るきさん (ちくま文庫 た 31-1)

著者 :
  • 筑摩書房
4.13
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本棚登録 : 2733
感想 : 309
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  • Amazon.co.jp ・本 (128ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480032119

感想・レビュー・書評

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  • 昨年の秋に、映画開始までの時間潰しのために買った本です。セレクト基準は安いこと、何処から読んで何処で止めてもいいこと、価値のあるもの、過去買おうとして何度か止めたもの。それから4ヶ月。やっと読み終わりました。

    高野文子は約40年前「黄色い本」で衝撃を受け「絶対安全剃刀」でファンになりました。その後、「棒がいっぽん」で距離を置き、「ドミトリーともきんす」でやはり凄いと再確認しました。で、長い間未読の本書を手に取ろうかどうかと逡巡していたわけです。毎回作品ごとに「画の文体」を変える作者ではありますが、ずっと共通なのは2点あります。

    ひとつは、絵が圧倒的に上手いこと。マンガはあくまで「本」として評価するべきだとは思います。高野文子にとってもそうです。それでも、一本一本の線の説得力は多くの(私を含む)漫画家志望を絶望させるに充分だったと思います。

    ひとつは、普通と言われる価値観を軽々とひょいと越えること。激動の89年には13作も「るきさん」を描いています。1月には天皇が亡くなり、6月には天安門事件が起こり、10月にはベルリンの壁が崩れた、あの年です。このアラサーOL日記ともいえる世評マンガに、それらの大事件はとうとう1ミリたりとも陰を落としませんでした。しかも、あろうことか、自粛風が吹き荒れていた2月号4p拡大版では、るきさんとえっちゃんコンビはおせちや年賀状などの話題に終始し「まぁ今年もよろしく」と去ってゆく男友たちに挨拶をするのです。11月には区立図書館の児童書コーナーでナンパするその男友だちと、その談話室で焼きそばパンとファンタを飲む女(るきさん)も描いています。この貧乏くささは世の中バブリーな空気満々な頃のマンガとは思えません(しかも掲載誌は「Hanako」)。

    このマイペースなるきさんの日常が、30年後の現代読んでいて少しも不自然じゃない。普遍性がある。むしろ、新しい自立した女性像のような気がするから不思議です。

    どのように「普遍性」があるか?
    友だちえっちゃんの呟きだけで構成されているこの一作を紹介すれば分かるかな。

    「るきさんは電車に乗るとき」「よくドアにはさまる」「あんまりたっぷりはさまれるので、まわりのほうがびっくりする」「踏切では」「降りてくる、降りてくる、降りてくると思いながら」「頭で受けるので」「やっぱりみんな驚く」「運動神経の問題だということは居合わせていればすぐにわかるが」「わからないのはこの直後の冷ややかさだ『だいじょうぶ、だいじょうぶ』」「痛くないわけじゃない、アザものこるし、コブものこる」「なぜですか?『子供のころからしょっちゅうだったから慣れちゃったのかなって思います、だいたい外出ってそういうもんだと思ってましたしね』」「るきさんが言うには『きゃーん、いったーい』」「『うぇ〜ん、やだぁ』ときたまこういう人を見かけますが」「『はずかしーっ』あれはめったにころんだことのない人なんです、との説である」

    あるある!
    るきさんの説は説得力がある。
    えっ?るきさんの方がおかしい?そうかなぁ。

    • りまのさん
      kuma0504さん
      今日は、沢山のいいね!を、思いがけず頂き、驚きとともに、とても嬉しく思いました。(恥ずかしい呟きも、ありましたが…。)...
      kuma0504さん
      今日は、沢山のいいね!を、思いがけず頂き、驚きとともに、とても嬉しく思いました。(恥ずかしい呟きも、ありましたが…。)
      高野文子は、当時の、「プチフラワー」という漫画雑誌で知り、ファンになりました。「絶対安全剃刀」には、驚かされました。その画力に! ああ、日付が、変わってしまいました。ごめんなさい。1月13日 りまの
      2021/01/13
    • りまのさん
      kuma0504さん
      ありがとうございました!
      kuma0504さん
      ありがとうございました!
      2021/01/13
    • kuma0504さん
      りまのさん、こんにちは。
      当時の「プチフラワー」は素晴らしかったですよね。
      具体的には思い出せませんが、名作が次々と生まれていました。基本的...
      りまのさん、こんにちは。
      当時の「プチフラワー」は素晴らしかったですよね。
      具体的には思い出せませんが、名作が次々と生まれていました。基本的に私は男性漫画を読んでいたのですが、全然無視できませんでした。
      2021/01/14
  • マイペース、いいなぁ
    これは御守りになるタイプの本

  • 漫画と知らずに借りてまずビックリでしたが、主人公のるきさんとお友達のえっちゃんのやり取りがほんわか面白かった^_^

  • 少し時代は遡り、世の中はバブル景気で賑わい、そして経済が停滞していった時代。1988年から1992年に雑誌Hanakoに連載されていた、ごく普通の女性の日常を描いた作品。

    今でいうアラサー独身女性のるきさんと、お友達のえっちゃん。るきさんの行動はやや世間のテンポからずれているのか、のほほんとした雰囲気に微笑んでしまいます。社会に出て会社勤めのえっちゃんとるきさんの日常が、微妙な間合いで続いていく。

    黒電話、駅の切符自販機なんて背景も懐かしい。マキシムのケーキなんて小さな贅沢だ。ある日、なんだか不機嫌なるきさん、原因はお腹が空いてたの、なんて連れ合いと同じだ。

    科学の会話が日常におりてきた「ドミトリー・トモキンス」やら、「おともだち」のレトロな雰囲気も独特の作風ですね。

  • 長濱ねる、心を潤してくれた3冊紹介!「児童書コーナーにいる」意外なオフも告白 | RBB TODAY
    https://www.rbbtoday.com/article/2021/07/24/190627.html

    【高野文子の漫画 るきさん】おひとり様 30年前のミニマリスト - kako-b
    https://www.kako-b.com/entry/missruki

    筑摩書房 るきさん 増補 / 高野 文子 著
    https://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480032119/

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      覚書
      冨貴美智子「猫飼っていい?」と高野文子「るきさん」 - Cafe Bleu Comics
      https://www.cafebleu...
      覚書
      冨貴美智子「猫飼っていい?」と高野文子「るきさん」 - Cafe Bleu Comics
      https://www.cafebleu.net/comics/2010/03/post-7.html

      冨貴美智子「もじょぶ」 - Cafe Bleu Comics
      https://www.cafebleu.net/comics/2010/06/post-6.html
      2021/07/25
  • ずいぶん前のことですが、私がるきさんみたいと、当時のバイト友達に、この本を紹介されました。読んだあと、嬉しくなりましたけれども、はて、あのるきさんみたいに、ほんわかテキパキしていませんよ? 楽しめました。

    • かなぽさん
      この本を手に取った経緯が似ていますね(*゚v゚*)
      この本を手に取った経緯が似ていますね(*゚v゚*)
      2020/08/04
    • りまのさん
      お仲間です♡
      お仲間です♡
      2020/08/04
  • 誕生日に友人に贈られたうちの1冊。
    全く知らない作品でした。
    1990年前後に描かれた作品だけど、今読んでも色褪せていないなあと。今も30年前も生活様式はそんなに変わってない。
    サザエさんを見ているようだった。サザエさんがひとり丁寧な暮らしをしている感じ。笑
    現代で言うと、阿佐ヶ谷姉妹かしら。(こないだまでドラマを見ていたからかもしれない)

    えっちゃんのいう「るきちゃんのそれって なんかここんとこ忘れてた土のにおいみたいなもん思い出させるわね」(p.64)が、まさにこの作品のことを端的に表していると思う。

    いいなぁ、自分のリズムで生きるるきさん。
    そして、るきさんとえっちゃんみたいな、一緒にいて肩肘張らないような、「つかずはなれず」の距離感の友達。

  • ほんとにこの漫画大好き。
    気分が落ち込んでるとき、るきさん見てるとどうでもよくなる(笑)るきさんはぶれない。だから読んでると安心する。
    歳を重ねると読み方も変わる。感じ方も変わる。だからまた読む。私にとって、一生のバイブルだと思っている。

  • ようやく読めた、高野文子のロングセラー漫画。るきさんと親友えっちゃんのほのぼの日常、いい感じの脱力感にこちらも心がほぐれました。オチのユルさが好きだわぁ。ユルいからこそ、心身共にクッタクタなときに読むと、ほどよく元気になれる。
    改めて驚くのは、古さをほぼ感じないこと。そして、おしゃれな色遣い。ファッションのかわいさ。何度でも読み返したくなる。飄々としたるきさんのキャラも好きだけど、共感するのは見栄っ張りで時々空回りなえっちゃんの方かな。
    今回はスペースの問題及び手軽さを重視して文庫本を選んだのだが、惜しかったのは、字が小さいこと…!これは仕方のないことか。でも、文庫を買ってよかったのは、解説がかつて大好きだった氷室冴子さん!久々に彼女の文章を読めて、胸熱でした。
    個人的には、Hanako連載の漫画って当たりが多いように思います。

  • 最初は「若きサザエさん(独身)」的な感じかと思っていたが、いやいやこの空気感、このマイペースさ。そしてこの肩の力の抜け具合。
    私にとってはあるあるなシーン満載だというのに、違うのだ。
    読み進めるほどに、ゆっくり、じわ~~~っときた。体がほぐされてゆく。
    えっちゃんもいいぞ。ずっと見ていたい名コンビ!
    キリキリ生きるだけじゃつまらない。

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著者プロフィール

高野文子(たかの・ふみこ)
1957年新潟県生まれ。漫画家。1982年に日本漫画家協会賞優秀賞、2003年に手塚治虫文化賞マンガ大賞を受賞。作品集に『るきさん』『おともだち』『絶対安全剃刀』『ラッキー嬢ちゃんのあたらしい仕事』『棒がいっぽん』『黄色い本』がある。漫画作品の他に、絵本なども手掛ける。

「2022年 『増補 本屋になりたい この島の本を売る』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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