優しい去勢のために (ちくま文庫 ま 19-1)

著者 :
  • 筑摩書房
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本棚登録 : 89
感想 : 4
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  • Amazon.co.jp ・本 (315ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480033352

感想・レビュー・書評

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  • 『親指Pの修業時代』上下巻(河出文庫)で「非=性器的なエロスの称揚」というテーマを鮮烈なしかたで読者に示した著者が、若い頃に執筆したエッセイをまとめた本です。

    文学や音楽をテーマにしたエッセイや、あるいは著者の身辺雑記のような内容のものも含んでいますが、表題作となっている「優しい去勢のために」という、散文詩のようなスタイルで書かれた文章では、「非=性器的なエロスの称揚」というテーマに通じる内容が、やや粘着的な文体でつづられています。

    著者の小説にも感じられることなのですが、富岡多恵子以来の「ラディカリズム」が前面に打ち出されているところに、現代のわれわれが抱え込んでいる問題とのズレを感じます。打ち倒されるべき性愛の規範は「外部」に求められるものではなく、むしろわれわれ自身の「内部」に向けて問われるべきであり、個人的に好きな作品でいえば、たとえばD[di:]の『キぐるみ―(で、醜さを隠そうとした少年のはなし)』(文春文庫)がそうしたテーマを追求していると考えていますが、本書にはそのような屈折したまなざしはあまり見られないように思えます。

  • 三宅香帆さんつながり

  • エッセイが非常にとんがっているのがおどろき。小説と読み合わせるとこの作家の非凡さがわかる。

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著者プロフィール

1958年生まれ。78年「葬儀の日」で文學界新人賞を受賞しデビュー。著書に『親指Pの修業時代』(女流文学賞)、『犬身』(読売文学賞)、『奇貨』『最愛の子ども』(泉鏡花文学賞)など。

「2022年 『たけくらべ 現代語訳・樋口一葉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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