老いの生きかた

  • 筑摩書房 (1997年1月1日発売)
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Amazon.co.jp ・本 / ISBN・EAN: 9784480033277

みんなの感想まとめ

老いというテーマに真摯に向き合うエッセイ集で、先人たちの知恵や経験が豊かに織り込まれています。著者は、老いを受け入れることで人生の充実感を得るヒントを提供し、特に中年層に向けたメッセージが印象的です。...

感想・レビュー・書評

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  • 父が亡くなって半年が経った。

    初めてのこと(当たり前か・・・)であり、また長男の長男ということで、
    儀式関連はもちろんのこと相続やそれに関わる親戚付き合いなど、
    父のことを忘れずにはいられない毎日だった。

    どんなに健康だった人もいつかは必ず死ぬ。そして、そのほとんどが老いてからだ。
    その「老い」について、考えてみたくなり手に取ったのがこの本だった。

    この本には、先人18人の知恵と経験、がんちくが、たんと織り込まれている。

    残された人生をしっかりと受け止め、いかに充実して過ごすのか、
    来るべきその日にむけてヒントになるエッセイ集。

    難しい文章は読み飛ばしてもOK。

    特に中年世代の方にはお勧めしたい。

  • 表題につられて読んだが、あまりピンとこない。
    納得の部分や共感する内容もあったが心が揺れるものではなかった。18人がそれぞれの言葉で老いに対する思いを語っている。
    自分のこの未充足感は読む側の受容力がそこまで熟していないからか。まだ人生や老いを自然体で味わえる境地ではなく、枯れた心地で先の死を想うより過去の確執の残り火が燻っているからか。
    しかし、そうはいってもこの本に目が止まり読む気になったことは事実だ、それなのに易しい文章を急ぎ足で表面をなぞっただけだった・・・等々書き出した。

    小冊子ですぐ読めたが、感想を書く段になって彼らの想いがそんな理解でいいのかと囁いている気がする。騒ついた引っ掛かるものもあり、終えるには得心がいかず、再度読むことにした。
    これも感想文方式読書の効用だ。

    意味深な言葉が連なり初回の印象とは様変わりである。老いや死を考えるということは人生を振り返ってそのことを深く想うこと、純粋に自分の人生の意味を考えることなのだ。
    鶴見俊輔は『思想の科学』の編集で老いの問題を何回も取り上げている。そんな彼が選んだ有識者の文章でエッセイや作品の抜粋である。
    読む真剣さに比例して応えてくれる。
    それぞれ奥行きがあり味わい深く、構成も重なって人生の意味が迫ってくる。

    中勘助の『柳先生』、小学校入学時の恩師の思い出とその後の本人の変わりよう、当時の先生の励ましの歌を今も口ずさむ。自分の入学時には鈴木福子先生という担任がいたことを思い出す。

    真野さよは『黄昏記』で娘の目で同居する母の耄碌する経緯をつぶさに綴る。忘れ物、無くし物で娘をも疑い、届け物の礼状催促等あまりにもリアルだ。

    山田稔の『命の酒樽』では人間が一生に飲む酒の量は決まっていてそれに達すると飲まなくなる、飲むだけ飲んだというさっぱりした満ち足りた気持ちになる、これが「老い」なのだという。

    鮎川信夫の『最晩期の斎藤茂吉』が続く。

    高森和子の『幸せな男』は彼女の読者の決然とした生き方を描く。
    彼は老いて妻に死なれ、大学教授であった息子が交通事故が原因で痴呆になり、嫁が彼の生き甲斐だった孫娘を連れて離別する。施設に入れる前日廃人の息子は「かあちゃん」と書き残して死ぬ。そんな状況で彼は「順番が逆さになったが女房子供に想いを残さず逝ける、自分は幸せな男やと思うています」と彼女にいう。

    富士正晴の『ジジババ合戦、最後の逆転』は勝海舟の享年七十七まで一緒に暮らしてきた夫に猛烈な怨みと軽蔑の念を噴出させた妻のたみが死ぬ時に遺言をした。「自分の骨は隣太郎の墓に一緒に入れてもらいたくない。数年前に死んだ温良で立派であった長男の子鹿の墓に入れてもらいたい」と。武家の娘たみは家の女中全員に手をつけてそれを座談で自慢する亭主に嫉妬を超えて冷然たる侮蔑が限界を超えていた。

    キケロや金子光晴、モンテーニュの『老齢は強力な病気』が続く。

    モームの『要約すると』で老年の方が時間の余裕がある、老カトーが八十歳でギリシャ語を習い始めたこと、若い時の判断を歪める個人的な偏見なしに老年では美術や文学を享楽することもできる。老年なりの成就の満足がある。人間の利己主義の拘束から解放される、という。

    サルトルや室生犀星も続く。

    森於菟は『耄碌寸前』で61歳で死んだ父鴎外をあれでよかった天才は夭折すべきと、また「人生は模糊たる霞の中にぼかし去るには耄碌状態が一番よい‥‥人生は形象の戯れに過ぎず、形象と形象が図案のような意味を偶然に作り出しては次の瞬間には水泡のようにきえてゆく白昼夢である」という。
    「若者たちよ諸君がみているものは人生ではない。それは諸君の生理であり血であり増殖する細胞なのだ。‥‥増殖する細胞を失った老人にとって死は夢の続きであり望みうる唯一の生かもしれないと一度でも思ったことがあるか。諸君は私に関係がなく私は諸君に関係がない。私と諸君の間には言葉すら不要なのだ」ともいう。

    幸田文、串田孫一、戸井田道三、野上弥生子、天野忠が続く。

    どの文章も思い当たることが多く身につまされる。
    人間の思うことや考えることはそれ程変わらない。
    誰の人生も老いや死は似たり寄ったりである。
    老いを考えるとは今を生きる戒めであり、それは
    死についても意識することになる。
    改めて人生の価値を思い起こさせる佳作であった。



  • f.2023/10/4
    p.1997/9/25

  • 老年になって、偏見がなくなると、人生の拘束から解放されるらしい。ということは、若い頃のまま、出世欲、成功欲、金銭欲にとらわれた近頃のアンチエイジングなヤング老人たちは、利己主義の拘束から抜け出せず、趣味も悪いまんまなのであろうか。。。W・サマセット・モームの出典(本のタイトル)をご存じの方がいたらお教えいただけると幸いです。

    「老いの先に死がある。老いを生きることは、死を前に見て生きるということ(鶴見俊輔)。老年の方が時間の余裕がある。老年の方が趣味も良くなり、若い時なら判断を歪めるような偏見なく美術や文学を享楽することができる。老年は人間の利己主義の拘束から解放される。ついに解放され魂はうつろいゆく瞬間を楽しむがそれに止まれとは言わない(W・サマセット・モーム)。私はぜんぜん死のことを考えない。しかし、死が近づきつつあるということは知っている(サルトル)。人は完全なる暗闇に入る前に薄明の中に身を置く必要があるのだ(森於菟)」

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/764261

  • 老いとの向き合い方は皆違うが、それまでの生き様そのものだと感じた。
    高森和子の「幸せな男」がいい。電車の中で危うく嗚咽を漏らしそうになったので注意!

  • 「老いの生きかた」鶴見俊輔編、ちくま文庫、1997.09.24
    202p ¥588 C0195 (2021.08.02読了)(2021.07.31拝借)(2011.04.15/6刷)

    【目次】
    未知の領域にむかって(鶴見俊輔)
    柳先生(中勘助)
    『黄昏記』より(真野さよ)
    生命の酒樽(山田稔)
    最晩期の斎藤茂吉(鮎川信夫)
    幸せな男(高森和子)
    ジジババ合戦、最後の逆転(富士正晴)
    分別は老熟につきもの(キケロ・吉田正通訳)
    若さと老年と(金子光晴)
    老齢は強力な病気(モンテーニュ・原二郎訳)
    要約すると(モーム・中村能三訳)
    七十歳の自画像(サルトル・海老坂武訳)
    あととさき(室生犀星)
    耄碌寸前(森於菟)
    現在高(幸田文)
    小さくなる親(串田孫一)
    おいしい仔犬(戸井田道三)
    巣箱(野上弥生子)
    年齢のこと(天野忠)
    収録作品覚書

    ☆関連図書(既読)
    「語りつぐ戦後史(上)」鶴見俊輔著、講談社文庫、1975.08.15
    「語りつぐ戦後史(下)」鶴見俊輔著、講談社文庫、1975.09.15
    「グアダルーペの聖母」鶴見俊輔著、筑摩書房、1976.07.15
    「思い出袋」鶴見俊輔著、岩波新書、2010.03.19
    「銀の匙」中勘助著、岩波文庫、1935.11.30
    「齋藤孝特別授業『銀の匙』」齋藤孝著、NHK出版、2018.03.30
    「豪姫」富士正晴著、新潮文庫、1991.04.25
    「エセー(一)」モンテーニュ著・原二郎訳、岩波文庫、1965.05.16
    「エセー(二)」モンテーニュ著・原二郎訳、岩波文庫、1965.11.16
    「エセー(三)」モンテーニュ著・原二郎訳、岩波文庫、1966.01.16
    「エセー(四)」モンテーニュ著・原二郎訳、岩波文庫、1966.10.16
    「エセー(五)」モンテーニュ著・原二郎訳、岩波文庫、1967.09.16
    「エセー(六)」モンテーニュ著・原二郎訳、岩波文庫、1967.10.16
    「モンテーニュ」原二郎著、岩波新書、1980.05.20
    「月と六ペンス」サマセット・モーム著・中野好夫訳、新潮文庫、1959.09.25
    「実存主義とは何か」サルトル著・伊吹武彦訳、人文書院、1955.07.30
    「水いらず」サルトル著・伊吹武彦訳、新潮文庫、1971.01.25
    「悪魔と神」サルトル著・生島遼一訳、新潮文庫、1971.12.25
    「革命か反抗か―カミュ=サルトル論争」カミュ・サルトル著・佐藤朔訳、新潮文庫、1969.12.02
    「サルトル」海老坂武著、岩波新書、2005.05.20
    「サルトル『実存主義とは何か』」海老坂武著、NHK出版、2015.11.01
    「幼年時代・あにいもうと」室生犀星著、新潮文庫、1955.03.15
    「崩れ」幸田文著、講談社文庫、1994.10.15
    「木」幸田文著、新潮文庫、1995.12.01
    「ブラック」串田孫一著、新潮美術文庫、1975.10.20
    (「BOOK」データベースより)amazon
    年のとりかたは人さまざま。でもよりよく老いる道すじを選びたい。限られた時間の中で、いかに充実した人生を過ごすかを探る十八篇の名文。来るべき日にむけて考えるヒントになるエッセイ集。

  • 著者66才時の「老いること」への古今東西の文章のエッセンス集。森於菟の「耄碌寸前」が味わい深く、父鴎外が死去した61才から10年を超えた71才時に、「私は死を手なずけながら死に向かって一歩一歩近づいていこうと思う」との意志が鮮明である。そして「若者たちよ、諸君がみているものは人生ではない。それは諸君の生理であり、血であり、増殖する細胞なのだ」と老いた自己を峻別する冷厳な視点が印象に残った。

  • 、注文したこの本が届き唖然とした。前に買った本だった。18人の名文家による随筆集だったから、内容の記憶は少しあったが編者の記憶が無かった。本の名前は、「老いの生きかた」(ちくま文庫:鶴見俊輔編 1997年第1刷発行)だったので笑った。最近、こんな失敗が増えている。スーパーに行くと、別に理由は無いのに、玉子とか辛子やワサビに手が出てママヨさんに注意される。この「何気なく」というか、考えない行動が少しづつ増えている。反面、考えることが苦手になっている。

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著者プロフィール

922−2015年。哲学者。1942年、ハーヴァード大学哲学科卒。46年、丸山眞男らと「思想の科学」を創刊。65年、小田実らとベ平連を結成。2004年、大江健三郎らと「九条の会」呼びかけ人となる。著書に『アメリカ哲学』『限界芸術論』『アメノウズメ伝』などのほか、エッセイ、共著など多数。『鶴見俊輔集』全17巻もある。

「2022年 『期待と回想』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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