- Amazon.co.jp ・本 (299ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480035677
作品紹介・あらすじ
"せどり"(背取、競取)とは、古書業界の用語で、掘り出し物を探しては、安く買ったその本を他の古書店に高く転売することを業とする人を言う。せどり男爵こと笠井菊哉氏が出会う事件の数々。古書の世界に魅入られた人間たちを描く傑作ミステリー。
感想・レビュー・書評
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古書に人生を賭けた男とそのミステリー。数々の奇書とそれを巡る人々が狂ったかのごとく書に突き進む様子が面白い。
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古書にまつわる話。せどりとは背取り、古書を安く仕入れて高く売る手法のこと。(販売組合?にその名が由来があるとか)。和本には、背に書名が書いていないので、当てはまらない。セドリー・カクテルなるものがでてくる。
オール読物に連載されたものをまとめた。1から6月に連載され季節と麻雀役を組み合わせた題名は面白い。
1色模様一気通貫
和本、浮世絵との出会いがある。一冊の本を入手するためにには、童貞をささげる?
2半狂乱三色同順
「ふらんす物語」発禁本、3冊、蔵書表には謎が
3春朧夜嶺上開花
韓国に古書を求めに行くが、ない。コインを縁として、古書を譲り受け
4桜満開十三不塔
米国の愛書家、フォリオ(シェークスピア)
5五月晴九連宝燈
盗書狂(ビスリオクレプト)キリスト教関連の本
6水無月十三幺九
装丁、人体を用いるという奇抜な発想
戦後のどさくさ⇒高度経済成長期ならではできたこと。物欲に見せられた道楽の話である。 -
古本業界の重鎮『せどり男爵』が遭遇する、古書にまつわる事件、スリリングな駆け引き、ぞっとする話。
特に希少本をめぐる駆け引きが描かれた第四話『桜満開十三不塔』がおもしろかったです。
そして最終話はなんか嫌な感じ。これはホラーでしょうか。
男なら誰でも、下半身ににむず痒さと寒気が走るはず。
みんな、いろんな意味で古書に命をかけています。これはフィクションだけど、現実にもこれに近いことはあるのかなぁ。
ブックオフの105円コーナーで悩んでいる自分がかわいく思えてきます。 -
ビブリオ古書堂はライトノベルの会社から出ていますが、エンターテイメント性はある程度あるものの、内容的にはライトノベルというものではないと思います。普段本を読んでいる人にも十分アピール出来る普遍性のある小説だと思いました。
さて、そのビブリオ古書堂に出てくる本はどれもこれも古典作品ですが、好きな作品に出てくると読んでみたくなるのが人情。そういう意味でもとてもいい本だと思います。
その中でも「せどり男爵数奇譚」という本が気になって仕方がなかったのでいい機会と読んでみた次第です。思ったようなミステリーではなく、せどり男爵といわれる男を取り巻く古書にまつわるエピソードが連作として書かれています。古書がいかに人を狂わせるかという事が主眼に書かれていて、読めば読むほど古書マニアと読書好きは違うものだと思います。エログロ的にかなりえぐい話もあります。
所謂業界小説という側面からも読めそうですが、そうだとするとずいぶん物騒な話ではありますね。
ちなみに「せどり」というのは古本屋で価値のある本が安値で売られているのを買い、転売して利益を得る仕事の事です。 -
『ビブリア古書堂の事件手帖』で知り購入していたものだっけども、読み終わってびっくり。こっちの方が面白いんじゃ?特に衝撃なのは最後の1話だったけれども。せどり男爵こと笠井菊哉氏が古本狂いになった訳も面白い。
げに恐ろしきビブリオクラスト!
P78 愛書家には、時として書物破壊症と云うのか、狂人じみた行動をとる者がある。ビブリオクラストと呼ばれているが、他人にその本を渡したくないばっかりに、その本を破損するのだ。本の扉、口絵、奥付け、蔵書票などを切り取ったりする不徳義漢は、この書物破壊症であろう。
P256 つまり、早い話が、本が恋人なんです。その恋人に、似合った服を着せてやりたい……と云う気持なんですな。恋人になら、男だって、いろいろと考えるでしょうが。パンティは何色がいいとか、黒いスリップは娼婦的だから着せたくないとか、あの服には白い靴を履かせたい……とか、ね。それと同じことなんですよ、装丁の仕事というのは——。
P285 前にもお話ししましたが、ある種の人間にとっては、本は魔物です。これに魅入られたら——そうですな、本の虫といいますか、こいつが取り憑いたら、もう逃れようがない。あたしみたいに、一冊の本を、とことん探し廻る阿呆もおれば、一冊の本のために人殺しする者もあるんですな。これは、活字の魅力なんてもんでは、決してない。本なんです。書物なんです。 -
古書をめぐる人々のお話。
古書に異常に執着する人の姿が恐ろしく、でも面白かったです。本当にこんな人たちがいるのだろうか、それともたまたま私たちの目には見えてないだけか、と考えながら読んでいました。
古書というものは人を狂わすほどの力というかものを持っているのかな。
最後の話の人の肌をそいで装丁する話が狂気を強く感じました。私にはとても考えられない世界です。 -
他の人と同じく、『ビブリア古書堂』に触発され読んだ。
お話自体は面白いが、やはり古いかな。せどり男爵自身の人間的魅力が少し弱い。
ということで、 -
一時期山となって平積みされていた作品。表紙の雰囲気におどろおどろしい感じを受けて避けていましたが、縁あって購入。せどりとして生きてきた男性が過去に遭遇したエピソードを語る形式になっています。
マニア話は明るくコミカルでないと楽しめないと痛感しました。最初の方はまだ笑って読めるのですが話が進むにつれて収集家たちの熱意を通り越した狂気に恐ろしくなります。そりゃあ10年以上かけて探していた本が見つかった時、発作が起きたのかと思うくらい嬉しいのはわかる。でも手にいれるためにやらかす騒動も程度もので、本を手にいれるために犯罪をおかして平然としていられる心理は理解できないし、最終章に至ってはいきなりマルキ・ド・サドな世界に連れていかれたようなグロテスクな逸話になってしまい、気持ち悪くて読めなくなる寸前までいきました。
ただの本好きでいられる喜びを再認識できるという点では良いです。常識の範囲内でいられることは幸せだ。 -
「本好き」にもいろいろある。もちろん一般的には、本の内容が好きな人のことを言うのだろう。だが、本それ自体が好きになってしまう人もいる。
言うまでもなく、せどり男爵は後者にあてはまる。男爵の古書に対する熱意はすごいものだ。もっとも、本の価値を値段で教えるあたりは(前者タイプの筆者、そして読者のために分かりやすくしているとはいえ)、まだまだと言えるのかもしれない。なんせ、男爵が知っている「生粋の」ビブリオマニアは、まさに狂気の世界の住人としか言えないのだから。
本の読み方を教える本が多数刊行されている。その多くは、本を主体的に使え、例えば色ペンで書き込んだり、ページを折ったり...などと主張されている。電子書籍も注目されている。中には自炊のために本をバラす人もいる。どうやら今は、本の内容の方が重要視されているらしい。さてさて、せどり男爵が現在のこの様子を見たら、どれほど憂うだろう?