オ-ランド- (ちくま文庫 う 18-1)

  • 筑摩書房
3.40
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  • Amazon.co.jp ・本 (333ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480034298

作品紹介・あらすじ

オーランドーとは何者?36歳の女性にして360歳の両性具有者、エリザベス1世お気に入りの美少年、やり手の大使、ロンドン社交界のレディ、文学賞を受賞した詩人、そしてつまりは…何者?性を超え時代を超え、恋愛遍歴を重ね、変化する時代精神を乗りこなしながら彼/彼女が守ってきたもの。奇想天外で笑いにみちた、再評価著しいウルフのメタ伝記。

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  • 美少年オーランドーは恋愛や詩作に没頭した後、
    トルコ大使としてコンスタンティノープルに赴任。
    謎の昏睡から覚めると「彼」は「彼女」になっていた……。

    オーランドーなる不思議な麗人について綴られた
    伝記という体裁の歴史小説、1928年出版。
    ヴァージニア・ウルフは執筆時、
    恋人であった女流詩人ヴィタこと
    ヴィクトリア・サックヴィル=ウェストをモデルにした
    と言われ、その息子ナイジェル・ニコルソンは
    小説『オーランドー』を
    「文学界において最も長く魅力的なラブレター」と
    評したという。

    主人公オーランドーが男性としても女性としても
    自己同一性を保って人生を謳歌する様は
    柔軟で美しいけれども、
    序盤、少年~青年オーランドーの冒険は楽しかったが、
    後半は、いつの間にか300歳を超えた(!)
    レディ・オーランドーの意識の流れの叙述が
    グネグネして読みづらい。
    しかし、岩波書店『図書』2020年3月号掲載、
    英文学者・赤木昭夫の「漱石全集の読み方」(中)
    によれば、ヴァージニア・ウルフは
    「小説の書き方には絶対はあり得ない」と喝破した由。

    ちなみに、オーランドーが駆け抜ける三世紀半という時間は、
    サックヴィル家の歴史を追ったものであり、
    性をも乗り超えて様変わりするオーランドーの姿は
    同家の重要人物たちのコラージュである、とか。
    また、性別の変化とその受容には、ヴィタが交際相手、
    あるいは交際のフェーズに応じて、
    男性の装いをしたり、
    女性として振る舞ったりした事実が反映されているらしい。

    小説の書き方に「絶対」がないように、
    人のあり方・愛し方にも決まりごとは無用――
    ということなのかもしれない。
    何しろ当のヴァージニアもヴィクトリアも、
    濃厚過ぎる友情に結ばれながら、それぞれ男性と結婚したのだし。

    それにしても「評価は後からついてくる」と
    言わんばかりの、
    いかにも伸び伸びして楽しそうで自由な書きっぷりが
    清々しい。

  • 世の中には、必ずしも意味を理解しなくても読めてしまう文学というものが存在する。ヴァージニア・ウルフの作品は、まさにその代表例であるだろう。

    それがはっきりと意識にのぼる以前の言語。「意識の流れ」そのものにアクセスし、前-言語的な言語を紡ぐという離れ業をやってのけているのがこの作家の特色であると思う。

    したがって、この『オーランドー』という作品があまりにも奇想天外な話であることに、それほど戸惑う必要はない。

    美少年のオーランドーが途中から女になり(なんの説明もなく。まるでそうなることが全く自然な出来事であるかのように)、360年を生きてなお36歳であったとしても、特に気にすることはない。物語の世界において、ただそれが起きた、ということを受け入れればよいのだ。

    なぜなら意識下の世界において確かに人は、様々な人格、様々な年齢を生きているものなのだから。

  • 騒々しくて、めまぐるしくて寄る辺なくて、はかなくしぶとい。訳が分からないよ。

  • 美しい言葉の数々と、大胆なユーモアセンス。

    ウルフさんの凄さをあらためて実感できる、上品な痛快喜劇とでもいうべきか。

    わずか300頁足らずの作品のわりには、読み尽くし味わい尽くすのは思ったより骨の折れることかもしれないが、この素晴らしい伝記を読まないのはなんとも勿体無い。

  • 今年はウルフの生誕140周年らしいので、積んでたウルフ作品を読んでみた。
    ひとりの人間の中には「男性らしい」性格/「女性らしい」性格含めていろんな面や人格があり、時代背景によっても変わるし、さらにその人の中の時の流れ方も一定ではない、そんなことをある貴族の歴史を1人の人間に詰め込むことで表現したメタ伝記。
    文中に書き手である「伝記作家」がけっこう頻繁に顔を出し、オーランドーにツッコミを入れたり生々しい場面をぺらぺら美辞麗句を並べてごまかしたり急に自説を語り出したり皮肉を言ったりするのも面白い。
    これを読んでオーランドーのモデル(の一族の末裔)になったらしいヴィタ・サックヴィル=ウェストの書いた「エドワーディアンズ」も気になってきたし、この作品で伝記という手法の可能性を押し広げようとしたウルフが書いた犬の伝記「フラッシュ」もさらに読みたくなった。

  • 語り手がノリノリで、「えっウルフってこういう陽気なのも書くんだ?」というのが第一印象。伝記のパロディ、英文学とオーランドー一族、もしかしたら英国自体が対象の歴史小説という感じも。前提知識がないと完全に堪能するのは難しいかもしれないけれど、語り手のノリを楽しめれば大丈夫。合わない人もいるかもしれないけれど。

    わりと普通な人のオーランドーがしれっと性転換していく点ではジェンダーがテーマの小説でもあり、ヒトが性転換できる生き物だったらもっと軽やかに生きられるかもなあなど思わされた点ではSFっぽい本でもあった。最後の10ページがじつに流麗でウルフ節全開なので、もともとウルフが好きな人だったらぜひ。

  • 映画もよかったが、原作のほうが面白かった。より幻想的に時代と空間を自由に遊ばせてくれる。ウルフをこれから読んでいこうと思う。

  • 原作のせいか、翻訳者のせいかわからないですが
    音楽のようというか、絵的というか、詩的というか
    とても幻想的で流れるような文章。すてき!

  • ティルダ・スウィントンを見染めた映画(タイトルロールを演じています)の原作として、わりと気軽に手に取った一冊。
    でも、こんなに美しくて、グロテスクで。
    映像以上に映像的であり、絵画的な文章です。

    ウルフの作品は他にも読んだことはあるけれど、こういう種類の凄みを描きだす人だとはまったく気付いていなかった。

    フランス革命前夜、異常な寒波に襲われて国中が大飢饉に見舞われるなか、狂乱の宴を繰り広げる貴族たち。
    凍った川面が、たいまつに照らされて、あでやかな衣のいろがちらちらと反射する。
    氷の中に閉じ込められたままのりんご売り。

  • 時代を越えて、性を越えてオーランドーは存在する。
    ヴァージニア・ウルフの文章はある場面では空想を始めた主人公に共感してそのまま話がすっ飛んでしまいますが、なるほど、人間は普段こうゆう風に思考していると思えばリアルではないでしょうか。
    イギリスの貴族に生まれた美しい脚の憂い顔の青年オーランドー。詩を、自然と動物をこよなく愛し、争いは好まない。
    ロシアの姫君を愛し、またトルコでやり手の大使として名を馳せ、そして女性に変貌し第二の人生を送る。
    女性として男性を愛し、そのスピード感あるラストは必見。

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著者プロフィール

1882年―1941年、イキリスのロンドンに生まれる。父レズリーは高名な批評家で、子ども時代から文化的な環境のもとで育つ。兄や兄の友人たちを含む「ブルームズベリー・グループ」と呼ばれる文化集団の一員として青春を過ごし、グループのひとり、レナード・ウルフと結婚。30代なかばで作家デビューし、レナードと出版社「ホガース・プレス」を立ち上げ、「意識の流れ」の手法を使った作品を次々と発表していく。代表作に『ダロウェイ夫人』『灯台へ』『波』など、短篇集に『月曜日か火曜日』『憑かれた家』、評論に『自分ひとりの部屋』などがある。

「2022年 『青と緑 ヴァージニア・ウルフ短篇集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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