シェイクスピア全集 12 タイタス・アンドロニカス (ちくま文庫)

  • 筑摩書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (211ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480033123

作品紹介・あらすじ

ローマ将軍タイタス・アンドロニカスは、捕虜であるゴート人の女王タモーラの長男王子を殺して、戦死したわが子たちの霊廟への生贄とする。これを怨んだ残る王子二人は、一転ローマ皇帝妃となったタモーラの狡猾なムーア人情夫、エアロンと共謀。タイタスの娘ラヴィニアを襲って凌辱し、なんとその舌と両手を切断してしまう。怒り狂うタイタス…-血で血を洗う復讐の凄惨な応酬。その結末は!?シェイクスピア初期の衝撃作。

感想・レビュー・書評

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  • ちくま文庫版シェイクスピア全集第12巻。ローマの武将タイタス・アンドロニカスは、ゴート族の女王に恨まれ……。

    コリオレイナスのように古代ローマを舞台としているが史劇とはいえず、うってかわって『本当は恐ろしい◯◯童話』といわんばかりのスプラッターな物語である。凄まじいまでの復讐の応酬が続き、なんとも身も蓋もない結末に唖然。これは感想が語れないわ……。残虐な話にもかかわらず思わず引き込まれてしまうのは、ヒトのサガか。心に余裕のあるときに読みましょう(汗)。

  • シェイクスピア全集 12 タイタス・アンドロニカス
    (和書)2009年09月26日 23:10
    2004 筑摩書房 シェイクスピア, 松岡 和子


    シェイクスピアの中でも初期の作品らしい。輪姦・虐待・暴力・・・復讐・情欲・人食・・。

    なかなか残虐シーン満載でした。

    暴力批判(吟味)とも言える内容でシェイクスピアのとらえ方が所謂、突き放したような視点を持っていてとても印象に残る。

  • シェイクスピアの、初期の戯曲にして一番の残酷物語。ていってもわたしは、これ以外はハムレットとロミオとジュリエットの映画くらいしかふれたことはない。

    ローマとゴート。父権制と母権制、本音と建前など数多くの対立がある。

    ばったばったと人が惨殺される中、タモーラと黒い人種エアロンの混血である赤子は殺されずに生き延びることになってるがこのあとまた復讐は続くのか。

    登場人物の多さはあるが思ってたより読みやすかった。

  • (閲覧注意、ネタバレはともかく、バイオレンスな記述があります!)

    ・・・・・・・・・・
    聞け、悪党ども、俺は貴様らの骨を挽いて粉にし、
    貴様らの血でこねあげて生地を作る、
    その生地でパイの皮をこしらえ、
    貴様らの恥知らずな生首を中身にしてこの二つのパイを焼き上げ、
    あの淫乱女に、貴様らのうすぎたないおふくろに食わせてやる、
    大地のように自分の生んだものを自分で飲み込むというわけだ。
    これがあの女を招待した響宴だ、
    これがあの女にたっぷり召し上がっていただくご馳走だ。
    (第五幕・第三場)
    ・・・・・・・・・・

    ええー、シェイクスピア?!って声が聞こえてきそうですが、どうか御安心を。

    四大悲劇(『ハムレット』『オセロー』『マクベス』『リア王』)でもなく、かといって喜劇(『お気に召すまま』『十二夜』『夏の世の夢』etc.)でもなく、ここでオススメしたいのは、まさかの『タイタス・アンドロ二カス』。

    シェイクスピアってそんなの書いてんの?という声が聞こえてきそうですが、もうしばしのご辛抱を。

    そう、シェイクスピアといえば、ロミオとジュリエットの悲恋が涙を絞る青春劇?

    それか、真夏に森を飛び交う妖精達が見せる喜劇?

    あるいは、己の実存に悩むデンマーク王子の悲劇?

    はたまた、妻と結託して王座を奪う悪逆非道のスコットランド王の転落人生譚? 

    それらもいいでしょう、けれども、そういったシェイクスピア劇を堪能した観客・読者も、『タイタス』が提供するエロ・グロ・バイオレンスの響宴には即座に圧倒されることになるでしょう。

    この戯曲の舞台はローマ時代、名将タイタス・アンドロニカスとその一族が、ゴート族との戦争を見事に勝ち抜き、ゴート族女王タモーラとその息子達を捉えてローマに凱旋するところから始まります。生け贄として3人の息子のうちの1人を惨殺されたタモーラは、タイタス一族への復讐心をたぎらせるのですが・・・

    終盤で主要人物が死にまくって死体の山が築かれる、というのはシェイクスピア悲劇ではよくあることで、『タイタス』も例にはもれず。ただし、その死に方はとにかく残酷悪趣味バイレンスのつるべ撃ち!しかも、冒頭・中盤・終盤と、ちゃんとリズミカルに死体が出来上がる大変バランスの良い仕上がりでございます。うむ、ウィルよ、お前は良くわかっているな。

    チェックマークまずは敵軍王女の息子を、神に捧げる生け贄と称してその四肢五体を切り刻み、はらわたを火にかけ、その匂いが空に広がっていくのを眺めるローマ兵達

    チェックマーク反抗した息子を激高して刺し殺す父親

    チェックマークレイプされ、舌と両手を切り取られ、手を失った腕に枯れ枝を接続されておちょくられるヒロイン

    チェックマーク捕われた息子を救う交換条件ならということで自分の片腕を自分で切り落とす父親

    チェックマーク腕を切断した苦痛に喘ぐも息子の生還を祈る父親の目の前でいきなり晒される、当の息子達二人の生首

    チェックマークそしておまけに、母親の息子二人を解体・調理してパイを作って、何もしらない母親に食べさせる

    早い話が、例えば北野武の映画『アウトレイジ』(特にそのブラッディーなバイオレンス描写)が大好きだ、という人には自信をもってオススメできるのがこの戯曲なのです。

    シェイクスピアなんて読むのに気後れしちゃう、『ハムレット』とか『リア王』は読んだけどよくわからんかった、シェイクスピアは好きだけど代表作の他に何を読んだらいーの?って、そんなあなたにこそ、ぜひとも『タイタス』を。

    めくるめるバイオレンスが、シェイクスピアによる巧妙な修辞と言葉のスピード感でもって、僕らの頭の中でグロテスクなイメージとして華開く・・・そんな読書体験に飢えていれば、『タイタス』を。

    そうして、シェイクスピアのダークサイドを存分に堪能しようではありませんか。

    ところでこの『タイタス』、俊英ジュリー・テイモアによって1999年に映画化されています。古代と現代(1920年代っぽい)を合わせたようなアヴァンギャルド的世界観の中で、『タイタス』のバイオレンスを見事に蘇られた屈指の名画。

    将軍タイタスを演じるは名優Sir,アンソニー・ホプキンス。きっちり、お約束のレクター博士パロディをやってのけるあたり、ほんとうにわかってらっしゃる。

    まずは、こちらからでもどうぞ!
    https://www.youtube.com/watch?v=OvZRvKf78yY

  • psycho-passにてラヴィニアの引用があったので興味を持って。

    シェイクスピアの初期作品の中でも特に残酷な復讐劇。戯曲形式なため読み解くのが難しい。あまりにあっさりと殺されてしまったりするものだから拍子抜けしてしまうが、演劇で見たらもっと劇的なのかもしれないと想像をめぐらす。
    タイタス・アンドロニカスとは主人公であるローマ帝国の武将の名だ。ゴード族との戦いから勝利をおさめ、敵国の女王タモーラを捕虜とした手土産に凱旋するところから始まる。

    女王タモーラはその美貌から捕虜から皇后となる。この物語の中で私が目についたのはタモーラの悪逆非道ぶりである。捕虜となった身の上からして、さぞ辛いだろうかと思いきや、この女、実に大胆で狡猾である。狩りに行ったところで愛人エアロンと戯れ、どうしてそんなに暗い顔をしているの?とご機嫌窺いをする。それでいて、慈悲を請うラヴィニアに対し「息子たちからご褒美を奪うことになる」と言ってのける。非情ではあるが、彼女はもとよりそういったことを嬉々とする性質が窺える。
    しかしその復讐劇の決定的引き金を引いたのは、皇后タモーラの愛人、ムーア人のエアロンだった。彼がラヴィニアに情欲を寄せるタモーラの残された息子ふたりにけしかけるのであった。彼は言う、「これまで俺はものすごい悪事を何百何千とやってきた、それも嬉々として、ちょうど人がハエを殺すみたいにな。いま俺が心底残念に思うことは一つしかない、何千何万て悪事がもうできないってことだ」このタイタス・アンドロニカスという復讐劇の渦中のその中心にエアロンという悪魔が座して哄笑しているようにすら思える。
    復讐劇はその残虐さを増して終局へと突き進んでいく。

    ラヴィニアの無残な姿を見、息子たちの死を前にして、タイタスは悲嘆にくれて復讐を成す鬼となるために狂気へと呑まれていく。この戯曲は長台詞が多いようだが、その端々には情景を描写し、悲嘆にくれる心情をあますことなく表現している。
    残虐の限りを尽し終わらない螺旋を描いて残るのは空しい死のみである。これを演劇の舞台ではどう演じられているのか気になるところだ。タイタスはどう悲劇にくれ、タモーラとその息子、エアロンはどのように笑うのか。私の小さな脳では安い想像しか浮かばない。
     

  • シェイクスピアの悲劇のかでも残酷と聞き読んでみた、
    まだ1回しか読んでいないが、すぐ死んだり、手を切り落としたり、下を切ったり、人肉であることを隠してご飯を出したりとシェイクスピアもスプラッタな表現をすることに驚いた。

  • カクシンハン『シン・タイタスREBORN』の予習用。残虐だけどそう感じさせないのはなぜか? 死に過ぎ?

  • 初っ端から死にすぎる。誰もが聞く耳を持たず、よくある死に際の長台詞も無くいきなりト書きで殺される。ホラー映画さながら。喋る者と黙る者のコントラスト。少年が叔母を怖がって逃げる場面があるが、映像化したらリアルに恐い。当時も視覚的な効果を狙った作品だったのかもしれない。

  • 「ローマ将軍タイタス・アンドロニカスは、捕虜であるゴート人の女王タモーラの長男王子を殺して、戦死したわが子たちの霊廟への生贄とする。これを怨んだ残る王子二人は、一転ローマ皇帝妃となったタモーラの狡猾なムーア人情夫、エアロンと共謀。タイタスの娘ラヴィニアを襲って凌辱し、なんとその舌と両手を切断してしまう。怒り狂うタイタス…―血で血を洗う復讐の凄惨な応酬。その結末は!?シェイクスピア初期の衝撃作。」

  • とりあえずさっくり一周目。絵にも描けない猟奇。ドンチャン悲劇。雪崩れ込むように崖から落ちていくような猟奇殺人。
    圧倒されて逆に途中から笑いたくなってしまうほどだが、訳者解説がボレロでクレッシェンドというのがとても納得できた。私自身は「映画で言うとパルプ・フィクションとかが近いのかな…」とか思いながら読んでいた。
    あまりにも悪趣味なのでまだ消化できてないが、二周目からは細かい説明を読みながら読んでいきたい。

    あと、まあそんな極端な雪崩れ込み式悲劇でもエアロンがシェイクスピアっぽく悪党として居直るところがそれっぽかった。

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著者プロフィール

イングランドの劇作家、詩人であり、イギリス・ルネサンス演劇を代表する人物。卓越した人間観察眼からなる内面の心理描写により、最も優れた英文学の作家とも言われている。また彼ののこした膨大な著作は、初期近代英語の実態を知る上での貴重な言語学的資料ともなっている。
出生地はストラトフォード・アポン・エイヴォンで、1585年前後にロンドンに進出し、1592年には新進の劇作家として活躍した。1612年ごろに引退するまでの約20年間に、四大悲劇「ハムレット」、「マクベス」、「オセロ」、「リア王」をはじめ、「ロミオとジュリエット」、「ヴェニスの商人」、「夏の夜の夢」、「ジュリアス・シーザー」など多くの傑作を残した。「ヴィーナスとアドーニス」のような物語詩もあり、特に「ソネット集」は今日でも最高の詩編の一つと見なされている。

「2016年 『マクベス MACBETH』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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