私はそうは思わない (ちくま文庫)

著者 :
  • 筑摩書房
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本棚登録 : 274
レビュー : 24
  • Amazon.co.jp ・本 (302ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480031532

感想・レビュー・書評

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  • 「100万回生きたねこ」を描いた人。

    私が小学校2年生の時に、母が「よい絵本だ」と聞いて私に買ってくれた。
    私は読んでみたけど、別に良い絵本だとは思わなかった。
    よい絵本がなんだかよく分からないし。
    愛とか死はもちろん「猫が死んでかわいそう」とかも思わなかった。
    みんな猫が死んで悲しんでるのに、猫は悲しまないで、なんだか猫に怒ったらいいのか、猫が死んだことをやたらに悲しむおばあさんや海賊に怒ったらいいのか、気持ちの持って行き場がよく分からなかった。
    だから、何も感じていないような気持ちになった。
    白い猫に死なれて、オス猫が生き返らなかったことはすごく当たり前のことのようにも思えた。

    大きくなって、いわゆるサブカルっぽい友達が「100万回生きたねこ」やばい!と言い出したので、そうか、あの本はやばい(良い)本なのかとか、なんとか。思うようになっていた。

    佐野洋子さんのことは「100万回生きたねこ」でしか知らない。
    勝手にすみれ色のおばちゃんを想像していた。
    柔らかい、でも人生を透徹した鋭い目を持っている人。

    でも、この本読んだら全然違った!
    鋭い目じゃなくて、鋭い心を持ってた。
    決して柔らかくなんかなかった。
    このエッセイを読んで、佐野洋子さんが幼かった私を諭そうとして「100万回生きたねこ」を描いたのでないことはよくわかった。
    まだ子どもだったときの私には佐野さんの動揺が伝わっていたのかもしれない。
    死んじゃうって…(オロオロ…)
    死んじゃうと悲しいって…(オロオロオロオロ…)
    佐野さんはそんな風にして自分の心伸びやかいっぱいに絵本を作ってたのではないか。
    心伸びやかは決して、健康なことではない。
    人が感じることには不健全なこともたくさんあるからだ。
    でも、それが人だろ。

    私が驚いたのは、佐野さんがあまりにもたくさんの子ども時代の記憶を抱えていることである。
    私は、きっとエッセイを書けと言われても、こんなにたくさんの子ども時代を引っ張りだせない気がする。
    愚鈍に生きていたのかもしれない。
    でも、佐野さんが言うように、子どもの頃の私は毎日懸命だったな。
    自分でも知らないことだったけど。

    「100万回生きたねこ」に今の私が初めてであっていたら、
    「何かを感じなくてはいけない」ことに必死になったかもしれない。(良い本だって言われてるのを知ってるから)
    子どものときに初めて出会えて、漫然と感じるだけの感じ方で良かったと思う。
    あの頃、出会えて良かった。

    それがたぶん私の精一杯の感受性だったのだから。それでいいのだ。

  • とにかく読んでいて清々しい。著者の描くイラストレーションのように力強く潔く綴られている。「愛は身近にいるものをいつくしむところから生まれて、それは実に不公平なえこひいきで、美意識すら変えるものなのだ。」という、犬の桃子さんへの愛に頷き(うちの猫も短足でタヌキに近い)、幽霊の寿命の研究をしている人との話には吹き出してしまった。エネルギッシュでエリートな幽霊の話をもっと読んでみたい気もする。肩の力がすーっと抜けていくような温かみが感じられるエッセイ。

  • 2017.1月。
    痛快。
    こんな強さを持って生きていけたら。
    息子さんとの関係がいいんだよなあ。 .

  • 54「子供は月を鑑賞したりしない。月の光が見せるものを見ている。」
    165「(…)初めて見た雪は決して忘れないのだと考えた。(…)その時、私は、雪の中にいる女の子は、とてもかわいいもので、だれかが私をそう思うべきだと思った。」
    すごいな。私の友だちはカメラが好きで、そういう一瞬を写真にしてくれている。ありがたい。つけあがる。

  • 2014 3/2

  • 力のあるエッセイでした! やっぱし戦争を経験した世代の人の書く本というのは…戦後とか知らない人が書いた本よりかはるかにパワーに溢れている…そんな感慨を抱かざるを得ない本でしたね。

    ヽ(・ω・)/ズコー

    著者のエッセイはこれまでも何冊か読んでいますけれども、いくつか重複している話がありますね。まあ、いいですけれども…

    エッセイについての感想って難しいんですけれども、なんというか…物質的に豊かになっていく日本。その中で生きる日本人の精神の変質というか…そういうものをかなり危惧されておられましたね、著者は。そして、著者が危惧した通り、現代日本は沈没に向かっているかのような…そんな社会情勢だと思うのは僕だけでせうか…。著者の先見の明には、してやられた感じが拭えませんね、僕などは。今後、日本はどうなっていくのでせう…そんな不安な気持ちにさせられた著書でありました。おしまい。

    ヽ(・ω・)/ズコー

  • 佐野洋子のエッセイは、ファンは多いと思う。
    なぜだろう?

    きちんと、物事に向き合うという姿勢が感じられるからかもしれない。
    斜に構えることなく、開き直るところは、しっかり開き直ったり、
    感じたことをストレートに表現したり。

    そのあたりが共感を生んでいるのかもしれない。
    彼女が遺してくれたものに感謝です。

  • 題名からしてもう、生きる力をもらえる感じ。
    女の20代以降は変化ばかりで、でも気を遣わなきゃいけないのは変わらなくて、苦しくなってしまうのだけど、
    私は私でいいんだと、作者のエッセイを読んで、軸を持ち直す感じ。

  • 『私はそうは思わない』と言うのはなかなか難しい。

    言えば角が立つし、そういう自分に確固たる自信もない。
    気持ちなんてすぐ変わっちゃうかもしれないじゃん。


    でも『私はそうは思わない』の蓄積がその人を形取り個性を浮かび上がらせる。

    毒のない人にはリアリティを感じない。
    毒こそその人、と思えば罵詈雑言も楽しい。



    殺菌しすぎの世の中で泥遊びする楽しさを佐野洋子の中に見いだす。

  • 佐野さんのエッセイを読むと、こころがすっとするし背筋がのびる。

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著者プロフィール

1938年、北京生まれ。絵本作家、エッセイスト。おもな著作に、絵本『100万回生きたねこ』『わたしのぼうし』、童話『わたしが妹だったとき』、エッセイ『神も仏もありませぬ』など。2010年没。

「2019年 『はればれ、お寿司 おいしい文藝』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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