百日紅 (下)

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  • 筑摩書房 (1996年1月1日発売)
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Amazon.co.jp ・マンガ / ISBN・EAN: 9784480032096

感想・レビュー・書評

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  •  八年前(二〇一六)に『YASUJI東京』を読んで以来、杉浦日向子二作品目。『米澤屋書店』に出てきて、ちょうどうちにあったので読んだ。文化文政期の江戸が舞台と知り、大奥→写楽、の流れもあるし、読むなら今だ!と。上下巻。
     正直あまりよくわからなかったのだが、読んでしばらく経ってみると、わかるとかわからないとか言うよりは、確かに何かを摂取したという感覚が色濃く残っている。お栄ちゃんの無愛想な表情とか。お政さんも色っぽいけど弟子だし絵師なんだなあとか。北斎の(お栄以外の)息子や娘や、妻や。とぼけた顔して女好きの善次郎や。歌川さんとこの国直とか。火事見物が好きとか。

  • 107冊目『百日紅(下)』(杉浦日向子 著、1996年12月、筑摩書房)
    浮世絵師たちの群像絵巻、ここに完結。86年3月〜88年1月に発表された15作を収録。
    夢と現の狭間を揺蕩うような幻想的な短編が並ぶ。同時に人々の生活感も見事に活写されており、本当に江戸の町を覗き見ているような気持ちになる。
    クライマックスのない漫画なので、描こうと思えばいくらでも描けたはず。もっと続きを読んでみたかった。

    〈いっちゃったよ〉

  • 上巻に夢枕獏の解説がありその中でタイトルの百日紅の由来があかされている。下巻には解説が無く、何故上巻に解説を掲載されたのか、意味を知った上で下巻を読むとなかなか深い。

  • 葛飾北斎にはお栄という娘がいて、彼女もまた浮世絵師でした。このふたりを中心に、カッコいい江戸っ子たちの“粋”な生活が描かれています。漫画なんですけど、男も女も台詞が男前でジメジメしてない。生まれてきたんだから生きるしかないじゃありませんか。だったら誰よりもカッコよく、誇り高く生きようぜ。読みながら北斎の声が聞こえるようでした。

    江戸時代には厳格な身分制度がありましたが、北斎たちは皆生き生きしてます。彼らの心や想像力が無限だからです。これは誰もが平等にもっている本当の自由です。心は神様からもらった畑のような物で、どんな風に扱うのか、なにを育てるのかは一人ひとりに委ねられていると思います。よく耕した畑は豊かな実を結ぶでしょう。人生の日照りや嵐で枯れたって、また耕せばいい。土に合わないものを育てたら、また違うものを育てたらいい。心はどこまでも自由でどんな色にも染まる。それに過去にも未来にも宇宙にも、どこまでも行ける想像力があったら無敵です。本当に自由に生きることがこんなにカッコいいなんて。そう教えてくれる素晴らしい作品でした。

  • 江戸の町に雨が降る。
    雨の勢いや、漂う匂いや、音まで伝わってくる。
    その中、北斎やお栄が生きている。
    幽玄の世界との境界を時折越え、それらを絵に表す二人の天才は、世界をどのように捉えていたのだろう。少なくとも論理的に、知的に、とは真逆の、矛盾をそのまま捉えるような生き方だったのではないかと思う。

    漫画というものでしか表せないものもある、という当たり前の事を知らせてくれたすごい作品だった。

  • 怪談話や落語のようなオチやら、江戸の暮らしにはいろいろなモノが混じり込んでいる。北斎の末娘、猶との死別『野分』が切なかった。北斎が魔除けの為に絵を描く。父親の顔。

    • 地球っこさん
      松子ちゃん おはよう〜
      気に入っていただいてよかったです。ホッとしました。
      なんだかクセになるゾクゾクとした色っぽさも伝わってきたんだよね。...
      松子ちゃん おはよう〜
      気に入っていただいてよかったです。ホッとしました。
      なんだかクセになるゾクゾクとした色っぽさも伝わってきたんだよね。私ももう一度読みたくなってきました。手元に置いておこうかな。
      2024/12/10
    • 松子さん
      ちーちゃん、おつかれさまっ
      ゾクゾクした色っぽさってわかるぅ

      日向子さんの描く絵と話の内容がそう感じさせるのかなぁ。作品から感じ取るものは...
      ちーちゃん、おつかれさまっ
      ゾクゾクした色っぽさってわかるぅ

      日向子さんの描く絵と話の内容がそう感じさせるのかなぁ。作品から感じ取るものは多いんだけど、うまく伝えられない。不思議な作品。

      北斎の愛人?恋人?が他の男に襲われてしまうお話があるんだけど、愛人は何があったか北斎には伝えず、北斎はその空気から何が起こったのか察するけれど、そこには触れず、最後ふたりで縁側に座ってる場面が凄く切ないけれど、心にしみたなぁ。
      江戸の人の生き方や強さに憧れるよ。
      また良い作品あったらぜひ教えてください(^^)
      2024/12/10
    • 地球っこさん
      内容は大まかなことしか覚えてないけど、雰囲気は今でも思い出すことができるよ。
      やっぱりまた読みたくなってきたので買っちゃおう(⁠。⁠•̀⁠ᴗ...
      内容は大まかなことしか覚えてないけど、雰囲気は今でも思い出すことができるよ。
      やっぱりまた読みたくなってきたので買っちゃおう(⁠。⁠•̀⁠ᴗ⁠-⁠)⁠✧
      江戸の人々の生き方は粋だよね〜
      2024/12/10
  • 単行本未収録の話が入っててお得。
     むかつく花魁の表情が良い。
     栄女といふかお栄ちゃんといふよりアゴ さんの、火事が出たのでそらヨっと駆けてく様が、なんか読む。

  • 上巻のレビューを書いたあと、下巻でレビューを書かなかったのでもうだいぶ内容を忘れてしまいましたが、『百日紅』のストーリーと絵について。

    杉浦日向子先生の絵について。この絵のタッチ(文章では表現不可能)が、マンガの表現と、浮世絵で描かれる瓜実顔・切れ長の目・スッと通った鼻筋の顔との中間で、作中で示される浮世絵との橋渡しになっていると思う。

    日向子先生のこの絵のタッチにすごく似た絵の漫画家がいた気がするのだけど、全然思い出せない。吉田秋生でもないし、もう少しあとの岡崎京子でもない。先輩に訊ねると頭をひねってくれて、同世代や前後の漫画家たち……内田春菊、原律子、ひさうちみちお、近藤ようこ、ついでに原田治など色んな名前を出してくれたけどどれも違って、少女漫画だったように思う。私も先輩も男性だからあまり詳しくなく、結局よくわからない。思いついた方おられたらご一報下さいませ。田中圭一先生あたりが、漫画家の絵の系統樹をまとめた本でも出してくれるとありがたいんだけど。絵は違うけど、表現方法は大友克洋や高橋留美子には似ていると思う(高橋留美子の高校からの友人・近藤ようこはやまだ紫、杉浦日向子先生とともにガロ三人娘)。

    私が好きなのは、やはりお栄ちゃんのこの「三白眼のタレ目」。非常にアンニュイな感じで、和風漫画なのになぜかフランス映画を連想させられる。ジャンヌモローとか、ああいう感じ。

    ストーリーについて。ニューウェーヴだから(だからってこともないけど)、オチがどうこうではなく「スンッ…」と終わる。オチについてだいぶ前からよく考えます。わかりやすいのは『ウルトラQ』と『ウルトラマン』の大きな違いなど(この場合はウルトラマンが毎回トドメをさすことがオチ)。そういう作風だからか記憶になかなか残らず、忘れてしまう。忘れるので読み返す。読んでるうちに思い出す。ストーリーの説明が難しい作品。

    北斎の実際のエピソードも当然あり、歴史アート漫画として面白いのだが、妖怪・怪談の類いがとても多い。最後の方には鶴屋南北も出てくる。『1/8計画』みたいなシーンもあり、まさに『ウルトラQ』的であるかもしれない。

    私がわかりやすく「面白い」と感じたのは、メインキャラのひとり歌川国直が出てから。国直がらみのエピソードはだいたい面白いです。北斎と歌川派の方向性の違いは、この作品を読んだ限りだと運慶と快慶、ジョンとポール、ロックとポップス……に、近い感じがする。革新的な作品を作ろうとする人と、大衆に広めようとする動き……どちらも必然的なもの。北斎の中にも、このふたつの方向性の作品が共存している。以前も書いたが、読んでたら北斎は阪脩さんの声で勝手に脳内再生されてしまう笑。

    あと、お栄ちゃんが処女だから枕絵をうまく描けない……というのも面白い。桃井かおりさんが『あらかじめ失われた恋人たちよ』の時に処女で、監督の田原総一朗に対して「したことないんでどう演技すればいいのかわかんないんです……」と相談に来たエピソードを思い出す。言われた田原さんは困ったそう。そら困るわな笑。

  • 不可思議な出来事も、ときに起こり得るものとしてとらえていたのは、文明開化によって不可思議な出来事がだんだんと消えていった明治時代以前、江戸時代までのことだったのだろう。この本には、そんな江戸時代の雰囲気が充溢している。

  • <内容>
    杉浦さんの本は知っていたが、先に映画を見てしまった。妹のネタはわずか1エピソードだったんだと知る。
    北斎とその娘お栄の話。怪談ネタを巧みに練り込んで、上々の作品でした。

  • さて、杉浦日向子女史による江戸浮世絵草紙も後半に至ると、あらすじは江戸時代噂話集「耳袋」から採ったか、落語の中から採ったか、怪異モノが多くなりやす。

    そんな中でも、最後から三話が立て続けに傑作になっていまして、あっしゃ江戸の何かが女史に取り憑いたんじゃないかと思いやすね。

    第二十八話「野分」は北斎の末娘の顛末で、全三十話中白眉でさあ。一頁たりとも無駄なコマはなし。北斎が乗り移ったかと思うようなコマ多くて、あっしゃ、ぞぞぞと寒気がしたね。

    一転、第二十九話「夜長」は、落語から採ったのかペーソス溢れる一編でさ。けれども、ふとそこら辺りに哀切と恐怖が同居しているのさ。

    最終話「山童」。柳田国男「遠野物語」に出てきてもおかしくないような内容ですが、山東京伝も登場するわ、北斎漫画の中の天狗の遊びも登場するわ、なかなかの人情話になっているわ、なかなかの一編でさ。
    2015年3月14日読了

  • 北斎、お栄ちゃん、善次郎(英泉)のほかに国直あたりは結構レギュラーで登場しますが、下巻ではまだ十代の国芳も登場。一応上下巻で完結だけれど、とくにこれで大団円!というエピソードがあるわけではなく、もっといくらでも続けられそうな、というか、もっといつまででも読んでいたかったというか。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「もっといつまででも読んでいたかったというか。 」
      啓示でもあったかのように、マンガを描かなくなりましたね。しかも、ご本人も、、、
      「もっといつまででも読んでいたかったというか。 」
      啓示でもあったかのように、マンガを描かなくなりましたね。しかも、ご本人も、、、
      2014/07/05
    • yamaitsuさん
      もっと長生きして欲しかったですね・・・いわゆるフォロワーというか後継者的な方も出現しそうにないですし。残念です・・・
      もっと長生きして欲しかったですね・・・いわゆるフォロワーというか後継者的な方も出現しそうにないですし。残念です・・・
      2014/07/07
  • 其の十六「火焔」~其の三十「山童」=元のコミックス2巻後半+3巻+α収録。
    其の二十「離魂病」以降は初読。
    北斎&お栄父娘がメインじゃない話が多くなり、怪談調に。
    ちょっと絵の雰囲気が変化した印象。
    でも、つるりとして艶めかしく、これもまた好き。
    北斎の末娘のエピソード、其の二十八「野分」が切ない。

    • yuu1960さん
      もっと、読みたいと思わせた漫画でした。日向子先生の病気が進行していたので、筆を折られたらしく、再読する度に残念な気持ちがぶり返します。
      もっと、読みたいと思わせた漫画でした。日向子先生の病気が進行していたので、筆を折られたらしく、再読する度に残念な気持ちがぶり返します。
      2012/12/30
    • 深川夏眠さん
      yuu1960さん、コメントありがとうございます。
      そうですね、もっとたくさん描いていただきたかったですねぇ(しみじみ)。
      あの独特な、...
      yuu1960さん、コメントありがとうございます。
      そうですね、もっとたくさん描いていただきたかったですねぇ(しみじみ)。
      あの独特な、描き込み過ぎていなくて、しかも艶っぽい画風は唯一無二だと思います。
      2012/12/31
  • 杉浦日向子の作品はどれも好きなのですが、これが一番かも。。。

  • 漫画だけれど本棚に入れる。
    昔、読んだ気もするが、その頃は響かなかったのだろう、記憶がない。今読むと、これはもうぴたりと心にはまって、味わいもまた格別だった。

    お栄と北斎の小説は朝井まかてさんの『眩』 (くらら) で読んでいて、のちに宮崎あおいさんでドラマにもなった。そのお栄は、気の強い、凛としたイメージだった。ここにいるお栄さんはもう少したおやかで、自分の画風に悩んだり、ほのかに恋心を抱いたりもする。結婚していたこともあるらしいが、そのことは描かれておらず、それ以前の話のようだ。
    北斎とお栄の他に、歌川派の絵師なのに、なぜか北斎の家に居候している善次郎という男がいる。お栄からはへたくそ呼ばわりされて、絵の腕は今ひとつだが、春画は人気があるようだ。北斎が家に置いているのだから何か見どころがあるのかもしれない。女好きの、この男がいることで物語が膨らむ。ちなみに、お栄からは男と意識されていない。善次郎が拾ってきた犬も同居している。
    実在の絵師や、実際にあったエピソードもあるし、北斎以外の、お栄の家族も出てくる。妖怪、怪異を交えたエピソードもある。江戸の暮らしや言葉遣いも忠実で、北斎の長屋の散らかり方もリアル(笑)杉浦日向子さんの描く江戸は基本的には平和で、読んでいて安心感がある。

  • たいへん美しい、一抹の寂しさがスパイスに

  • とんでもない作品に出会ってしまった。
    杉浦日向子というお人は、時代が違えば浮世絵師になっておられたのだろうな。
    生き生きとしたお江戸は魅力的だし、明るい逞しさの中に見え隠れする妖しさが、怖いような愛しいような…

  • 下巻も淡々と進む。
    まだ続きそうだし、終わり感が全然ないぞ。

  • 安心感

  • 唯一無二。

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著者プロフィール

杉浦 日向子(すぎうら・ひなこ):1958年、東京生まれ。1980年、「通言室之梅」(「ガロ」)で漫画家としてデビュー。1984年、『合葬』で日本漫画家協会賞優秀賞受賞。1988年、『風流江戸雀』で文藝春秋漫画賞受賞。1993年に漫画家を引退し、江戸風俗研究家、文筆家として活動した。NHK「コメディーお江戸でござる」では解説を担当。主な漫画作品に『百日紅』(上・下)『ゑひもせす』『二つ枕』『YASUJI東京』『百物語』、エッセイ集に『江戸へようこそ』『大江戸観光』『うつくしく、やさしく、おろかなり』『一日江戸人』『杉浦日向子の食・道・楽』『吞々草子』等がある。2005年、没。

「2023年 『風流江戸雀/呑々まんが』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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