私とハルマゲドン (ちくま文庫)

  • 筑摩書房 (2000年7月1日発売)
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Amazon.co.jp ・本 / ISBN・EAN: 9784480035745

みんなの感想まとめ

テーマは、オウム真理教の麻原彰晃を通じて、自由と不自由、そしてオタク文化の関係を探求することです。著者は麻原の視覚障害を逆手に取り、彼がどのように弱みを強みに変え、信者を惹きつけたのかを分析しています...

感想・レビュー・書評

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  •  麻原がその弱み、視覚障害者であることなどを、強みに変えていたこと。また、オウムが狂っているというが、ではお前の世界は狂っていないのか?と突きつけること。この巧妙な麻原のテクニックについて分析している。そして、はっきりとは書いてはいないが、オタクは、オウムに惹かれてしまうか、もしくはオウムっぽい感じになってしまう、むしろオウムと似た空間を作ってそこで生きている。オタクがゲームなどで美少女に囲まれるのと、麻原が女性信者に囲まれるのと、どう違うのか。その弱さと開きなおりを武器にして。
     そういったことを思考するエッセイになっている。
     また、麻原の誤算として、麻原は予言者として義務が生じてしまい、組織が麻原を飲み込んで、ハルマゲドンまで行くしかなくなってしまったというのもあるだろうと述べている。組織は必然的に発展することを要求するし、発展するためには絶えまない「幻想」の供給が不可欠である。
     たんなる守銭奴だった麻原があそこまでになってしまったのは、ある意味で麻原が宗教家としてマジメすぎたのかもしれないと指摘している。

    【「豊かな社会の中で大人になるとはどういうことか」を考えることは、現代の日本において、思想家がやるべき最重要課題だろうと思う。しかしこれは恐ろしく困難な命題である。というのは、この命題自身、自己矛盾をおこしているからである。
     なぜなら、「豊かな社会」とは「子供のままでいられる社会」のことだからだ。】P121

     「人間は生まれながらにして自由だ」という幻想を確保できる場所がオウムであり、オタク世界でもあった。そこから脱して「大人」になるにはどうすればいいか。それは、自由をもとめて入ったコミュニティが逆に不自由であることをわかり、不自由な檻を旅人のように経験して経ていくしかないという。旅を徹底して、檻から檻へ、幻滅していくこと。人間は生まれながらにして自由であることをあきらめ、いや自由ではないということを理解していくこと。これがオタクから大人になることだと、本著では伝えているように思う。

  • 著者の文章には面白みを感じなかった。
    著者はなんでもオタクにしてしまうが、それが自分のオタク観と違っていて腑に落ちない。オタクとはサブカルチャーにのめり込む人のことではないのか? 麻原はオタク、オウムの幹部もオタクって、ちょっとわからない。
    帯に「オタクとは何か?」ってあるけどその答えもないし。

    一つの解として提出される「旅人の論理」って要するにphaさんや鶴見渉さんが言ってるサードプレイスのことだろう。この二人と比較すると著者の方が生きることに対して肩肘張った硬い感じを受ける。phaさんたちの方がゆるい。

    本書の価値は対談部分にある。「オタクは地球を救う?」と「十五年後…」のどちらもよかった。特に後者。ドラッグが悟りの代替になりうる、みたいな安易なニューエイジ的思考を実体験から否定している対談相手のX氏の発言は示唆に富むものが多い。
    「あらゆるドラッグは後でツケを払うことになる」
    「ドラッグを常用している人は年とともに輝きを失っていく」
    オウム真理教の一般信者は自ら選択してオウムや麻原に依存していたわけで彼らにも責任がある。それを「洗脳されてただけ」「かわいそう」とか言うのはおかしい、という発言はもっともだと思った。

  • 竹熊健太郎といえば、サルでも書けるマンガ入門の人であり、現在は電脳マヴォというマンガ配信サイトの人だ。かつてはブログ、今はTwitterでその意見や活動はよく見ている。そんな竹熊氏がオウム真理教のサリン事件に衝撃を受けて書いた本。

    著者は、自分も一歩間違えばオウム真理教に入って事件を起こしていたかもしれないと思い、自分を語ることがオウムを語ることではないか?と思ったという。それが本書を書く動機とのこと。幼少期からエロ本編集者に至るまでのエピソードや、対談、ヲタクとインテリとオウム、ギャグとしてのオウムの考察、などによって本書は構成されている。

    幼少期からエロ本編集者に至るまでを書いた章では、オウムと親和性のある考え方になっていく過程が描かれている。その過程で経験したエピソードがいちいちおもしろい。空想に囚われていた祖父、ハルマゲドンマンガの作成、中学時代のいじめ、頓挫した復讐、中学時代の友人「国鉄」、ミニコミ作成、家出、Xとの出会い、オカルト、ドラッグ・・・。特に笑ったのが国鉄君のエピソード。国鉄君は今で言う鉄ヲタ(かつ共産趣味)なんだけど、以下の文に声を出して笑った。

    『自分を「マルクス・レーニン主義及びチュチュ思想を理論的主柱とする暴力革命により、担任教師の粛清、ついでに総武本線の複線電化を悲願とする虐げられた労働者」と中学生のくせに規定していた。』

    虐げられた労働者てアンタ、中学生やん(笑)。国鉄君のエピソードで小説かマンガが書けそうな気がする。

    ヲタクとインテリとオウムの考察では、そうだよなあ、と自分に引き寄せて考える部分が多かった。自分は若干オタク気質があるけどインテリじゃない。でも生産とか効率の追求にうんざりして屈折し、厭世的にニヒリズムに陥るというのはよくわかる。現在の価値観に居場所がないから、変な人であるオタクになる。オカルトに引き寄せられる。一方で、無意味に生産することに疑問を持たない社会は病んでいる、という著者の意見には同意したい。

    『ニヒリズムとオカルトがくっつくとファシズムになる』という一文を読んで、そうかもしれないなあ、と思うと同時に、安倍政権やネトウヨやフェイクニュースを連想せずにはいられない。森達也氏がかつて『A』の中で、自分たちの社会がオウムのようになるかもしれない、という趣旨のことを書いていて、それが現実になりつつある気がする。

    著者にとってグルであったXとの関わり、Xとの対談が書かれている部分では、こういう人間関係はどこでも起こり得ると思った。完全に対等な人間関係など存在しない。ギャグについて講義っぽく書いた部分では、反常識と非常識に分類するという見方がおもしろかった。おそらく竹熊氏は大学でこんな講義をしているんだろう。ちょっと拝聴してみたい。

    この本では著者が自分の問題としてオウムを捉えていて、私もこの本に書いてあることは殆ど同意できる。竹熊氏ほどオカルトやらグルやらドラッグやらと接した経験はないけど、オウム事件は自分から遠い問題ではない。著者が、オウム的世界にも経済・効率・生産至上主義の世界にも囚われない生き方として挙げている「旅人の論理」は、誰か他の人も言っていた気がする。

    『ハルマゲドンなんかとっくの昔に起こっているんだよ。だから帰ってくる必要なんかない。おれたちにはもともと帰る場所なんてないんだから。』

  •  青春の軌跡が正直に綴られているようで、苦くて痛いところもすごくよかった。特にXさんについて辛辣なことまで書いてあるのに、15年後の対談でXさんが、その通りだったとそれを受け入れているところが感動的だった。普通ならそれっきりになってしまうところだ。

     オウム事件はそれこそ先日死刑が執行されてびっくりしたところだったので、改めていろいろ思い出されて感慨深いものがあった。

     どうしても読みたくてアマゾンで千二百円のプレミア価格で買った。

  • 03009

    オウムの反味に彼らと同世代の著者が自らの生きざまを重ね合わせ、既成の社会に組み込まれずに生きる方法を考える。ヒッピー、ドラッグ文化の名残り、オタクのはしり、雑誌編集の世界

  • あの時代を自分史に重ね合わせて書いた良くできた作品だと思います。
    でも、自分が一番面白いと思ったのは、竹熊さんが、自分のキャラを見極めて、世間の中で自分のポジションを見つけていくくだりです。
    なかなか真似は出来ませんが。

  • 「さるでも書けるマンガ教室」の著者の一人である敬愛る竹熊氏の自伝的読み物。

  • 引用「『豊かな社会で大人になるとはどういうことか』を考えることは、現代の日本において、思想家がやるべき最重要課題だろうと思う。」そうです!

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著者プロフィール

1960年東京都生まれ。81年より編集者・文筆家として活動。多摩美術大学漫画文化論非常勤講師。著書に「サルでも描ける漫画教室」(共著・小学館)「私とハルマゲドン」(ちくま文庫)等。blog「たけくまメモ」公開中(http://takekuma.cocolog-nifty.com/)。

「2005年 『色単 現代色単語辞典』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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