ」に生きることをそれぞれに考えているのでしょうが、悦子の(あるいは読者の)視点から見て、だれが本当に「幸せ」なのか、考えさせられる作品だと思います。そこはかとなく、「戦後日本における女性の自立」や「戦後日本の思想(思潮)の劇的な変化」が感じられる作品でした。

  • 2013.2.23読了。

    母性って妖しい。

  • 2012/09/22 読了

  • はつきり書かれていることは少なく、読者に補完させるかのような書きぶり。でも、これができる作家は少ない。余韻が良い作家。

  • これは翻訳が素晴らしいからかもしれないが、
    初めに読んだ時に日本の小説よりも日本の小説らしい雰囲気をもらったように思う。
    訳された題は実は原題とはだいぶ異なっていて今は原題に近い題名になっているが、自分はこの題名で読んだのでこちらのほうが好きである。
    原書も買って挑戦したが、ちょっと途中で止まっている。
    ゆっくり辞書ひきながら時間とって読みたいが時間がとれない。。

  • 松家氏推薦

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著者プロフィール

カズオ・イシグロ
1954年11月8日、長崎県長崎市生まれ。5歳のときに父の仕事の関係で日本を離れて帰化、現在は日系イギリス人としてロンドンに住む(日本語は聴き取ることはある程度可能だが、ほとんど話すことができない)。
ケント大学卒業後、イースト・アングリア大学大学院創作学科に進学。批評家・作家のマルカム・ブラッドリの指導を受ける。
1982年のデビュー作『遠い山なみの光』で王立文学協会賞を、1986年『浮世の画家』でウィットブレッド賞、1989年『日の名残り』でブッカー賞を受賞し、これが代表作に挙げられる。映画化もされたもう一つの代表作、2005年『わたしを離さないで』は、Time誌において文学史上のオールタイムベスト100に選ばれ、日本では「キノベス!」1位を受賞。2015年発行の『忘れられた巨人』が最新作。
2017年、ノーベル文学賞を受賞。受賞理由は、「偉大な感情の力をもつ諸小説作において、世界と繋がっているわたしたちの感覚が幻想的なものでしかないという、その奥底を明らかにした」。

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