カジュアリーナ・トリー (ちくま文庫)

  • 筑摩書房 (1995年1月1日発売)
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Amazon.co.jp ・本 / ISBN・EAN: 9784480030061

みんなの感想まとめ

人間の複雑な心理と予測不可能な運命を描く短編集で、特異な環境下でも人々が抱える内面的な葛藤や罪悪感が浮き彫りにされています。各物語は、帝国主義の影響下にあるジャングルや植民地を舞台に、愛や裏切り、臆病...

感想・レビュー・書評

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  • 時は列強ひしめく帝国主義の時代。舞台は英国植民地のジャングルの奥の奥……。そんなあまりにも特殊な環境においてさえ人間は、蒙昧に振りまわされ、罪過に手を染め、そして破滅に身を焼かれることとなる。

    「手紙」
    誰にも一切ばれることなく自分たちの世界だけで情事を重ねてきたひと組の男女。ひとつの事件がその世界で起きる。そして永遠にその世界の中に封印される。

    「園遊会まで」
    家族いっしょに着飾って、一台の車に乗り込んで、さぁみんなで出かけよう、園遊会に! ……しかし出発の直前、長女の口から驚天動地の事実が告白される。

    「奥地駐屯所」
    故郷を遠く離れ植民地ボルネオ島の奥地にて公務に励むふたりの英国人。しかしこのふたり、ソリがまったく合わないのだ。若い方の役人の言動は日に日に目に余るものとなっていってそしてついに、……事件が起きる。

    「環境の力」
    夫の仕事のためジャングルに居を構えて暮らすイギリス人の若い新婚カップル。エスニックな風物で彩られた彼らの住まいは、愛の喜びと未来への希望に満ち溢れていた。ささいなあやまちが過去から立ち現れてそのドアをノックしに来るまでは。

    「東洋航路」
    結婚20年にして現在夫が真剣に思いを寄せている相手は自分よりも8歳も年上の人妻だった。怒りに駆られた女は、帰国して離婚訴訟を起こすため長距離客船に乗り込む。そこで彼女は、ひとりの乗客がかつて捨てた女から’呪い’を掛けられて瀕死の状態にあるのに立ち会うことになる。

    「臆病者」
    現地人とのハーフであることに強烈な劣等感を抱きその事実をひた隠しにして生きてきた通訳の男。あるとき自分が乗っている船が転覆して濁流にのみ込まれたのだが、男は顧客を見捨てて逃げ出してしまった。そして今度はその時の自分の臆病さかげんが喧伝されるのが怖くなって、耐えざる良心の呵責に襲われだす。

  • 『アー・キン』と並ぶ愛読書。モームの短編が大好きだ(長編と戯曲はフツー)。自分の道を暗中模索しているとき、単におもしろいものが読みたいとき、常に頼りになる存在である。
    モームは人間性というものに非常に興味を抱いていた作家だった(ま、作家ならみなそうかもしれないが)。人生の有為転変や人間の意外性に対する著者の興趣が伝わってくる、そこが彼の短編の魅力であると思う。平たく言うと、人生とは、人間とは、なんとおもしろいのだろう!と思わせてくれる、ということだ。もちろん、ストーリーテラーとしての腕は抜群。
    ところで訳者の言葉だか帯だかに、異常な状況における異常な心理、異常な事件、みたいなことが書いてあったが、これはぜんぜん当たっていない。舞台こそアジアの僻地(←ごめんなさい)だが、描かれている物語はこれ以上ないほど普遍的である。

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