百日紅 (上) (ちくま文庫 す 2-8)

著者 :
  • 筑摩書房 (1996年12月1日発売)
4.12
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感想 : 143
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  • Amazon.co.jp ・マンガ (358ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480032089

感想・レビュー・書評

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  • 杉浦日向子は江戸風俗の著述家という認識しかなく、漫画家だったのかと、この本で知った。
    長屋の北斎の部屋の描写が妙に細かく、流石江戸風俗研究家だなと関心。また北斎を中心とした当時の絵師や版元、戯作者が沢山登場してて面白い。

  • (アニメ化映画を観て)


    杏ちゃんが好きなので観ようと目論んでいました。

    「原作のあるものは先に原作に目を通してから」が私の中のユルめルール。
    原作漫画上下巻と併せてエッセイを一冊読んでから鑑賞しました。
    もうコレが正解!
    アニメ化映画はダイジェスト版ですので、ガイドブックとして原作を読んでいた方がより楽しめます。

    しかし映画も捨てたものではなく。
    勢いも彩りも映画にはもちろん勝てませんし、オリジナルエピソードも見せ方も入っていたので、情景が胸に迫ります。
    それにしてもこの原作漫画、

    そこはかとない色気があるのですよ。
    首すじに生温い息づかいを感じるような。いやはや。

    現代で読んでる自分が、江戸で生きているのではないか?という錯覚を起こしてしまうような親和性があります。
    いま居る此処の在りし日の姿が空気が、纏わりついてくるような。

    私の中も外も、このニ、三日前後は江戸に染まっています。

    (2015/05/13)

  • 杉浦日向子せんせーの『百日紅』、北斎と娘のお栄ちゃん周辺のお話。紆余曲折あってようやく到達。

    私は元々江戸風俗や、そもそも歴史についてあまり興味がもてなかったりする。
    (説明が難しいですが、知的好奇心を満たすためだけに歴史を知ることは好きなのに、「歴史上の人物で好きな人は?」ともし訊かれたならば「会ったことないのに好きとか嫌いとかわかるわけねえだろ!」などと思ってしまう。我ながらロマンのかけらもないね笑)

    転機になったのは今年の2月。
    大映のオールスター時代劇『忠臣蔵』をたまたまBSで観た。勝新や雷蔵が出てるやつです。

    その5日後。
    ATG映画にハマってたので、松本俊夫監督の『修羅』という映画をたまたまレンタルして観た。これは『四谷怪談』などと同じく忠臣蔵のスピンオフで、原作は同じく鶴屋南北の『盟三五大切』(かみかけてさんごたいせつ)。

    さらにその1週間後。
    『大江戸繁盛記 四谷怪談』という鶴屋南北の番組をたまたま観た。出演者は『修羅』に出てた唐十郎、荒俣宏(日向子せんせーの元夫)ほか。

    7月には橋本治さんの『ひらがな日本美術史』を読んだ。ちなみに橋本治さんの卒論テーマは鶴屋南北です。

    その数日後、朝井まかてさん原作の『眩』のドラマを観た。『百日紅』と同じくお栄と北斎と善次郎のお話。

    元禄→文化文政→昭和元禄、70年代日本映画→韓国映画……と筋道がついて、俄然興味がかきたてられる。

    さらにダメ押しで、『エスパー魔美』にハマっていたら、『百日紅』の映画は原恵一監督……。

    『MANGA都市 TOKYO展』にも『百日紅』原作、アニメ共々ちゃんと展示されていました(東京タワーとセーラームーンを見るのが目的で行ったのに!笑)

    とまあ、元々読みたかった作品ではあったけど、ここまで色々と重なって来れば「読むしかないな」と。


    日向子せんせーについては、漫画家だって実はしばらくの間知らなかった。『お江戸でござる』が放映されてたのは高校生〜大学生の頃ぐらいか、たまに観てはいたんだけど「江戸風俗研究家(そしてかわいい)」との認識しかなかったです。なんでだ……桜金造に目を奪われてたからか?小山ゆうえんち〜……意外ね!

    日向子せんせーの作品について興味を持ったのは、ニューウェーヴの漫画家(大友克洋、諸星大二郎、高野文子…)をちゃんと読むようになってからだから、わりと最近ですね。
    一般的に日向子せんせーはニューウェーヴとは言われないのかな?とは思うけど、同時代だし、人脈的にも接点がある。そもそもニューウェーヴの定義もあやふやだし笑、ニューウェーヴっつって別に良いのではと思う。
    高橋留美子なんかもメジャー少年誌だからニューウェーヴって言われないけど、近いですよね。

    ちくま文庫版の折り返し部分に書いてある、同文庫から出ている他の漫画家が面白い。
    高野文子、吉田秋生、吾妻ひでお、やまだ紫、滝田ゆう、とり・みき、近藤ようこ、畑中純、杉浦茂。
    「あなたたちもこういう漫画家が好きなんでしょ?」「こういう人たちを読むといいよ」と言われている気分になる笑。

    長くなったので、内容についてのレビューは下巻にて。

  • 「散れば咲き 散れば咲きして百日紅」
     多分江戸のその辺へ行って、取材してきたんぢゃねえか程度の、歴史考証とかでなくて 当時の空気みたいなのが、全篇にむるむるしてゐる。
     北斎先生やその娘お栄(パパからは一貫して「アゴ」と呼ばれる)の才能ぷりや為人が描かれるのの次に、国直の描写が良い。(彼と同郷の人なのに私はまだ龍を見たことが無い)
     飯が美味しさう。

  • 最初のページから一挙に江戸時代へとタイムスリップしたかのように思えるのは、まさしく漫画という媒体の持つ大いなる力であろう。葛飾北斎のことなど、その名前と有名な作品くらいしか知らなかったのだが、おかげで北斎の人となりや、日常の暮らしぶりがひどく身近なものとして感じられるようになった。

  • 買ってみて知った、これもアニメになってるんだって(笑)。

    葛飾北斎とその娘お栄、居候で絵師見習いの善次郎(のちの渓斎英泉)の三人を中心とした江戸模様。

    周囲の人々とのユニークな関係を始め、せりふや所作の端々に溢れ出す江戸の野暮と粋、ひとコマいちシーンの迫力には圧倒され・・・・いやいやいや、独創の大傑作に対して語る言葉なし。以上。

  • 江戸時代にタイムスリップしたようなマンガだという評価を読んで、買ってみた。冒頭「番長の生首」という短編から始まる。文化11年厳冬の江戸という時代設定。明烏泣く早朝の番長通りが先ず描かれる。ほとんどが平屋の武家屋敷が続くなか、ぽつんぽつんと半鐘が高くそびえ、遠くに山並みも見える。人々の防寒着は羽織に褞袍をまとい、女性は着物に広袖をまとう。素足に草履。かなり足が冷えただろうと思う。葛飾北斎55歳。布団を纏って寒さを凌いでいる。北斎の三女お栄、22歳。善次郎(後の英泉)23歳の三人を中心に話が進んでゆく。マフラー代わりの手ぬぐいみたいなものや、火鉢の描き方、長屋の描き方など、確かに「見てきたような江戸」が描かれていた。

    なんと今年「河童のクゥと夏休み」「カラフル」等で大好きな原恵一監督によってアニメ化されるらしい。北斎とお栄の関係は、新藤兼人監督の「北斎漫画」で緒形拳と田中裕子が演じていて気になっていた。愉しみである。
    2015年3月13日読了

  • 犬と人間と鳥は別々の景色を見ている……
    そうさ 俺ァ自在に景色を見てえのよ
    人間の目玉だけじゃ物足りねえ

  • 漫画家・江戸風俗研究家であった杉浦日向子のコミックである。
    葛飾北斎、その娘お栄、弟子の英泉らを中心に、江戸の世界を妖しく艶やかに鮮やかに描き出す。

    杉浦日向子は、1958年、日本橋の呉服屋に生まれた。時代考証の確かさや浮世絵を下地にした画風が強みの漫画家である。『合葬』や『百物語』、本作などで注目を浴びつつも、35歳で漫画家としての活動に終止符を打ち、以後は江戸文化研究家やエッセイストとして活躍。46歳で癌のために逝去した。一時、荒俣宏と結婚していたことでも知られる。

    惜しまれつつも漫画家として筆を折ったのには理由がある。若くして、免疫系の疾患に蝕まれ、漫画を描ききる体力がなくなったのだ。ただ、生前は、「隠居生活」と称して、暗い影は面に出さず、漫画家としての活動をやめた後に手がけた著作もユーモア漂うものであった。

    本書は長い間、半積ん読本になっていたのだが、今回、縁があって全体を読み返し、唸らされた。
    シンプルな線の妖艶さ、がらりとタッチを替えた墨絵風の絵の力強さ。
    浮世の苦さを知りつつも、ときに楽しく、ときにじたばたと、己の生を生ききる市井の人々の描写の凄み。
    ときに異界と交わり、夢かうつつか判然とせぬ世界に現れる妖かしや幽霊の気配。

    浮世絵や都々逸が、さりげなく引かれ、作品に花を添えている。自害する前、武家のお嬢様が膝下を紐できゅっと縛る(裾が乱れて局部が露わにならないように)場面、ほおずき市の縁日の様子、芝居のせりふをもじったひと言、など、豊富な知識がありながら、それを見せびらかすのではなく、いささか素っ気なく織り込んでしまう。なぁに、気がつく人がいたら気がつけばいいんですよぅと言わんばかりの江戸の粋。
    伝法で鉄火なお栄に作者の影がちらつく。

    枕絵なども出てくるので、そういった意味でも「大人向き」ではあるが、それより何より、全体に漂う機微はあまり若い人向きではないかもしれない。

  • 皆川博子の『みだら英泉』を読んで久しぶりにマイブーム浮世絵師がきたので、早速同じく英泉と北斎とお栄ちゃんが登場するこちらを読んでみました。

    杉浦日向子さんは実はマンガは『合葬』くらいしか読んでいなくて(しょせん幕末おたくだから)どちらかというとNHKの「お江戸でござる」の印象のほうが強かったりするのですけども、さすが江戸風俗研究家、時代考証はばっちりで安心だし、なにより作品そのものが「粋」。

    実在の浮世絵師たちがたくさん登場するものの、大げさな伝記っぽいものではなく、1話完結の軽妙なエピソードばかり。おそらく実際に江戸で起こったのであろう怪談や事件をからめてあって、これ読んだだけでちょっとした江戸通になれた気がする。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「なにより作品そのものが「粋」。」
      そして、揺るぎない愛情が、、、
      「合葬」の切なく辛いけど、好きな作品です。。。
      「なにより作品そのものが「粋」。」
      そして、揺るぎない愛情が、、、
      「合葬」の切なく辛いけど、好きな作品です。。。
      2014/07/05
    • yamaitsuさん
      「合葬」は本当に美しい作品ですよね。蝉の羽化のシーンとか今でも思い浮かべるだけで涙ぐみます。
      「合葬」は本当に美しい作品ですよね。蝉の羽化のシーンとか今でも思い浮かべるだけで涙ぐみます。
      2014/07/07
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著者プロフィール

杉浦 日向子(すぎうら・ひなこ):1958年、東京生まれ。1980年、「通言室之梅」(「ガロ」)で漫画家としてデビュー。1984年、『合葬』で日本漫画家協会賞優秀賞受賞。1988年、『風流江戸雀』で文藝春秋漫画賞受賞。1993年に漫画家を引退し、江戸風俗研究家、文筆家として活動した。NHK「コメディーお江戸でござる」では解説を担当。主な漫画作品に『百日紅』(上・下)『ゑひもせす』『二つ枕』『YASUJI東京』『百物語』、エッセイ集に『江戸へようこそ』『大江戸観光』『うつくしく、やさしく、おろかなり』『一日江戸人』『杉浦日向子の食・道・楽』『吞々草子』等がある。2005年、没。

「2023年 『風流江戸雀/呑々まんが』 で使われていた紹介文から引用しています。」

杉浦日向子の作品

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