コスモポリタンズ (ちくま文庫 も 12-2 モーム・コレクション)
- 筑摩書房 (1994年12月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (382ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480030023
感想・レビュー・書評
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人間とは矛盾したものである。人に対する温かい眼差しに満ちた短編集。なかでも「ルイーズ」が一番印象に残った。
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史上最高の短編作家のひとり、サマセット・モームが繰りだす珍談、奇談の数々。
「素材」
東南アジアですれ違ったふたりのトランプいかさま師とニューヨークでふたたび顔を合わせた時のエピソード。
「弁護士メイヒュー」
酔った勢いでカプリ島に地所を購入、そこに移り住んでからは心機一転、学究の徒として生涯を終えたある弁護士の話。
「隠者ハリー」
船が難破してニューギニアの無人島トレバケット島に漂着し、3年後やっと発見されるもその島を出ることを頑として拒み続けた男。ひとは彼を”隠者ジャーマン・ハリー”と呼んだ。
「幸福者」
モームのアドバイスに従い、イギリスの生活を捨てスペインの町医者になった男の話。
「夢」
ペトログラートの食堂でたまたま相席となった男が、自分の妻が階段から転落して死んだいきさつを喋りはじめる。
「異国の土」
アジアの片隅、たったひとりでホテルを経営する英国出身の未亡人。慇懃な口調で淡々と語られるその世間話には驚きの事実が含まれていた。
「ランチ」
モームがまだ貧乏文士だったころ、強欲な婦人にランチの席でさんざんたかられた話。
「漁夫の子サルヴァトーレ」
南の島の平凡な漁夫サルヴァトーレ。その胸の奥には”善良さ”という宝物が眠っている。
「生家」
愛する女が自分より弟を選んだと知ったジョージ・メドウズは家を出た。そして50年後。死期を悟ったジョージ・メドウズは帰って来た。もう一度生家を拝むため、そしてその女に会うため。
「物識先生」
ケラーダ氏は、①なんにでも首を突っ込んでくる、②自分の思い通りにならないと我慢がならない、③議論好きで必ず相手をやりこめる、といういわゆるちょっと面倒くさいやつ。そんなケラーダ氏が大見えを切って「本物」と断言した真珠を、模造品だったとのちに訂正、謝罪した。公衆の面前で恥をさらすことになったケラーダ氏であったが……。
「家探し」
熱烈な恋愛期間を経てのち、すっかり恋が覚めてしまったロジャー。しかし自分から女を捨てるのは慰謝料がかかるし世間体も悪い。そこで女の方から別れを切りだしてもらおうとロジャーは一計を案じる。
「困ったときの友」
エドワード・バアトンは華奢で小柄なひとかどのビジネスマン。彼は彼の元に救いを求めてきた同姓のレニー・バアトンに、神戸沖の浮標を泳いでまわってもどってくることができたら仕事をあげると約束する。
「落ちゆくさき」
一宿一飯の恩義を受け、ありがたく客室のベッドに休もうとする私に、家の主人は余計にも、前回ゲストとして彼の家に泊まりそのベッドで死んだオランダ人のことを話しはじめる。
「蟻とキリギリス」
素行不良の弟トムに悩まされながらも、こつこつまじめ一徹に生きてきたジョージ・ラムゼイがついに引退の時を迎えた。これから先は田舎に引っ込んで好きな庭いじりをやったり、ゴルフにいれこんだり……。一方その時トムのご身分たるや……。
「フランス人ジョウ」
トレス海峡に位置する木曜島。そこにひとりで生活する老人ジョウ。ナポレオンの末裔だというその老人の波乱の人生。
「傷痕のある男」
こめかみから顎にかけて大きな刀傷のある男。その傷にまつわる曰く因縁が……語られないかわりに、傷とは関係ない壮絶なエピソードが語られる。
「詩人」
多感な青年時代に熱中したあの伝説の大詩人。その謦咳に接する機会を得たわたしは興奮を押さえきれずに彼の元を訪ねる。
「ルイーズ」
’自称’ 蒲柳の質のルイーズは都合のいいときだけ心臓の調子が悪くなる。まわりの家族はそんな彼女に振り回されっぱなしで挙句の果てには……。
「約束」
わたしがホテルのレストランに入っていくとたまたまそこでひとり食事していたのが、色恋沙汰では枚挙にいとまがないゴシップの女王、エリザベス・ヴァーモントその人だった。わたしは彼女と同じテーブルに着いたのだが、彼女曰く、食事のあと彼女はとある約束を果たすつもりでいるのだと打ち明けてくる。
「真珠の首飾り」
上流階級が催す晩餐会の席上。住み込みの家庭教師(身分の低いgoverness)は、身に着けていた真珠の首飾りが非常に高価なものであると同席した鑑定士から指摘された。家庭教師はいったんその場を離れるがしばらくしてから、件の首飾りのかわりにいかにも安っぽい首飾りを着けて戻って来る……。
「物もらい」
わたしがメキシコ、ヴェラ・クルーズで見かけた乞食は、驚くほど痩せこけており見るも無残な恰好をしていた。しばらくしてのちわたしはその乞食が若い頃の知りあいで、かつて芸術家仲間のうちでも気位が高く、天才とも目されたことのある作家志望の男であったことを思い出した。
「会堂守」
「ネヴィル大広場の聖ペテロ教会のようなところでは、まさか読み書きもできない会堂守りをかかえとくわけにもいくまい。」との理由でながの年月勤めあげた教会からクビを通告されたアルバート・フォーマン。その日のうちに彼はタバコ屋に転身しようと思い立つ。
「洗濯屋」
アメリカ人の成金、バーナビー夫人は夢だったイギリスの社交界にもぐりこみ、口八丁で人気者となる。
「四人のオランダ人」
ジャワ海を根城にして活動するオランダの不定期航路船ユトレヒト号。その船員は現地では有名な仲良し四人組。全員ふとっちょまん丸顔の最高にごきげんな連中だった。……あるマレー人の女が乗船してくるまでは。 -
雑誌コスモポリタンに掲載されたショートショート集。巻頭で作者は「読者には面白いと感じてもらう以外何も求めない」と言っている。すごい自信だけど、本当に面白いから感服する。
やはり、この作家は常識から逸脱した男女に温かい目線を注いでるところが好き。お菓子とビールもそうだけど、特に女性を罰しようとしないのがとてもよい。例えば「約束」「真珠の首飾り」「社交意識」「洗濯盥」(当然、それぞれ魅力ある女性だけど)、ある種の賞賛と共に描かれている。まあ、一方で猫被りながらその実自分の思い通りに他人を動かそうとするような女性には、かなり手厳しいけど。例えば「ルイーズ」「家探し」。 -
通俗的。
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コスモポリタン誌に連載されていた短編を集めたもの.いずれも短いので,毎日あいた時間に少しずつ読むと良い.
最後に見事なオチの用意された話もあるし,人生の皮肉な因果を描いた話もあるが,「傷跡のある男」「詩人」「会堂守り」がよかったかな.最後の「四人のオランダ人」は来月訪れることになっているマカッサルが出てきたので驚いた.
ふと思ったのだが,志賀直哉の書く小説ともエッセイとも判断がつきかねる短編というのは,モームの系譜なのだろうか? -
あっと驚く鮮やかな幕切れもあれば、これはどういう意味だろうと頭をひねる結末もあり。1900年代前半英国の空気をよく伝えて、日本を始めアジアが舞台の話もあり興味深かった。
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時代背景が古すぎてスパッと頭に入って来ん
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元祖・掌編小説。