森鴎外全集 <11> ファウスト (ちくま文庫)

著者 :
  • 筑摩書房
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感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (882ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480030917

感想・レビュー・書評

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  • 難しい…

  • 新潮文庫の「ファウスト」は読んだけれど、森鴎外の訳は初読でした。やっぱ久しぶりに読むと面白いな~。なんか、讃美歌だかキリストのお祈りの文句?を、お経的な感じで翻訳してるところは、なるほどなーと感心した。たしかにこれは、明治人の読み物としてはカルチャーギャップがありすぎるよね。
    前編は、メフィストの魔術で若返ったファウストが、町娘のグレートヒェンと恋愛します。これで幸せに終わればよかったのに、グレートヒェンの兄を殺し、母を殺させ、しまいにはグレートヒェンを、はらませてしまう。はたから聞くと、ダメンズっつーか「なんだこの男?!人間のクズやん」ですが、真面目で高尚すぎる精神をもつファウストの苦悩たるや。そこが見ものなんですな。ブロッケン山での、魔女やら魑魅魍魎、上から下へ入り乱れてのお祭り騒ぎは単にひたすら楽しかったです。
    後半は、なんかもう非哲学人の私にはちんぷんかんぷんでしたが(何年か前に初読したときも同じこと思ったw成長してない)、思想の応酬とか、宗教的な議論が中心です。
    神話の神々が自分の性格に基づいた持論を展開してます。あんまり神話詳しくないから、このへんは「へーそーなんだー」と読み流した。
    で、ファウストの魂は(なんやかんやあって)天の同情を買って、結局天使に救われるのですが(すっごいご都合主義だよね?!)、いわく、努力するものは救われる云々…。

    メフィストが天使をみて、「めっちゃ嫌いだけどめっちゃかわいい。キスしたい」とか言ってるのには少し萌えた(笑)

  • 道徳を打ち捨てても、ものの起源を追い求めるファウスト。
    ひたむきに努力するものを許し受け入れる神。

    初めて読んだ時は魑魅魍魎に目をくらまされて話の流れをつかむのに苦労したけれど、再読したところこの二つが一貫とした軸になっているように思えた。

    美化された過去、古代ギリシア。
    醜く争う現代。
    そして、技術によって自然をも制覇する近未来。
    ファウストは三つの時代を遍歴し、ようやく生に満足する。
    それは、彼があくまで人として神のような俯瞰的な視点で世界を見たゆえだろうか。

    鴎外の訳は、ところどころ古い表現で分かりづらいが、それゆえに雰囲気があり味わい深い。当時は逆で、軽すぎる訳と知的な方々からひんしゅくを買ったらしい。本書ではこの事について鷗外自身が語ったものもまとめられていて、興味深い。
    背景を知って、ドイツと日本の文豪の競演! なんて肩ひじはらず気楽に手に取ればいいんじゃないかしら、と思えるようになりました。

  • ゲーテ『ファウスト』森鴎外訳。

    ちょっと江戸っ子調で粋な訳文。

    この本を持ってヨーロッパを放浪し、

    ベルリンで森鴎外記念館、フランクフルトでゲーテの生家を訪れた。


    「止まれ、お前は美しいから」

    そう呼ぶしかないような、最高の「刹那」を求める旅こそ人生。

    また旅に出るときはきっと、この本を持っていく。

  • 他の翻訳家が訳した同作品を読みましたが、森鴎外訳のこのファウストが一番読みやすく、綺麗な日本語だと思います

    漢字の使い方は今とは違うのがまた、時代を感じさせてくれます

    ただサイコロ本なので分冊販売してほしいかな

  • 森鴎外は、ゲーテのファウストを初めて日本語に訳しました。

    これは最初の翻訳であるにもかかわらず、現在でも高評価です。

    鴎外訳は、ちくま文庫版「全集11」ですが、

    岩波文庫版では森林太郎の名のみでゲーテの名はなく、現代日本文学に分類されています。

    文庫の赤帯(海外文学)で全2巻出されているのは、ドイツ文学者相良守峯訳です。

  • 他の訳者の訳を読んだことがないので何ともいえないが、「霹靂」と書いて「はたたがみ」と読ませるような難解さはあるものの、文章としては分かりやすい訳であると思う。ファウストのテーマはキリスト教崇拝、マリア崇拝であるそうだが、文中にはギリシャ神話の登場人物やエジプトの悪魔なども、キリスト教と共存するものとして登場する。その辺り、絶対的な善悪という価値観がある訳ではなく、キリスト教も一つの宗教、一つの文化に過ぎないような感じに描かれてるように思える。(その文化宗教の源泉として「母の国」があるようだが、「母の国」については詳しくは書かれていない)

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著者プロフィール

森鷗外(1862~1922)
小説家、評論家、翻訳家、陸軍軍医。本名は森林太郎。明治中期から大正期にかけて活躍し、近代日本文学において、夏目漱石とともに双璧を成す。代表作は『舞姫』『雁』『阿部一族』など。『高瀬舟』は今も教科書で親しまれている後期の傑作で、そのテーマ性は現在に通じている。『最後の一句』『山椒大夫』も歴史に取材しながら、近代小説の相貌を持つ。

「2022年 『大活字本 高瀬舟』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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