『りぼん』のふろくと乙女ちっくの時代 たそがれ時にみつけたもの (ちくま文庫)

  • 筑摩書房 (1995年1月1日発売)
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Amazon.co.jp ・本 / ISBN・EAN: 9784480030177

みんなの感想まとめ

本書は、少女まんが『りぼん』のふろくを通じて、1970年代から80年代にかけての消費文化の変遷を探求しています。著者の洞察により、少女たちの内面がどのように表現され、時代を超えて影響を与えているのかが...

感想・レビュー・書評

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  • 恩田陸と大塚英志の対談の中で言及されていた本。ものすごい衝撃。ずっと横目で見てきた少女まんが。その中の『りぼん』のふろくが来るべき80年代の消費文化(田中康夫いわく「金ピカの80年代」)の序章だったという発見。「モノの消費から記号の消費へ、「進歩」から「差異化」へ、男の子の夢から女の子の夢へ。『りぼん』のふろくがファンシー化を開始する’74年は高度経済成長の時代と消費社会の時代のちょうど境界に位置する時間である。」(P66)1991年に出版された「たそがれ時にみつけたもの」が1995年に文庫化されたものです。文庫版のあとがきが宮代真司で「乙女ちっく世代=新人類世代」と当時の「ブルセラ世代=ポスト団塊ジュニア世代」の対比という上書き感も、さらに時代変化を感じさせます。しかし、本書にある手塚治虫を始祖とする男子まんがのドラマツルギーを少女まんが持ち込んだ萩尾望都たち団塊の世代の作家と対比させて、少女のモノローグを際立たせる陸奥A子たちのひとつ下の世代の乙女ちっく派の表現に評価を与えているのは、とても新鮮に感じました。少女たちの内面語りは変態少女文字に繋がり、時代を超えてインスタやTikTokの源流にも思えたりしました。なにしろ自分の同世代の女子の心の内側をちゃんど理解した気(?)になったりして…いまさらながら。本書を読んだ直後に、最近、田淵由美子の作品集を改めて買った女性と「フランス窓便り」の話で盛り上がったのには驚きました。そういえば、もう終わっちゃったけど丸善の「りぼん」のふろくのポップアップショッップ、覗いておけば、もっと楽しめたかも…

  • 元著「たそがれ時に見つけたもの」(太田出版)の文庫化。
    巻末に追加された宮台真司の解説は示唆に富む

  • 大塚英志の中では、80年代と少女カルチャーというのは2大(おそらく)氏の個人的感傷を最大に引き出すものなので、この本もいわゆる民俗学系と絡めた文学論や漫画論、漫画論などよりは大きく筆が走り、また何かを得るみたいな内容にはなっていない。ただ、そこには80年代消費社会の到来を、自分の可能性として感じた女性たちへの深く、そしてどこか自分と重ね合わせるような鋭敏な共感がある。ちなみに、例のごとく宮台真司の解説がとてもクリアで良い。宮台真司の語る大塚英志は、その良い部分も悪い部分も非常に鮮やかに浮かび上がってくる。それは彼らが同世代であり、ある一部分に共感があり、ある一部分には反発があるからでしょう。この本に関するもっともクリアな宮台真司の指摘は、以下です。

    女の子たちが心の襞を幾重にも折り畳まないと大人になれないのは、なぜなのだろう?この問いは、一方で、断念や屈折のおおもとになっている「少女幻想」がどのような質のものなのか、他方で、そういう「少女幻想」を決してそのままではたちゆかせない「大人社会の現実」とはいかなる性質のものなのか、という二種類の新たな問いを私たちに差し向ける。大塚氏がいま言った二種類の問いに答え切っているとは思わないが、それはむしろ本書を読んだ後続する人間たちが、これから答えていくべき問いなのだろう。

  • すごい一冊。教えてくれた佐藤くんに感謝したい。
    1970年代後半から1980年代前半の『りぼん』、それもふろくが特別な価値を持っていた時代を読み解く。本来『りぼん』は低学年向けの少女まんが誌だが、この時代は高学年の読者からも支持を得ていた。生年にして1950年代後半から1960年代前半の者がこれにあたる。当時は高校生〜大学生の読者もいたのだった。
    で、
    この時代がちょうど「モノ」の消費から「記号」の消費への変換点と重なるというのが本誌の主題。そして『りぼん』の付録が現実のものになっていくに連れ、『りぼん』は役割を終えて元の低学年向けまんが誌に回帰していくことになる。
    『りぼん』の世界を現実化したものとして「Pink House」が取り上げられているけど、これには唸ってしまった。その通りだと思うのだ。
    この本の口絵で、当時の付録が紹介されているのだが、うちのかみさんは「全部持ってた」という。さらに彼女は20代後半にPink Houseに染まった。「ピンクハウスは女の子の永遠の夢」なんだそうだ。
    かく言うボクも高校〜大学時代、『りぼん』を楽しみにしていた。
    ボクの大切なものは今でも小椋冬美のクラッチバッグに入っている。

  • 陸奥A子とかそのあたり

  • 1970年代の半ばから80年代の初めにかけて、雑誌『りぼん』で陸奥A子、田渕由美子、太刀掛秀子といった「乙女ちっく」と形容される新人作家たちが活躍し、彼女たちの手になる「ふろく」が読者の間で高い人気を博すことになりました。本書は、こうした現象の意味を読み解くことで、その後に続く80年代の消費社会を準備したことを明らかにしています。

    少女マンガは、萩尾望都、大島弓子らの「24年組」の活躍によって、少女の内面を描く文学的なテーマと高度なドラマトゥルギーを獲得することになりました。これに対して、その後に続く「乙女ちっく」世代の描き手たちは、一見保守的な「少女」の世界に閉ざされているように見えながら、外の世界へとつながる「彼」には少なくとも分かってもらいたいという志向を持っているというただ一点において、「少女」的なものを守りつつ、それを現実に向けて開く回路を持っていたことを、著者は評価しています。

    他方で、こうした「乙女ちっく」派のイラストがあしらわれた『りぼん』のふろくは、かわいいものに惹かれる「少女」たちの身の回りを彩るファンシー・グッズとして歓迎されました。著者はこうした彼女たちの延長上に、モノの消費から記号の消費へと移っていく兆しを見ようとしています。

    『物語消費論』(角川文庫)で取り上げられた著者の記号消費論の、前史ともいうべき時代にスポットを当てた論考です。

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著者プロフィール

大塚 英志(おおつか・えいじ):大塚英志(おおつか・えいじ):1958年生まれ。まんが原作者、批評家。神戸芸術工科大学教授、東京大学大学院情報学環特任教授、国際日本文化研究センター教授を歴任。まんが原作に『アンラッキーヤングメン』(KADOKAWA)他多数、評論に『「暮し」のファシズム』(筑摩選書)、『物語消費論』『「おたく」の精神史』(星海社新書)、他多数。

「2023年 『「14歳」少女の構造』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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