甘い蜜の部屋 (ちくま文庫 も 9-4)

著者 :
  • 筑摩書房
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感想 : 97
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  • Amazon.co.jp ・本 (544ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480032034

作品紹介・あらすじ

少女モイラは美しい悪魔だ。生まれ持った天使の美貌、無意識の媚態、皮膚から放つ香気。薔薇の蜜で男達を次々と溺れ死なせながら、彼女自身は無垢な子供であり続ける。この恐るべき可憐なけものが棲むのは、父親と二人の濃密な愛の部屋だ-。大正時代を背景に、宝石のような言葉で紡がれたロマネスク。

感想・レビュー・書評

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  • 森茉莉の描く世界観(美しくてリッチで、どこかフランスの雰囲気がする甘ったるい自己の世界)が大好きなのだけど、ちょっと長くて飽きた。
    ねっとり纏わりつく美貌、天性の魔力なんかが胸焼け。
    物語よりも森茉莉のユニークな性格や読んでて恍惚とする審美眼がつまった後書きやエッセイのほうが断然好きだな。

  • 三島由紀夫に「官能的傑作」と賞賛されたというが
    たしかにエロティックな文学である

    森茉莉さんがこの膨大なロマネスク物語を
    還暦を過ぎてから書かれたということにわたしは興味を覚えた

    モイラという変わった名前の美少女がヒロイン
    媚態と香気が天性のもので悪魔的な美貌
    なんていう女性がいるかどうかはわからないが

    少女が女性になってもわがままで、こどもっぽい
    自己中心的に生きていてもそれが通ってしまうなんて
    そんなこと不可能である現実を知っていれば
    それを描ききってしまう森茉莉さんのふてぶてしさがおもしろい

  • 森茉莉版「杏っ子」。

    ここまで無口でここまで魅力的な女性(という言葉がそぐわないぐらいに幼い女)を小説で読んだことがない。

    自分としてはすごく時間をかけてゆっくりと読み勧めたんですが、(先を急がせない何かがあった)後記に10年を掛けて執筆に取り組んだと書いてあり納得。飴を舐めるみたいにゆっくりと味わう小説です。

  • ずっっっっと読みたかった本!!きめの細かい表現が本当に秀逸。夢中になって読み進めちゃうけど、ふと冷静になって離れてこの本を見てみると、登場人物全員があまりにも他人の機微に敏感で、それがまた面白い。
    たぶん実際に声に出してる会話ってかなり少ないのに、読者という視点の特権で、彼らの中で移ろう季節や心を余すことなく堪能できてしまう…すごい……

  • 一言で言うと、どうしようもない官能小説。
    ただかなり耽美的で、徹底された言い回しと入り組んだ洞察が森茉莉を思わせる。女の匂いとは如何程か。少し考えたくなる。


    果たして私はこの年齢で「甘い蜜の部屋」を読んで良かったのだろうか。
    言語化された複雑な洞察は少なからず私に影響する。この疑問だけは残ったまま消えなかった。

    それくらい、日常に潜む無限の「無意識」が鏤められてる。これほど緻密に再現して描くってただものじゃない。

    私は鴎外よりも森茉莉の方が断然好みだということを、この分厚い本から実感させられた。

  • 森さんのエッセイならいくらか読みましたが、このような小説はあまり読んだことはありませんでした。旧仮名遣いは彼女の古風で美しい文章を綺麗に磨き、修飾し、そしてめいいっぱい表しています。貧乏だってグルメな料理たちはいつもおいしそうだ。

  • ピンとこない。
    上記の理由もあってちょっと長く感じる。

    かつての封建的男性社会において、
    「女性とは・・・である」といったパターナリズムの押しつけ的前提すら
    成立できないモイラという女とその魅力(もしくは魔力)に吸い寄せられている男たち。
    唯一彼女をコントロールするができる父親との関係性は、
    ある種、肉体的エロティシズムを超えて、精神的占有欲のもつれ合いといった様相を見せていく中で、
    モイラに囚われた男たちは悲しい結末を迎える。

    どうも男側からは釈然しない。
    たぶん女性が読んだらこう思うであろうという小説に
    村上龍の「限りなく透明に近いブルー」や大鶴義丹の「スプラッシュ」などを
    読んだ後と同じような感じだと思う。

    そんな訳で評価は低め。
    性別が変わるとまた評価はがらりと変わるかも…。

  • 類ない美貌と皮膚と香気を持ち無意識に男達を絡め取る少女、藻羅。一少女としての或一つの理想型だと思うが、藻羅をモチーフに人形を造ってみたいか、と、問われるならば、「否」だ。それは、藻羅の腰の部分の描写に原因があると思う。少女体型に成熟した「腰」は似合わない。読んでいて、ワタシは藻羅より、一部、二部、三部全ての終わりに微笑っている魔の創造主であり共犯者としての父「林作」に非常な興味を覚えた。

  • モイラ!モイラ!
    おっかない女だな。

    今はやりの“肉食系”なんて、比較にならない本能の肉食獣。

  • 森茉莉の書く文章って、リズムがひどく女性的なのに、目線が男性的なんですよね。独特なリズムがあるから、好き嫌いが分かれるかもしれない。魔性の女モイラ(これ日本人ですよ!)に翻弄される男達の話。もてる女は同性から嫌われるって……つまりモイラじゃないの? みたいなぐらいに完璧なファム・ファタル。根っからの自己中(というと、少し語弊のある気もするが)で、自分とパァパ以外は眼中に無し! という感じ。これくらいの方が、いっそ清々しいのかしら。

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著者プロフィール

1903~87年、東京生まれ。森鴎外の長女。1957年、父への憧憬を繊細な文体で描いた『父の帽子』で日本エッセイストクラブ賞受賞。著書に『恋人たちの森』(田村俊子賞)、『甘い蜜の部屋』(泉鏡花賞)等。

「2018年 『ほろ酔い天国 ごきげん文藝』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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