手塚治虫マンガ文学館 (ちくま文庫 て 9-2)

著者 :
  • 筑摩書房
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感想 : 6
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  • Amazon.co.jp ・本 (294ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480036209

感想・レビュー・書評

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  • 本書には、H. G. ウエルズやドストエフスキー、アポリネールなど、古今東西の文学作品をマンガという表現形式によって再構成した、長短あわせて7編が収められている。なかでも「罪と罰」は1953年の作品だが、そこで用いられている思いきったコマ割りをはじめとするさまざまな実験的手法は今なお新鮮に感じられる。「インサイダーな学生時代とロシア文学」と題する2ページほどの小文も、手塚の文学嗜好を伝えていて興味深い。

  • 手塚治虫の漫画の描写力は、改めて読んでも本当にすごい…。
    古今東西の名著といわれる文学作品を手塚治虫自らが、現代でいうコミカライズした漫画短編集。
    あの手塚治虫の作画は、どの時代背景・舞台装置であろうとも違和感なく描き上げてしまうから凄い…。
    「月世界の人間」原作はジュール・ヴェルヌの『月世界旅行』より。
    お恥ずかしながら未読ですが、こんなにSFしてるのか…??
    それとも、子どもが読んでもワクワクする程度の演出を加えているのだろうか…。
    手塚治虫のペンの妙技に初っ端から震える。
    「ハヌマンの冒険」原作はインド古典『ラーマーヤナ』から。
    インド古典でも違和感なく描くんだから手塚治虫はやっぱり漫画の神様やでぇ…。
    西遊記の孫悟空のモデル?となったハヌマーンのお話。
    小猿ハヌマンの可愛さはthe手塚治虫だし、巨大化ハヌマンは特撮ヒーローみたいで、クンバルカルナとの戦いは怪獣映画みたいでとても面白い。多腕の魔王ラーヴァナもthe昔の特撮の悪役っぽくていい。ところどころのファンタジックな描写もいいし、手塚治虫の作風とインド神話は相性がいいのかもしれない。
    「ミニヨン」原作はゲーテの『ヴィルヘルム・マイスターの修行時代』より。
    むしろそれをもとにしたオペラ『ミニョン』からかな?
    いやいや、ミニヨンその可愛さで男の子は無理でしょ…。
    とオタクのゲス顔不可避だったんですけど、ハッピーエンドな古典名作劇場らしさ全開。
    「オノレ・シュブラック」原作はギヨーム・アポリネールの『オノレ・シュブラックの失踪』より。
    今で言うところの幻想怪奇小説なのかもしれない…。解題にもあるが、この透明人間譚を保護色に絡めて生物学の勉強漫画としてまとめてるのがスゴい…。
    「罪と罰」原作はご存じ、ドストエフスキーの同タイトルから。
    露文学といえば超長編というイメージですが、まあこれだけコンパクトにまとめてるんだからスゴい。露文学あるあるの多すぎる登場人物とグチャグチャの人間関係も手塚治虫作画のキャラクターでさらっと読めてしまう。うーん、すごい。
    「つるの泉」原作は鶴の恩返しなんだろうけど、これはまた悲しい人間のバッドエンドで…おつうさん…。恩返しの行動を労働と見做されてしまった悲劇。欲に眩んだ人間の堕落…。うーん、手塚治虫だ…。
    「やまなし」原作は宮沢賢治の同タイトル。
    山になる梨の山梨ってことかな…。クラムボンとか怖すぎる魚人や鳥人…戦争と殺戮…。宮沢賢治と手塚治虫のマリアージュによってうみだされるものの、なんと豊かで教養深いものか…。一番「んん??」と思わされるこの妙な引っかかりも、宮沢賢治だなあ…。

  • 2012年7月13日読了。「罪と罰」などの文学作品を、手塚治虫が漫画化した作品集。相変わらずの丸っこいキャラたちやコマ割の感覚にはさすがに時代を感じるが、人物の描写やシーンの切り取り方、ギャグをはさむタイミングなどはさすがにうまい。(当たり前だが)小松左京による解説で、本書が文学を読む少年少女の人口をしたささえしたのではないか、とあるが、確かに私も学校においてあるえらいひとの伝記マンガやなぜなに科学マンガからどれほど現在に至る雑学知識を身につけさせてもらったかしれない。マンガは偉大なものだ。

  • 09124

    08/17

  • 「罪と罰」よかったなあ。

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著者プロフィール

1928年、大阪府豊中市生まれ。「治虫」というペンネームはオサムシという昆虫の名前からとったもの。本名・治。大阪大学附属医学専門部を卒業後、医学博士号を取得。46年、『マアチャンの日記帳』でデビュー。幅広い分野にわたる人気漫画を量産し、『ブラックジャック』『鉄腕アトム』『リボンの騎士』『火の鳥』『ジャングル大帝』など、国民的人気漫画を生み出してきた。

「2020年 『手塚治虫のマンガの教科書』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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