紅一点論―アニメ・特撮・伝記のヒロイン像 (ちくま文庫)

著者 :
  • 筑摩書房
3.67
  • (44)
  • (42)
  • (85)
  • (8)
  • (1)
本棚登録 : 458
レビュー : 58
  • Amazon.co.jp ・本 (328ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480036667

作品紹介・あらすじ

「男の中に女がひとり」は、テレビやアニメで非常に見慣れた光景である。その数少ない座を射止めた「紅一点」のヒロイン像とは。「魔法少女は父親にとっての理想の娘である」「(紅一点の)紅の戦士は"職場の花"である」「結婚しないセクシーな大人の女は悪の女王である」など見事なフレ-ズでメディアにあふれる紅一点のヒロインとそれを取り巻く世界を看破する評論。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 自分でも気付かない間に
    男の子の国、女の子の国に染まっている。
    関係性の病の話が面白かった。
    セーラームーン、エヴァンゲリオン、ナデシコと小さい頃に見ていたアニメの評論をもっと読んでみたいと思った。

  • 『妊娠小説』(ちくま文庫)の著者が、アニメ、特撮、子ども向けの伝記のヒロイン像を分析した本です。

    『ウルトラマン』や『ガンダム』などの舞台は、科学技術を基盤にした軍事大国だと著者はいいます。他方『魔法使いサリー』や『秘密のアッコちゃん』などの舞台は、非科学的な魔法を基盤にし、王子様に依存する恋愛立国です。本書では、『セーラームーン』『エヴァンゲリオン』『もののけ姫』に至るまでの、これら2つの国におけるヒロイン像の変遷をたどっていきます。

    その一方で、子ども向けの伝記のストーリーは、マンガやアニメに似ていると著者はいいます。ナイチンゲールが「白衣の天使」とされ、キュリー夫人がラヴ・ロマンスのヒロインに仕立てられ、ヘレン・ケラーが「聖女」とされていったことに、著者は鋭い批判のまなざしを向けていきます。

    すこし気になったのは、宮崎駿の『もののけ姫』に対してのみ、批判のポテンツが一段階あがっていることでしょうか。著者は、『ナウシカ』以降の宮崎作品のヒロインが、男のヒーローを手本にした女性像であり、「男並み」の実現であることを指摘したうえで、「エボシひきいるタタラ場の論理が破綻しているのは、女がなぜ生産労働や軍事の現場から排除されていったか、という歴史を学んでいないことである」といい、それは「男女平等社会どころか、悪しき近代社会のカリカチュアなのである」と批判します。もちろん他の作品に対してもこうした分析が加えられているのですが、それらが「茶化し」なのに対して、ここでの議論は対象を正眼に見据えての批判となっています。

    本書刊行後に男が責任を取ることを限りなく回避しつづけることを可能にする「セカイ系」の流行があったことを考えると、こうした批評に著者の慧眼を読み取るべきなのかもしれません。

  • 「男の子の国」と「女の子の国」、そして各国の中で生きる「紅」について。読めばアニメの見方が変わります。

    にしても、この人のナイフちと鋭すぎやしないか。時たま切り口がいびつに見えるのは気のせいだろうか。

  • 後半の伝記の下りは非常に楽しめた

  • 解説:姫野カオルコ

  • 某女子大文学部だった時に講義で読んだ本。再読。性別から見た子供向けアニメ、伝記、童話の批判本です。
    シンデレラ、ウルトラマン、セーラームーン、ガンダム、、、世の中には子供向けのアニメが出回っているけれど、その中で女性に求められる「役割」というのは一皮むけばどれも似たり寄ったりなのだと実感した。お色気担当ピンク隊員、犠牲的で感動を呼ぶ聖母、処女でメルヘンチックな魔法少女、独身お局の悪の女王。

    書き方や類型のまとめ方は断定的でずいぶん皮肉が効いていて反発したくなってしまうけれど、無理やり自分の型に当てはめているだけな気もするけれど、反論もできない。(P147「王子とは、父親の財産と地位をカサに着た、ハンサムな男の異称である。」)(「ヤマト」のチームは高校野球部である)(「ガンダム」のチームは大学全共闘である)

    私のタキシード仮面やもののけ姫やヘレンケラーへの、今までの憧れやイメージをぶち壊してくれる本です。無意識のうちに刷り込まれているイメージってあるよね。

  •  軽い感じで読みやすさを優先しているが、筆が滑りすぎて反感を覚えてしまう。議論は週刊誌レベルの荒らさ。
     が、(無駄に尖った要素を60%カットすれば)、アニメ等にありふれたステレオタイプにツッコミを入れる本として素直に読める。
     なんにせよ、現状への異議を唱えたり読者を納得させる等の目的を果たすためには、この本はより冷静に書かないといけなかった。

    【版元】
    シリーズ:ちくま文庫
    定価:本体820円+税
    整理番号:さ-13-2
    刊行日: 2001/09/10
    判型:文庫判
    ページ数:336
    ISBN:978-4-480-03666-7

    「男の中に女がひとり」は、テレビやアニメで非常に見慣れた光景である。その数少ない座を射止めた「紅一点」のヒロイン像とは。
    「魔法少女は父親にとっての理想の娘である」「(紅一点の)紅の戦士は“職場の花”である」
    「結婚しないセクシーな大人の女は悪の女王である」など見事なフレーズでメディアにあふれる紅一点のヒロインとそれを取り巻く世界を看破する評論。
    http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480036667/

    【簡易目次】
    目次 [003-006]
    はじめに――世界は「たくさんの男性と少しの女性」でできている [007-010]

      紅一点の国 
    第一章*アニメの国 012
      ❤「おとぎの国」から「アニメの国」へ
      ❤軍事大国としての「男の子の国」
      ❤恋愛立国としての「女の子の国」
      ❤「アニメの国」は「オトナの国」の模型

    第二章*魔法少女と紅の戦士 040
      ❤「おとぎの国」のヒロイン
      ❤「うちの娘」としての魔法少女
      ❤「職場の花」としての紅の戦士
      ❤「オトナの女」としての悪の女王
      ❤アニメのヒロインの仕様

    第三章*伝記の国 067
      ❤「アニメの国」と「伝記の国」は双子の兄弟
      ❤英雄のいない国
      ❤悪の女王のいない国
      ❤女が偉人になる条件

    第四章*紅一点の元祖ジャンヌ・ダルク 094
      ❤ジャンヌ・ダルク伝はヒロイン像の百貨店
      ❤変身するジャンヌ
      ❤ジャンヌの娘たち


      紅の勇者
    第一章*少女戦士への道――『リボンの騎士』『ハニー』『セーラームーン』 122
      ❤「女の子の国」の独立
      ❤魔法少女の変転『魔法使いサリー』と『ひみつのアッコちゃん』
      ❤戦うチームの確立
    ――『ウルトラマン』と『科学忍者隊ガッチャマン』
      ❤戦う少女の出現――『リボンの騎士』と『キューティーハニー』
      ❤紅全部のチーム――『美少女戦士セーラームーン』
      ❤迷路にはまり込んだ「女の子の国」

    第二章*組織の力学――『ヤマト』『ガンダム』『エヴァンゲリオン』 155
      ❤「男の子の国」のオトナ化
      ❤組織の原型――『宇宙戦艦ヤマト』の正義
      ❤組織の拡散――『機動戦士ガンダム』の動揺
      ❤組織の崩壊――『新世紀エヴァンフェリオン』の憂鬱
      ❤オンナコドモにかき乱された「男の子の国」

    第三章*救国の少女――『コナン』『ナウシカ』『もののけ姫』 191
      ❤宮崎アニメは「男の子の国VS女の子の国」の物語
      ❤英雄未満の女――『未来少年コナン』の単純
      ❤英雄になった女――『風の谷のナウシカ』の正論
      ❤英雄を突き抜けた女――『もののけ姫』の破綻
      ❤ヒロインを野獣に戻した宮崎アニメ

    第四章*紅の勇者の三〇年 218
      ❤戦えないヒーローと戦うヒロインの時代
      ❤「クインビー症候群」と「バタフライ症候群」


      紅の偉人 
    第一章*天使の虚偽――フローレンス・ナイチンゲール 228
      ❤伝記とヒロインの三つの像
      ❤ナイチンゲール伝は『ナウシカ』である
      ❤「すご腕実務派ばばあ」としてのナイチンゲール
      ❤「悪い女王」が天使になるまで

    第二章*科学者の恋――マリー・スクロドフスカ・キュリー 256
      ❤ラブ・ロマンスとしての伝記
      ❤マリー・キュリー伝は『セーラームーン』である
      ❤「田舎出のガリ勉娘」としてのマリー・キュリー

    第三章*異能の人――ヘレン・ケラー 281
      ❤「おとぎの国」の住人
      ❤ヘレン・ケラー伝は『もののけ姫』である
      ❤「戦略的なエンターテイナー」としてのヘレン・ケラー

    第四章*紅の偉人の五〇年 304
      ❤「紅の偉人」の作られ方
      ❤伝記のヒロインとアニメのヒロインは双子の姉妹

    あとがき――「萬緑叢中紅一点」を超えて(一九九八年六月一〇日 斉藤美奈子) [318-321]
    解説(姫野カオルコ) [322-328]

  • 子ども向けメディアにおける紅一点のヒロイン像と、それを取り巻く環境について考察した一冊。
    いやー、おもしろかった!
    とにかく文体が楽しくて。けっこう真面目な本なのに、すごい笑ってしまったよw

    最近のアニメは、必ずしも明確に「男の子の国」「女の子の国」っていう住み分けができてる作品ばかりではなくなってきたんじゃないかな、と思う。
    もちろん、詳しく中身を見てみれば、内容的には「男の子の国VS女の子の国」(=あるいは、文明VS自然)という構図が当てはまるものもあるだろうけれど。
    でも、大枠としての男女の区別は曖昧になってきたのではないかなと思う。

    しかし、数の面を見れば、やはり依然として「たくさんの男性と少しの女性」状態は続いている、といえるのではないかなと。現実社会においても。
    女性の社会進出、活躍が目覚ましい~とはいえ、数の問題はまだ残っているだろう。

    ただ、ヒロイン像に関しては…何ともいえないなぁと。
    もともと、男性作家が描くヒロインと女性作家が描くヒロインを、同じ立場で語ることは難しいと思う。
    (だって、“南ちゃん”みたいな女は現実にはいないのさ…フッ。笑)
    けれども、求められるヒロイン像は、いつの時代もさほど大きな変化はないんじゃないかな?と思う。

    結局みんな、天使とか聖女とか、自己犠牲の精神に溢れた女の子になんでか惹かれちゃって、ついでにその子が愛と奇跡まで起こしちゃったら、こりゃもう完璧なヒロインだわ~ってことで…。笑

  • 2001年(底本1998年)刊行。

     アニメ・特撮等で描かれる女性登場人物をいくつかの類型に分類し、フェミニズム的物差しで解読する。
     著者らしい皮肉、エスプリの効いた表現は面白い。ただ、身も蓋も無いところもないではない。

     また、刊行年次からしてやむを得ないが、セーラームーン以降、連綿と続くプリキュア論が全くない。戦士でありながら、セーラームーンはシンデレラ・ストーリーの亜流とも見える。そういう意味では、フェミニズム的批判の遡上に乗るかもしれないが、ここまで連綿と続き、ざまざま菜タイプを生み出しながら、女子の心を鷲づかみにし続けているプリキュアはどうなんだろう?。
     そういう観点から、すなわち現在の眼から見れば、本書は少し古く、的外れな部分があるのかもしれない。

全58件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

【著者】斎藤美奈子 (さいとう・みなこ) │ 文芸評論家。1994年に文芸評論『妊娠小説』でデビュー。2002年『文章読本さん江』で、第1回小林秀雄賞受賞。軽妙な筆致で綴られるパンチの効いた書評や文芸評論は、幅広いファンをもつ。他の著書に、『文壇アイドル論』『紅一点論』『本の本』『日本の同時代小説』『文庫解説ワンダーランド』『名作うしろ読み』などがある。

「2020年 『中古典のすすめ(仮)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

斎藤美奈子の作品

紅一点論―アニメ・特撮・伝記のヒロイン像 (ちくま文庫)を本棚に登録しているひと

ツイートする